ここがページの先頭です。
ページ内移動メニュー
ヘッダーメニューへ移動します
共通メニューへ移動します
現在の場所へ移動します
本文へ移動します
サイドメニューへ移動します
現在の場所
ホーム  健康情報  病気のプロフィル  病気のプロフィル No.6
ここから本文です。

病気のプロフィル No.6

比較的新しい病気の単位

アレルギー性肉芽腫性血管炎

 このシリーズでは実際にその病気の患者に接したときだけ取り上げることにしているが、ちょうど今、アレルギー性肉芽腫性血管炎の患者が入院している。これまでに私は3例この病気の患者を診ているが、このたびの例は、これまでの経験例の中で最も典型に近い。

 どういう病気か

 アレルギー性肉芽腫性血管炎allergic and granulomatous angitisはチャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome)とも呼ばれ、我々の年代にとっては後者の病名のほうが馴染みが深い。
 以下、英語の病名の頭文字をとって、この病気をAGAと略記する。
 AGAは気管支喘息、好酸球増多、および血管炎にもとづく症状を主徴とする病気で、一般に血管炎症候群のなかに分類されていることが多い(後述)。
 病因はまだ謎に包まれているが、あえて推測すれば、体内の非自己抗原に対する宿主の過敏な反応が発症の基礎になっていると解釈される。好酸球が分泌するサイトカインの分析が進めば、病因解明の重要なカギになるかもしれない。

 AGAは比較的新しい病気といえるか

 AGAを古典的な多発動脈炎から分離させて別の独立の病気にしたのはChurgと Strauss (1951)、少し遅れてRoseとSpencer (1957) である。それから37~43年経っているから、明らかにこの病気は先だって設定した「比較的新しい病気」の基準に当てはまらない。しかしわが国では、どういう訳か、この病気はあまり馴染まれておらず、1964年になってからやっと本格的な症例報告があっただけである。あるいは医師のなかにも初めて聞く病名だという人がいるかもしれない。
 わが国で注目され始めたのは、1981年に厚生省特定疾患・系統的脈管障害調査研究班で取り上げられてからである。それ以来、国際的にも AGAの実態はよりはっきりとし、医学界の認識も深まった。これは帝京大学の長沢俊彦教授の努力に負うところが大きい。
 以上のことから、あえてAGAをこのシリーズで取り上げることにした。症例も年々増えているようだから、いずれ皆さんも経験することがあると思う。

 血管炎が基礎になって起こると推定される病気

 血管炎angitisは動脈、ときとして静脈の壁に病変の主座がある非特異的な炎症で、これが主要な原因になって起こると推定される病気は、表1に示すように、少なくとも二つのカテゴリーに分けられる。その原型は古典的な多発動脈炎で、代表的な病気として結合織病( RAやSLEなど)にともなう血管炎、多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、およびAGAがあげられよう。

表1. 血管炎が基礎になって起こる病気


A.全身の壊死性血管炎
  • (1)古典的な多発動脈炎
  • (2)アレルギー性肉芽腫性血管炎
  • (3)多発性の血管炎重複症候群
B.過敏性の血管炎
  1. (1)外部に発病の引き金がある場合
    1. (a)シェーンライン・ヘノッホ紫斑病
    2. (b)血清病および類縁状態
    3. (c)感染症に伴う血管炎
    4. (d)その他
  2. (2)生体内に内在する異種の抗原があずかると推定される血管炎
    1. (a)腫瘍に発現する血管炎
    2. (b)結合織病に見られる血管炎
    3. (c)補体の先天欠損にみられる血管炎
    4. (d)その他の病気に随伴する血管炎
  3. (3)ウェゲナー肉芽腫
  4. (4)巨細胞動脈炎
    1. (a)側頭動脈炎
    2. (b)高安病
  5. (5)その他の血管炎
    1. (a)川崎病
    2. (b)中枢神経の血管だけに見られる血管炎
    3. (c)バージャー病
  6. (6)その他

Fauci (1979)、CuppoとFauci (1981)

 これらの病気は実態を把握するのに苦労するものばかりで、血管炎の専門家のなかには「とりとめのない病気」とか、「得体の知れない病気」などといった形容をする人もいる。しかし、その中で病態が最もはっきりしているのはAGAである。

 臨床像

 AGAの臨床像を分かりやすく箇条書きにして説明すると、次のとおりである。

  1. (1)幼小児期の患者は少ない。わが国の報告例では最も若い患者は10歳で、この病気の好発年齢は30~50歳台である。
  2. (2)性差はない。
  3. (3)一般に初めに気管支喘息と好酸球増多が見られ、それから3年以内に血管炎に関連する症候が発現する。このような経過もこの病気に特徴的といえよう。
  4. (4)患者の第一度の近親(親子、きょうだい、など)にアレルギー病や RAなどの自己免疫病が発現する傾向がある。
  5. (5)三主徴の一つである気管支喘息には次のような所見が認められる。
    1. (a)気管支喘息にアレルギー性鼻炎や蕁麻疹が合併する傾向がある。
    2. (b)気管支喘息に比べて、肺のX線像に異常な陰影が見られることが多いが、陰影の性状は一定していない。
    3. (c)AGAの気管支喘息の病型はアトピー型約45%、感染型20%、混合型26%で、残りの9%はどの型にも分類できない。
    4. (d)血管炎の症状が発現したときの気管支喘息の状態は、そのまま不変に続いている例が57%、増悪する例が24%、軽快する例が12%である。
    5. (e)AGAの気管支喘息では他の一般の気管支喘息に比べて、好酸球増多の程度が大きく、ほとんどの例で2000/μlを越えている。しかし、この好酸球増多もステロイド剤の服用によって速やかに正常域に入る。
  6. (6)血管炎の症候
     全身にわたる血管炎にもとづいて、つぎのような症候が見られる。
    1. (a)38℃以上の発熱、全身倦怠感、体重減少をきたす。
    2. (b)臓器症状は次の表2に示すとおりである。

表2. 血管炎にもとづく臓器症状

病態
複数の臓器・組織における単神経炎 85
皮下出血(紫斑) 57
消化管出血、腹膜炎、など 50
心不全、心筋梗塞、心包炎、など 42
筋炎 31
間質性肺臓炎、胸膜炎、など 28
関節炎 23
脳血管障害 16
視力低下、上強膜炎、など 16
高血圧 14
タンパク尿、腎不全、など 11

(長沢、吉田 1989)

 上の表2で見ると、複数の臓器・組織における単神経炎mononeuritisはきわめて高い頻度で見られ、多発動脈炎やウェゲナー肉芽腫に多い腎障害はAGAで比較的少なく、また軽い。病状が進展した段階では単神経炎はおそらく100%見られるであろう。

生検の所見

 診断の確定には、表皮から皮下におよぶ組織の生検が必要である。

  1. (a)皮膚
    真皮と皮下組織に好酸球が浸潤している。
  2. (b)血管系
    多発動脈炎と違って、AGAでは動脈ばかりでなく、静脈にも病変が見られる。
    血管炎の主座は中・小動脈で、その所見は多発動脈炎に似たフィブリノイド血管炎、あるいは多核の巨細胞と好酸球の浸潤をともなう肉芽腫性の血管炎で、この肉芽腫性変化は血管外にまで延長している。また血管内に独立に肉芽腫が存在することもある。
    生検組織の微視像は大学の病理学教室の専門家に見てもらうがよい。九大の居石教室か福大の菊池教室をすすめる。

 診断基準

表3にAGAの診断基準を示す。

表3. AGAの診断基準


主徴
  1. (1)気管支喘息
  2. (2)好酸球増多
  3. (3)血管炎にもとづく症状
臨床経過
上の主徴の(1)と(2)が先に現われ、遅れて(3)が現われる。
参考になる検査所見
  1. (1)白血球増多(10000/μl以上)
  2. (2)血小板増多(400000/μl以上)
  3. (3)血沈亢進(60mm/時以上)
  4. (4)血清中のIgE上昇(600 U/ml以上)
  5. (5)リウマトイド因子陽性
生検組織の所見
  1. (1)好酸球が浸潤している肉芽腫性血管炎
  2. (2)フィブリノイド動脈炎
  3. (3)動脈の内弾性版の断裂を示す瘢痕性の血管炎
  4. (4)血管外の肉芽腫

小泉ら (1988) を改変.

診断の仕方

  1. (1)上の表3の基準のうち、主徴の三つがすべて確認されたときに確実な例と診断する。
  2. (2)主徴の(1)と(2)が認められ、生検組織では(1)、(2)、および(4)の所見が認められたときに確実な例と診断する。
  3. (3)主徴の(1)と(2)が認められ、生検組織で(3)の所見が認められたときには疑いの例と診断する。

治 療

 治療の指針も厚生省の研究班から提出されている (橋本 1990)。欧米でもはっきりしたAGA治療のガイドラインがない現在、これは最も頼りになる治療の指針である。

  1. (1)ステロイド療法
    1. (a)臓器の病変がないか、少ない場合には、PSL換算量20~40mg/日を用いる。
    2. (b)重症な気管支喘息または肺に異常な浸潤影を認める場合には、PSL換算量40~60mg/日を用いる。
    3. (c)重篤な臓器の病変が認められる場合には、PSL換算量60~80mg/日を用いる。
       私見では、日本人患者がPSL換算量60mg/日以上に耐えられるかどうか疑問である。この場合には、むしろパルス療法を選択したほうがよい。パルス療法は比較的副作用が少なくて効果が大きい。
  2. (2)免疫抑制剤
     ステロイド不応、ステロイドの副作用が著しい場合、あるいはステロイドの減量がむずかしい場合などに免疫抑制剤を併用する。CPまたはAZの1~2 mg/kg/日が推奨されている。
  3. (3)閉塞性の血管病変に対する治療
    1. (a)抗血小板薬
      チクロピジン、など。
    2. (b)抗凝固薬
      ワーファリン、ヘパリン、など。
    3. (c)末梢血管拡張薬
      プロスタグランジン、など。
  4. (4)血漿交換
    血漿交換はまだ評価は定まっていないから、最終の手段と考えるべきだろう。

 これは私見だが、AGAも早期に診断して早期に治療を開始すれば、よほどその様相は変わってくるだろう。それにはこの病気に対する理解と認識が広く行きわたることが望ましい。
(このプリントを準備した主治医の江崎泰斗君に感謝する。)

柳瀬 敏幸 (1994. 3. 18)

参 考 文 献

PDF

ここまで本文です。
ここからサイドメニューです。 ここまでサイドメニューです。
^このページの一番上へ
【画像】印刷用のフッター画像です