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病気のプロフィル No.16

UCTD ─ 特定できない結合織病

 特定できない結合織病とは、LeRoyらが16年前に提起したundifferentiated connective tissue syndrome(UCTS)に由来している(LeRoy et al.1980)。
 私は初め新しい病気の単位の提唱かと思ったが、何のことはない、病気の診断を急ぎ過ぎずに、長期的に観ていきましょうという提案である。しかしアメリカらしい面白い提案だと思い、紹介することにした。
 東條と小笠原(1990)は上の病名を「分類不能膠原病」と訳し、その後 undifferentiated は unclassified または undetermined に、また syndrome は diseaseとなり、undetermined connective tissue disease(UCTD) となった。
 この呼び名のほうが適切だと思う。やたらとシンドロームの名を付けるのには私は昔から反対である。「青い鳥症候群」や「燃えつき症候群」などの病名を聞くと、じんま疹がでそうな気分になる。
 「特定できない」は私の造語だが、残念ながら日本語の事典にには「特定する」という動詞はない。たぶんジャーナリストによる新造語だろうが、私はこちらのほうが適切で、分かりやすいと思っている。

類似の病気のカテゴリー分け

 共通の成因にもとづくと推測される病気のうち、あちこちの関節に痛みをきたす全身性エリテマトーデス(SLE)や慢性関節リウマチ(RA)などはリウマチ学rheumatology を構成する病気、すなはちリウマチ性疾患 rheumatological disease の中に入れられており、さらに教科書によっては膠原病、自己免疫病、結合織病、系統的な血管炎にもとづく病気などのカテゴリーに入れられている。
 このことは、これらの病気の成因が複雑で、決して一元的でないことを示している。どのカテゴリーで取り扱うか選択に迷うが、ここでは結合織病として取り扱っておく。

UCTDとは

 私の経験では、少なくとも1958年代まではSLEなどは定型的か、それに近いものだけしか診断されていなかったと思う。その後、厚生省の難病研究班によってそれぞれの結合織病について診断基準が設けられ、特定できないものもかなりの確からしさ likelihood をもって診断できるようになった。
 しかし、それでもなお病気の entity を特定できないものがあり、これらを一括してUCTDとし、さらに観察を続けようと言うのがその目指すところで、新しい病気の単位を指すものではない。

UCTDにはどういう場合があるか

 任意になるが、いくつかの例を挙げて説明しよう。

無紅斑のSLE

 私どもは早期診断・早期治療によって26年間生存し、一児をもうけて生活にもよく適応しているSLEの例を経験している(柳瀬 1984)。しかし全身倦怠感と微熱があるが、特有な紅斑もタンパク尿も見られない患者をSLEと診断するのは容易でない。
 これは私どもの経験した例ではないが、16歳のSLE疑いの患者がそのような例として指摘される。
 この患者では、上に述べたように、全身倦怠感と微熱があったが、他に特異的所見が乏しかった。ただSLEに特異性の高い抗Sm抗体が陽性で、一度だけ末梢血液の塗抹標本にLE細胞らしいものが少数観察されたことがある。
 このような例は"UCTD-SLE suspected"と診断しておいて、なお慎重に観察を続ける必要がある。
 勝田と横張(1970)はSLEを疑う watch words を作っている。若干の修正を加えてまとめると、次のようになる。

表 SLEを疑う watch words

  • 精神病の患者に血沈が亢進していたら
  • リウマチ患者にタンパク尿が見られたら
  • 敗血症らしきものに白血球が減っていたら
  • 血小板が減っているのに血沈が亢進していたら
  • 女性の胸膜炎で抗結核剤が効かず、胸水が吸収しないのだったら

勝田と横張(1970)

 さて話をもとに戻して、上述の16歳の患者は、十分に注意を与えていたにもかかわらず、一回ハイキングにいって日光を浴びただけで蝶形紅斑が出現、諸臓器にSLEの病像が顕在化した。
 幸いステロイドが卓効を奏して短期間で炎症症状が消失したようだが、やはり日光への曝露は千慮の一失と云わざるを得ない。

結合織病の転移

 一つの結合織病から別の結合織病に変化していき、完全に置き換わってしまう現象を結合織病の転移現象 transition という。私自身このような例を長い間探し求めていたが、一例も会ったことがない。したがって秋月、本間の報告例(1972)を引用させてもらう。
 患者は57歳の女性で、42歳のときに定型的な蝶形紅斑と爪周囲の紅斑が出現し、その他の所見と合わせて定型的なSLEと診断された。しかし、その後、次第に蝶形紅斑とその他の部分の発疹が消失していって全く見られなくなるとともに、RAに特有な変形性の多関節炎、朝のこわばり、皮下結節が出現してきて、少なくとも外見からはSLEの面影はなくなってRAに変貌してしまったのである。
 この例は初めSLEとして発症し、その後、SLEとRAの症状が同時に認められる重複時期を経て、完全にRAになったと推測される。ときどき自己免疫現象にはこのような不可解な現象があり、診断と治療に窮することがある。
 これも重複症候群とするかRAとするか特定がむずかしい。

混合結合織病

 混合結合織病 mixed connective tissue disease (MCTD)はSLE、進行性全身性硬化症(PSS)、および多発性筋炎の三つの結合織病の病像が混合、移行し合って明確に識別できず、また血清中の抗RNP抗体(リボタンパク質に対する抗体)が高い値を示すという特徴をそなえている(Sharp et al. 1972)。
 この結合織病は定義があいまいで、ちっともシャープでないと陰口をいわれたが、他の結合織病に比べて予後良好な病気の単位としてわが国ではすっかり定着している。
 事実、私が三宅病院から紹介されて診た20歳の女性(当時)をMCTDと診断したが、その後患者さんは仙台に移り住み、12年余経った現在、生活に良く適応しているようである(毎年年賀状とともに病状を知らせてくる)。
 しかしその後、主にアメリカとわが国でMCTDと特定できないものが次々と出てきて、予後も必ずしも良くはなく、またMCTDから定型的なPSSに転移した例が意外と少なくないことが分かってきた。アメリカでは教科書からMCTDの名は消えるのではないかと伝えられている。
 しかし私は Sharp et al. が最初に唱えたMCTDは存在すると考えている。どんな病気にもdistal type(はずれ型)はあるから、MCTDにも重複症候群にも分類できないものはUCTDとして観察を続ければよい。

重複症候群

 最近RAとシェーグレン症候群(Sj)が重複しているらしい患者を診た。「らしい」と述べたのは、Sj の検査がほとんどなされていなかったからである仮に正しく RA と Sj が重複しているとすると、おかしな点がいくつかある。それはレイノー現象と硬指症がみられることである。ふつうRAとSjにはレイノー現象はないから、もしこれにPSSが重複しているとすれば、三重複症候群 tripple overlap syndromeと なって治療を再検討しなければならなくなる。
 CREST signs を一つ一つ調べることが急がれる。CREST signs とは次のとおりである。

 この例はまだSjがカンでしか診断されていない。したがって Sj と PSS の診断はこれからで、それまでは UCTD-triple overlap syndrome suspected でフォローしていくべきであろう。
 Sj の診断には少なくとも次の検査をしなければならない。
 Schirmer testとRose-Bengal stainingによる乾燥性角結膜炎の証明(眼科依託)
 Minor salivary gland の生検
 Thyroid functions

柳瀬 敏幸 (1996.5.28)

 資料の準備については長澤浩平教授(佐賀医科大学)に負うところが大きい。

文献(アルファベット順)

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