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病気のプロフィル No.26

リウマチ関連呼吸器病変 ―分類表の提案―

 この「病気のプロフィル」シリーズでは暫くはリウマチを取り上げるつもりはなかったが、最近、慢性関節リウマチ(RA)の患者で一年以上も胸部X線写真を撮っていない例に出会ってびっくりし、写真を撮らせたところ、案のじょう rheumatoid lung と通称される肺病変が見つかった。もう一人のRA患者ではMRAという病名の下に Pleuritis tuberculosaという病名があった。確かに結核性滲出性胸膜炎の可能性も皆無とはいえないが、 RAに一番多いリウマチ性胸膜炎の考えは出てこないものかと思った。

 そこで、急ぎ「リウマチ関連呼吸器病変」という主題で一文をまとめることにした。この数年で急速にこの方面の知識が開けてきたこともある。

 上述の患者の第一例を診たときに、一緒にいた若手医師に次の二つのことを話した。

 「RA患者の約10%は、関節症状が現れる前に肺病変が先行して現れる(Anaya et al. 1995, 安藤 1995)。これはRAと肺病変との因果関係を示す重要な事実です」と。

 「RAは、骨・関節の病変がどんなにひどくても、それで死ぬことはない。しかし、リウマチ関連呼吸器病変は怖い。一年以上も胸の写真を撮っていないなんて、とても理解できない」と。

 この稿では、RAにどのような呼吸器系の病変が現れるかをあらまし紹介するために、リウマチ関連呼吸器病変の分類を試みる。個々の病気については詳しく述べない。委細は次の報文を参照されたい。

 Hunninghaka & Fauci 1979, Lahdensuo et al. 1984, Epler et al. 1985, Stokes & Turner-Warwick 1988, Colby 1990, Wise 1991, 山木戸 1992, Ippolito et al. 1993, Anaya et al. 1995.

rheumatoid lung の適用範囲

 筆者はかねてからRAに発現する呼吸器病変をリウマチ関連呼吸器病変 respiratory complications associated with rheumatoid arthritis と名づけ、そのなかで間質性肺炎だけをリウマチ肺 rheumatoid lung と呼んできた。rheumatoid lungの呼び名は、1948年に Ellmann と Ball がRAに肺の間質性病変が発現することを最初に報告して以来のことである。

 わが国では、近藤(1985)のようにリウマチ肺を間質性肺炎にかぎって用いている人もいれば、石岡(1994)のようにリウマチ関連呼吸器病変全体をリウマチ肺と呼ぶ人もいる。筆者は、後者の広い意味に用いたのでは肺動脈の血管炎や胸膜の病変まで包括しにくいから、従来からの慣行にしたがって、リウマチ肺は間質性肺炎にかぎって用いたが良いと考えている。

なぜ結合織病に呼吸器病変が多いか

 RAにかぎらず、一般に膠原病、自己免疫病、または結合織病と呼ばれている病気では呼吸器疾患が発現する頻度が高い(表1)。リウマチ肺と同様に「膠原病肺」という呼び名もある。これには胸部X線撮影という手近なルチン検査によって病変が見出されやすいからだという意見もあるが、そればかりではなく、次の三つの理由が考えられよう。

 以上の理由のほかに、呼吸器系における特異な免疫現象と、それが結合織病でどのように変化するかといった仕組みについても考えねばならない。多数の報文があるが、紙面の都合で割愛する。

表1.結合織病に発現する呼吸器病変

呼吸器病変 RA SLE PSS PM・DM SjS MCTD
間質性肺炎(*) ++ + ++ ++ ++ ++
BOOP ++ + - + - -
胸膜炎 + ++ + - + ++
肺高血圧症 - + ++ - - ++
その他 BO
キャプラン
症候群
ループス肺炎
肺胞内出血
SL


LIP

* 肺線維症をふくむ. BOOP: 器質化肺炎をともなう閉塞性細気管支炎, BO: 閉塞性細気管支炎, SL: shinking lung, LIP: リンパ球性間質性肺炎(石岡1994を一部改変).

リウマチ関連呼吸器病変の分類

 Stokes と Turner-Warwick(1988)は、RAにおける主要な呼吸器病変として閉塞性細気管支炎、間質性肺炎、胸膜病変、および肺内の結節性病変の四つをあげているが、それから10年の間にこの見方はかなり変わってきたように思う。

診断技術の向上

 高分解能のCTと肺の新たな生検(経気管支生検法、気管支肺胞洗浄法など)の普及によって一段と知見が開けてきた。

 画像診断について考えてみよう。

 報告者によってさまざまであるが、胸部 X線写真によるリウマチ関連呼吸器病変の診断効率を仮に5%とすると、高分解能CTの画像では8倍の40%にも上昇するらしい( Hansell & Kerr 1991,その他)。当然、高分解能 CTの画像で得られた知識と経験をフィードバックすることによって胸部X線写真読影の水準も高まってきた。

 胸部疾患専門医や放射線専門医以外の医師も肺炎や気管支炎以外の胸部疾患に対する読影能力を高める努力をしなければならない。そうすれば、びまん性細気管支炎にしばしば見られる肺の過膨張を肺気腫と混同するような初歩的なミスを犯すことはなくなるだろう。

表2. リウマチ関連呼吸器病変(1)

  1. 肺内部の病変
    1. 間質性肺炎(リウマチ肺 rheumatoid lung)
    2. 肺線維症
    3. 気道の病変―細気管支炎
    4. BOOP
    5. 肺の結節性病変
  2. 胸膜の病変
  3. 肺血管の病変

BOOP: 器質化肺炎をともなう閉塞性細気管支炎(筆者編成).

二段階の分類表(私案)

 筆者は、リウマチ関連呼吸器病変を診断する場合に、まず初めに表2の分類表を用いることを奨めたい。研修医諸君には、この程度の分類表は英語でスラスラ言える程度に暗記することを奨めている。次に、さらに突っこんで呼吸器病変を診断したい場合には、表3を参考にしたら良いと思う。

修正の理由

 表3は野沢・荒川の分類(1996)に若干の修正を加えて編成し直したもので、めったに遭いそうもない病変まで入れている。この表について 2~3の私見を加える。

 肺線維症を間質性の肺病変から分離して独立の項目にしたのは、長期にわたって線維症の画像が不変で、それ以上には進展しなかった例をいくつか経験しているからである。Charles et al.(1991)も示唆しているように、RAにおける呼吸器病変の発現にも宿主要因 host factor があずかっているらしいから、このような肺線維症もありうると思っている。

 器質化肺炎をともなう閉塞性細気管支炎(BOOP)は間質性の肺病変、気道病変のどちらにも入れなかった。BOOPは結合織病のなかでRAに最も顕著に現れるが(表1)、Epler et al.(1995)の最初の報告以来、BOOP成立の仕組みにはなお不明なところが少なくないから、当分は独立の項目として取り扱いたい。なぜRAにBOOPが顕著に現れるかという点にも筆者は興味を持っている。

表3. リウマチ関連呼吸器病変(2)

  1. 肺内部の病変
    1. 間質性肺炎
      1. 特発性間質性肺炎に類似の、全肺野にわたるびまん性間質性肺炎
      2. 上肺野に好発する間質性肺炎
      3. 肺の血管または気管支周囲に好発する間質性肺炎
    2. 肺線維症
    3. 気道の病変
      1. 閉塞性細気管支炎
      2. 濾胞性細気管支炎
      3. びまん性細気管支炎に類似の細気管支炎
      4. 副鼻腔気管支症候群
    4. 器質化肺炎をともなう閉塞性細気管支炎(BOOP)
    5. 肺の結節性病変
      1. 肺のリウマチ結節
      2. 肺の肉芽腫性病変
      3. キャプラン症候群
  2. 胸膜の病変
    1. 胸水(漏出液)
    2. リウマチ性胸膜炎
    3. 無菌性膿胸
    4. 特発性気胸
  3. 肺血管の病変
    1. 肺血管系の血管炎
    2. 肺高血圧症

野沢・荒川(1996)を一部改変,再編成.

 キャプラン症候群(Caplan's syndrome)には筆者はまだ遭ったことはないが、肺の結節性病変や肉芽腫性病変とともに表3に入れることにした。

 Caplan(1953)が炭鉱夫の塵肺患者約 14,000人のうちからRAの症状を呈する者を選び出し、さらにその中から特異な肺のX線像を呈する13例を選び出したのがこの疾患単位提唱のはじまりである。胸部 X線像では、塵肺特有の陰影を背景にして境界が比較的鮮明な類円形の陰影が多発し、数ヵ月のうちに 0.5~1cm以上の大きさに達する(図1)。Cough et al.(1955)によると、これらの陰影(Caplan's lesions)には病理組織学的にリウマチ結節に共通する炎症像と小動脈内膜炎の所見が認められるという。

図1.キャプラン症候群の胸部X線像

キャプラン症候群の胸部X線像

Caplan(1953)と長野、松本(1982)に準じて模写.

RAにおける続発性の呼吸器病変

 表3の病変を一次性の呼吸器病変とすると、そのほかに RAには続発性の呼吸器病変というべきものがある(表4)。

表4. RAにみられる続発性の呼吸器病変

  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 薬剤誘発による間質性肺炎
  • 呼吸器感染症

野沢・荒川(1996)による.

睡眠時無呼吸症候群
 顎関節に病変があるRAでは下顎が後退して中咽頭部分が狭くなり、それが原因で閉塞性の睡眠時無呼吸症候群をきたすことがある(野沢、荒川1996)。
薬剤によって誘発される間質性肺炎
 RA治療の目的で用いられる金製剤、 methotrexate、D-penicillamine, bucillanmine などによって間質性肺炎が誘発されることがある。
呼吸器感染症
 もともとRA患者は免疫不全宿主で、その上、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用する機会が多いから、病原微生物が感染しやすい。感染が表3の病像をさらに複雑にする。

謝辞 樋口雅則博士の協力に深謝する。

柳瀬 敏幸 (98. 9. 23.)

参考文献(アルファベット順)

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