ここがページの先頭です。
ページ内移動メニュー
ヘッダーメニューへ移動します
共通メニューへ移動します
現在の場所へ移動します
本文へ移動します
サイドメニューへ移動します
現在の場所
ホーム  健康情報  病院だより「けんこう家族」  けんこう家族 第91号  けんこう家族 第91号【4】
ここから本文です。

けんこう家族 第91号【4】

| 目次 |

乳房外パジェット病

皮膚科(形成外科) 主任医長 利根川 守

皮膚科(形成外科) 主任医長 利根川 守

ちょっと変わった病名ですが乳房外パジェット病という病名は1984年にパジェット氏が乳頭、乳輪に生じた上皮内癌(表皮にとどまり転移を起こさない癌)を報告して、乳房パジェット病とよばれるようになり、その後外陰部に生じた同様の臨床所見と組織学的特徴をもつ病変が報告されたために乳房外パジェット病と呼ばれるようになりました。

皮膚癌の一種で皮膚原発性上皮性悪性腫瘍の中では3番目に多い疾患です。全皮膚癌の10%程度をしめるとされています。わが国では60歳以上の男性に多く、女性は男性の3分の1から2分の1の発生率です。基本的にアポクリン腺というにおいの元となる汗を分泌する腺がある外陰部、肛門、会陰、腋窩、臍周囲に生じうる疾患ですが、ほとんどの症例が外陰部に生じて他の部位に生じることはまれです。

初発症状としては、湿疹様の紅斑や脱色素斑として気づかれ、かゆみをともなう事も多く、進行するとじゅくじゅくして汁が出たりします。よくあるケースとしては、湿疹や股部白癬(いんきんたむし)として、皮膚科が専門でない医療機関で治療されていたが治らず、皮膚科を受診したのち当院を紹介され受診するケースがよくあります。また外陰部に多いため、受診をためらったり、痒みが少ない方は気づかないで病変が拡大してから受診される方も多く見受けられます。初期は皮膚の浅いところを広がり、上皮内癌の長い期間があり、それが徐々に深部に浸潤していくとパジェット癌になります。癌になると所属リンパ節や他の臓器に転移して命にかかわります。しかしパジェット病は癌になる前に発見される事が多く、早期に治療すれば経過はよい疾患です。

治療法は病変を外科的に切除することが治療の中心となります。抗がん剤や放射線治療は効果に個人差があり一般的には単独で使われる事は少なく、外科的な治療後の補助療法として使われます。まず病変の一部を切除(生検といいます)して病理検査で細胞を調べパジェット病であるかを確認します。パジェット病と診断がついたら腫瘍辺縁と思われるところより3~5CM離して一塊に切除するのが一般的な治療です。これは眼に見えないところに病変が存在するので確実に切除するために広く切除する必要があります。しかし男女とも陰部の形状は複雑でまた粘膜部での病変はわかりづらいため、大きく切除しても後の病理検査で取りきれていないことがあります。その時は追加の切除が必要になります。切除範囲が大きい場合には他の部位から皮膚をもってくる皮膚の移植が必要になります。しかし、広範な皮膚の切除は、患者さんの精神的、肉体的苦痛につながりますのでなるべく切除範囲を狭く、また確実に切除するためにマッピング生検という検査を最近では術前に行っています。腫瘍辺縁と思われるところより1CM外側の点を病変の周りに8~12箇所程度とり、さらにその外側に1CMと円を外側に広げていき各点の皮膚に腫瘍細胞が存在しているかを病理検査で確認します。細胞が存在していないところを点で結んで切除範囲を決めます。

手術は全身麻酔下もしくは腰椎麻酔下で皮下脂肪層もしくは筋膜上で一塊に切除し、縫い縮めることが可能な時はそのまま縫い縮めますが、通常は皮膚の移植が必要になる場合が多いです。肛門や泌尿生殖器に腫瘍細胞が浸潤している場合は外科、泌尿器科、婦人科とも連携をして治療にあたる必要があります。

術後、切除した標本で悪性な細胞が取り切れていて、上皮内にとどまっていることが確認できれば定期的な経過観察のみで他の治療の必要ありません。しかし取り切れていない場合は再手術が必要になり、上皮内にとどまっていない場合は所属リンパ節廓清や他の治療法が必要になりますが患者さんの年齢や社会的状況などに応じて治療法を決めています。一般的に腫瘍細胞が上皮内にとどまっている期間に発見されることが多いので、多くの患者さんが一、二回の手術で治療を終えます。

また乳房外パジェット病では15%程度に胃癌、膀胱癌、大腸癌などの内臓原発の腺癌を伴う事があるため、通常は治療の経過中に内臓の精査を行い他の癌がないかを確認します。

早期に治療すれば十分根治が可能な病気ですので、陰部の湿疹がいつまでも治らない人がいましたら一度皮膚科か形成外科の外来を受診してください。

図1
図1 男性の陰嚢部に生じたパジェット病の現症

図2
図2 女性の恥丘部に生じたパジェット病のマッピング生検直前の現症

 

| 目次 |

ここまで本文です。
ここからサイドメニューです。 ここまでサイドメニューです。
^このページの一番上へ
【画像】印刷用のフッター画像です