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けんこう家族 第91号【5】

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がんの病理診断

病理科 部長 田村 浩一

病理科 部長 田村 浩一

がんとは、限りなく細胞分裂をくりかえし、周囲の組織に入り込んだり(浸潤)、他の組織に飛び火(転移)しながら増殖する「悪性腫瘍」です。「がん」は、胃癌・肺癌など上皮(身体の表面をおおう細胞=消化管も肺も管(くだ)で外界とつながっています)から発生する「癌」と、骨肉腫・線維肉腫など外界とつながりのない組織から発生する「肉腫」とに大きく分けられます。その他、血液のがんと言われる白血病、アスベストで話題になっている中皮腫などもあり、発生する臓器や組織によって分けることができます。

各臓器や組織に発生する「がん」にも、多くの種類があります。たとえば卵巣がんは50種類以上に分類されている上、それでも分類に入らず「分類不能」とされるものまであります。このようながんの種類は、すべて病理組織学的所見により決定されます。これが「病理診断」であり、あらゆる臨床各科からさまざまな方法で採取された「病気の部分」を観察して、「最終診断」としての情報を提供しているのが病理医です。がんの病理診断は「良性か悪性か」というだけでなく、その組織型(がん細胞の種類)、分化度(正常にどのくらい近いか)、病期(どのくらい進行しているか)などを判定します。このような情報によって、予後が推測され、治療方針が決められますし、治療開始後の病理診断では、治療効果の判定も行います。

病理診断は材料や方法によって、(1)細胞診、(2)生検組織診断、(3)手術で摘出された臓器・組織の診断、(4)手術中の迅速診断、(5)病理解剖、にわけることができます。その基本は顕微鏡で細胞や組織を観察して、「正常からどのくらいかけ離れているか」を判定するもので、いわば「見た目の判断」です。オリンピックで言えば、陸上競技のように「数値」で結果がでるものではなく、体操競技のように審判員の「判定」によって結果が決められるというわけです。

がんには、いきなり「がん」が発生するものと、じわじわと悪性に進んでいくものがあります。後者の場合、白か黒かはっきりしない、つまりグレーの領域が存在します。これをよく5段階にわけてグループ分類します。図1は大腸ポリープの組織写真です。1から6まで、良性に近いものから悪性と考えられるものまで並べていますが、6例すべてのグループ分類が病理専門医の間で100%一致することはないでしょう。病気が先にあって、それを後から「分類」したわけですが、人間の顔が全部違うように、がんの顔も一つとして「同じ」ものはないのですから、「判定」が病理医によって異なるのです。ただし判定が違っても、ポリープが全て取りきれていれば、「完治」したことになります。

図1 大腸のポリープの組織写真
図1 大腸のポリープの組織写真

このような「主観」による病理診断に客観性を持たせるために、細かな判定基準が設けられ、診断講習会が開催され、コンサルテーション・システムが整備されています。さらに最近では、蛋白や遺伝子レベルの違いを見た目で判定できるようになってきました。図2は大腸ポリープの一部を拡大したものです。〈a〉は普通の顕微鏡写真、〈B〉は増殖期の細胞の核だけを染め出したもの、〈C〉は異常ながん抑制遺伝子を発現している核を染めたものです(図で濃く茶色い点が陽性の核)。3つの矢印の部を境界として、(1)の領域の核は〈B〉〈C〉では染まっておらず、(2)では〈B〉でパラパラ染まる核があっても〈C〉は陰性、(3)は〈B〉〈C〉でたくさんの核が染まっているのがわかります。すなわち(1)は正常の粘膜、(2)は良性の「腺腫」、(3)は「腺癌」というがんの領域なのです。このような技術によって、悪性・良性の判定だけでなく、転移先の組織から原発巣(もともとがんが発生した組織や臓器)を類推したり、ホルモン療法が効くがんかどうかを判定したりと、病理組織標本から読み取れる情報が格段に多くなり、これらが患者さんの医療に役立てられています。

当院では、病理専門医が直接患者さんやご家族に病理診断についてご説明する「病理外来」も開設しています。詳細は主治医または医事課にお問い合わせください。

図2 大腸ポリープ(拡大)
図2 大腸ポリープ(拡大)

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