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けんこう家族 第94号

第94号 平成21年10月1日発行

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東京逓信病院ニュース「けんこう家族」vol.94 <トップニュース>
パーキンソン病

神経内科 主任医長 椎尾 康

神経内科 主任医長 椎尾 康

〈はじめに〉

本年4月より神経内科に着任しました椎尾と申します。よろしくお願い致します。最初に神経内科の紹介をさせていただきます。神経内科はしばしば精神科(神経科)や心療内科と混同されますが、我々は精神的な症状ではなく、肉体としての脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を診療しています。脳神経の病気を扱う科には脳神経外科もありますが、脳神経外科が主に脳腫瘍、脳出血、頭部外傷など手術を必要とする病気を診療するのに対して、神経内科は投薬、リハビリなど内科的な治療を中心に行います。具体的には脳梗塞、認知症、てんかん(意識消失、痙攣)、神経変性疾患(パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症など)、炎症性疾患、感染症(多発性硬化症、膠原病、脳炎、髄膜炎など)、脊髄疾患、末梢神経障害(ギランバレー症候群など)、筋疾患(筋炎、重症筋無力症、筋ジストロフィーなど)を診療していますが、頭痛、物忘れ、めまい、手足のしびれ、筋力低下、歩行障害などの身近な症状で外来受診される患者さんの診療も我々の仕事です。このように神経内科ではごく一般的な症状から稀な病気まで幅広く診療しており、また脳神経外科の病気も神経内科で検査している中で見つかることも珍しくありません。神経内科は日本では消化器内科や循環器内科などと比べると歴史の浅い診療科ですが、高齢化社会を迎え脳梗塞、認知症などの患者さんが増えている現在、内科学の大きな柱の一つとして地位を確立しつつあります。今回述べるパーキンソン病は、神経内科で診療する代表的な慢性疾患で、当院の外来にも多くのパーキンソン病の患者さんが通院しています。

〈パーキンソン病とは〉

表1 パーキンソン病の診断基準表1 パーキンソン病の診断基準

パーキンソン病は1817年にイギリスの医師パーキンソンにより、筋肉の硬直と振るえを特徴とする病気として最初に報告され、当時は“振戦麻痺”と呼ばれました。振戦とは振るえのことです。その後フランスの神経内科医シャルコーにより、第一発見者の名前をとってパーキンソン病と名付けられました。序文に “神経変性疾患”の中にパーキンソン病を入れましたが、この病気は脳幹(大脳と脊髄を結ぶ神経の幹)の上端にある中脳の神経細胞が死滅していく疾患で、この過程を“変性”と呼ぶことから神経変性疾患の一つとして分類されています。中脳の中でも黒質と呼ばれる場所の神経細胞が消失していきますが、その際にレヴィ小体という異常な構造物が神経細胞内に出現することが知られています。この神経細胞は長い突起をのばし、大脳の線条体と呼ばれる場所にドパミンという物質を運んでおり、パーキンソン病ではこの神経細胞が消失することから脳はドパミンが不足した状態に陥っています。線条体や黒質は大脳基底核と呼ばれ、人間の運動や姿勢の調節、筋肉の緊張、歩行の制御に重要な役割を持っているため、ドパミンが欠乏すると様々のパーキンソン病の症状が出現することになります。大脳皮質(大脳の表面)には変性が及ばないので、パーキンソン病では知能が低下することは原則的にはありませんが、レヴィ小体が脳幹以外の大脳皮質にも出現する場合があって“びまん性レヴィ小体病”と呼ばれますが、この場合は認知症や幻覚などの症状を伴います。

〈パーキンソン病の症状〉

パーキンソン病の具体的な症状は、動作が緩慢になり、姿勢が前方に傾き、歩行が小刻みになる、手足の振戦、四肢が固く動きにくくなる(筋肉の緊張が高まることによるもので固縮といいます)、姿勢を維持する反射の障害が生じ転びやすくなる、といった症状が見られます。振戦はパーキンソン病の代表的な症状ですが、安静時にみられることが特徴で、指で丸薬を丸めるような動作に似てみえることがあります。振戦を来す病気に本態性振戦という遺伝性の病気がありますが、この場合は安静時ではなく、ある姿勢をとったときや動作時に振るえるので区別できます。このほか、パーキンソン病ではまばたきが減り表情が乏しくなり仮面様顔貌と言われる硬い表情になります。話し方も小声で単調になります。また書字が下手になり、小さな文字を直線に沿わずはみ出して書くようになります。手足の筋緊張の異常により痛みを伴うこともあります。症状は左右差があるのが一般的で、たとえば左手の振るえ、動かしにくさから発症したり、歩行の際に一方の手の振りが減少していたりします。また自律神経にも異常をきたし、便秘や頻尿、起立性低血圧などをしばしば合併します。一般的には中年以降に男女かかわらず発症し、日本では10万人に70人程度とされ、欧米の100-150人よりは少ないと言われますが、神経内科の診療においてはごく一般的な病気の一つです。遺伝性、若年性のパーキンソン病が稀にみられますが、普通は遺伝性ではありませんし、原因もよくわかっていません。またこの病気は不思議なことに病気になりやすい性格があると言われており、実際、真面目で几帳面、融通がきかないといった性格の方に多く発症し、また喫煙者では少ない事が知られています。

図1
図1

〈診断について〉

パーキンソン病は採血やMRIなどの一般的な検査で特徴的な異常はなく、症状、診察所見、進行性の経過などをふまえ、パーキンソン病と似た症状を来す別の疾患(パーキンソン症候群ともいいます)ではないことを確認し、さらにパーキンソン病治療薬の有効性などから総合的に診断がなされます。厚生省(現厚生労働省)研究班による診断基準を示します。(診断基準は絶対的なものではありません)

パーキンソン病と類似した症状を呈する病気を総称してパーキンソン症候群と呼びますが、この中には進行性核上性麻痺、脊髄小脳変性症などの神経難病、薬剤の副作用(薬剤性パーキンソン症候群)、正常圧水頭症、脳腫瘍、中毒(一酸化炭素、マンガン)、脳炎後遺症、外傷後遺症など様々の疾患が含まれます。神経内科医の診察所見、MRIなどの画像診断などから総合的に考えて、これらの疾患と区別します。薬剤性としては、精神安定剤、整腸剤、制吐剤などが有名で頻度も高いので要注意です。

〈パーキンソン病の治療〉

パーキンソン病の治療には薬物療法、リハビリテーション、特殊な外科治療などがありますが、現時点ではパーキンソン病の進行をとめたり、きれいさっぱり治してしまう根本的な治療はなく、投薬やリハビリにより症状を和らげて日常生活を送れるよう調整します。以下に主な治療薬について述べます。

ドーパ

ドーパはパーキンソン病患者さんの線条体で不足しているドパミンを補充する目的で投与します。ドパミンそのものは内服しても脳に取り込まれませんが、ドーパは取り込まれてドパミンに変化し、効果が現れます。ドーパは速効性がありパーキンソン病の治療薬の主役といえる薬剤で、この薬が有効であれば逆にパーキンソン病の診断がより確実になります。長年にわたって内服していると薬の効いている時間が短縮する現象があらわれる患者さんもいます。副作用としては悪心、嘔吐などの消化器症状、幻覚(とくに幻視)、ジスキネジアとよばれる不随意運動が知られています。

ドパミン受容体作動薬

ドパミンは神経細胞のドパミン受容体に結合することで情報を伝達しているのですが、この薬はドパミン受容体に結合することでドパミンと同様の作用を発揮する薬剤です。近年複数の種類の薬剤が発売され、いずれも特色があって医師は使い分けているのですが、ドーパと同様の副作用がより強く出る傾向があります。またこの系統の薬は麦角系、非麦角系にわけられますが、前者は心臓弁膜症の副作用があることがわかり、現在は非麦角系の薬剤が主流となっています。

モノアミン酸化酵素阻害薬

ドパミンを分解する酵素の働きを妨げる薬剤で、治療歴が長くなってドーパの薬効時間が短くなり一日の中で調子の良い時間帯と悪い時間帯を生じた(日内変動)患者さんに有効で、ドーパの投与量を減らすこともできます。

アマンタジン

もともとはインフルエンザウイルスに対する薬として開発されたユニークな薬です。神経細胞からのドパミンの放出を促す作用があるため補助的に用いられています。

他にも、かつて治療の主流であった抗コリン薬や、ドロキシドパ、COMT阻害薬などがありますがここでは割愛します。

外科的治療としては、深部脳電極による電気刺激療法や、定位脳手術という治療がありますが、手術治療はまだ一般的ではありません。また遺伝子治療の試みは国内でもようやく始まったところです。

パーキンソン病は原因不明の神経難病で、患者さん本人はもちろん、ご家族にとっても負担が大きいのですが、まずは神経内科で正しい診断をうけ、症状を緩和する薬物療法やリハビリを行っていくことが重要です。原因解明にむけた研究も日進月歩であり、新しい薬剤や遺伝子治療などの治療法の開発が期待されています。

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