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けんこう家族 第95号【3】

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卵巣がん

婦人科 部長 秦 宏樹

婦人科 部長 秦 宏樹

1)  卵巣がんとは

卵巣がんとは、いうまでもなく卵巣に発生する悪性腫瘍です。しかし卵巣が他の臓器と大きく異なるところは、性腺であることです。そのため新しい生命を作り出すための胚細胞(卵子のおおもとの細胞)やその胚細胞が卵子へ成長していく段階をサポートする間質細胞があります。そして他の臓器と同様な粘膜上皮や間質の部分があり、卵巣がんはその粘膜上皮から発生します。ところが、卵巣に発生する悪性腫瘍は卵巣がんだけではなく、その他の胚細胞や、間質細胞から発生するものも考えておかなければなりません。

2)  卵巣腫瘍の種類

卵巣の中には非常にたくさんの役割の異なった細胞が存在するために、卵巣にできる腫瘍は、非常に多くの種類があります。そのため卵巣に発生する腫瘍は、その由来となる細胞によって大きく3種類に分類されています。すなわち表層上皮性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞性腫瘍の3種類です(表1)。また一方で、卵巣腫瘍はその性格によって、良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍と3種類にも分類されています(表1)。表を見ていただくと判りますが、卵巣には、人間の体にできるすべての腫瘍ができる可能性があるといっても過言ではありません。しかし卵巣に瘤(腫瘤)を作ってくる病気はこれだけではありません。腫瘤をつくる病気には、腫瘍という自分で勝手に大きくなってくる(自律性増殖する)ものと、非腫瘍性病変(自律性増殖をしないもの)があります(表2)。臨床的にはいずれも卵巣が腫れていることで発見されますので、その鑑別(見極め)は大事になります。

表1 卵巣嚢腫の臨床病理学的分類(日本産科婦人科学会)
表1 卵巣嚢腫の臨床病理学的分類(日本産科婦人科学会)

表2 卵巣の腫瘍性病変と非腫瘍性病変
表2 卵巣の腫瘍性病変と非腫瘍性病変

3)  卵巣がんの予防

卵巣はもともと母指頭大ほどの大きさしかありませんし、完全に腹腔内臓器であるので、5CMくらいまでの腫瘤ですとほとんど気が付かれることがありません。そのため卵巣腫瘍は、卵巣がんをふくめてSILENT DISEaSE(サイレントデイジーズ:静かなる病気)とも言われております。発生原因としては、疫学的な検討より喫煙歴とか、排卵誘発剤の使用をあげる報告もありますが、詳しいことは解っておりません。そこで早期発見するためには、検診や人間ドックなどを受けてもらうことが不可欠です。しかし残念なことには卵巣がん検診は、いまだに法律による規定がなく、全て自費検診にたよらざるを得ないのが現状です。

4)  卵巣腫瘍の性格

卵巣の腫瘍(腫瘤)性病変は、細胞検査や生検などによって手術前に診断を行なうことができません。卵巣がんが非常に進行した場合、例えば腹水が多量に貯留してその腹水を採取することができた時や、体の外側からとどくところまで病気が進んでしまって、その場所から病変の一部を採取できるようになった場合は例外です。そこで多くの場合は、手術の前に、その性格を推定診断しなければなりません。そのために最も有効な所見は何かというと、その腫瘤が嚢胞性か充実性かを知ることです。それは診察の所見でも画像診断の所見でもかまいません。腫瘍の内腔が均一に液体で満たされている嚢胞性の場合はほとんどが良性腫瘍であるのに対して、腫瘍の実質が認められる充実性の場合には70%が悪性、15%が境界悪性腫瘍、すなわち85%が悪性の性格をもつ腫瘍であります。さらに充実性の部分が、均一のパターンを呈するものは莢膜細胞腫や線維腫といった良性腫瘍のことが多いのですが、不均一のパターンの場合には悪性腫瘍の頻度がきわめて高くなります。(図1)

図1
図1

5)  卵巣がんの診断

[1]問診

症状のある場合に限られますが、まずは問診です。下腹部の膨満感や腫瘤感がないかどうか、最近ウエストがきつくなってきていないか、下腹部に痛みはないか等です。卵巣の腫瘤は小さくても、それがよじれる場合があり、これを茎捻転と呼びますが、かなりの激痛を伴うことがあります。

[2]婦人科の診察

卵巣の腫瘍の大きさ、性状、すなわち硬いところや軟らかいところがないか、また腹水は溜まっていないかなどを見極めます。

[3]画像診断検査

超音波検査、CT(コンピューター断層)検査、MRI(電磁波イメージ)検査などです。

[4]生化学検査

おもに腫瘍が産生する蛋白質(腫瘍マーカー)やホルモンなどの定量を行います。これは採血検査によって、血清中に増加した腫瘍由来と考えられる物質を測定します。現在人間ドックでもこれを測定しているところが増えてきています。卵巣由来の代表的な腫瘍マーカーには、CA125,CA19―9,CEA,AFP,LDH,CA72―4,TPA,STNなどがあります。またホルモンとしてはエストロゲン、アンドロゲン、甲状腺ホルモン、HCGなどが測定されます。

6)  卵巣がんの治療

卵巣がんの治療に関しましては、すでに日本婦人科腫瘍学会が2004年10月に「卵巣がん治療ガイドライン」を刊行していて、施設による格差を除く目的をふくめた標準的治療指針が示されております。これ以下には、そのガイドラインに基づいて解説を行います。

[1]卵巣がんの臨床進行期分類

病理診断上では、卵巣がんは表層上皮性、間質性の悪性腫瘍を意味しますが(狭義の卵巣がん)、胚細胞性の悪性腫瘍や転移性の悪性腫瘍、絨毛がんも臨床的には予後も悪く、卵巣がんと同等に取り扱わなくてはなりません。狭義の卵巣がんは上皮性腫瘍であることから、他の臓器に発生するがんと同様に、その進行の具合を表す臨床進行期分類が定められております。卵巣がんは手術時に病理診断されることが多いため、この進行期は手術で摘出されたものを十分に検討した結果によって決定される術後進行期であります。(表3)  それに加え、病理診断によって得られたがんの病理組織型によって、治療の方法は決定されます。

表3 卵巣癌の進行期分類(FIGO1985)
表3 卵巣癌の進行期分類(FIGO1985)

[2]卵巣がんの手術方法

卵巣がんが疑われたときには、確定診断、すなわち進行期と病理診断をつけるために開腹手術を行います。そして手術によって病変のある卵巣、もしくは明らかな転移巣などを切除して、病理診断を手術中に施行します。これを迅速病理診断といいます。仮に腫瘍が良性であった場合には、腫瘍の切除によって病気は取り除くことが可能ですから、それで手術は終了となります。がんと診断された場合には、次の手術術式が選択されます。

(1) 根治手術(完全手術):子宮、卵巣全摘術+大網切除術+後腹膜リンパ節郭清術
(2) 不完全手術:可能な限り腫瘍を切除する手術
(3) 試験開腹術:確定診断を決定するのみで終了する手術

腫瘍が肉眼的に完全に切除可能である判断された場合には、(1)の根治手術が施行されますが、完全切除が不可能な場合には、主治医が(2)もしくは(3)の手術を行なうことを手術中に決定します。この判断はむずかしいことがありますが、摘出できないで残存する腫瘍の大きさを1CM以下にすることにより、統計学上明らかに予後を良くし得るということがわかっています。  若い女性の方で、その後の妊娠、出産を希望する場合にはどうでしょうか。この場合にはがんの発生した卵巣を切除し、反対側の卵巣の一部を病理検査して転移のないことを確認した上で、子宮と調べた卵巣を温存する手術を行います。しかしこの妊孕性を残す手術を施行することが許されているのは、手術後進行期でIa期のみであります。

[3]卵巣がんの化学療法(抗がん剤の治療)

a)卵巣がん化学療法の適応(種類)

卵巣がんと診断され、手術を施行された場合、Ia期を除いてはすべて術後の化学療法の対象となります。その種類は、根治手術後に再発防止の目的で行われる補助化学療法、不完全手術後に、病気の確認できない状態にもっていくための寛解導入化学療法があります。これらの化学療法では第一選択薬が使用され、後者では効果が十分得られた場合、再度手術を施行することも少なくありません。

それ以外の化学療法としては、再発卵巣がんに対する化学療法がありますが、再発するまでの期間が半年以内の場合には、第一選択薬が耐性となったと判断され、異なった第二選択薬が使用されますが、半年以上経過している場合には第一選択薬が再度使用されます。

B)卵巣がん化学療法の現状(化学療法薬剤の選択)

現在最も広く行われている化学療法は、卵巣がん治療ガイドラインにも第一選択薬として推奨されているTC療法です。これはTaXENE(タキセン)系薬剤とPLaTINUM(プラチナ)系薬剤のカルボプラチン(C)という薬剤の併用療法のことです。タキセン系薬剤にはタキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)という2種類の薬があります。この治療法を第一選択とした理由としてガイドラインは、1077名を対象としたSCOTROC試験においてこの治療が卵巣がん全体で65%の奏効率を得られたことを掲げております。上記試験では1ヶ月に1回点滴治療を行なう方法でしたが、現在ではその効果を高め、副障害を減少させる目的で薬剤を毎週、隔週に投与する方法が主体となってきています。その具体的な方法を以下にお示しします。

(1)TC療法(SCOTROC試験:3週間毎投与方法)
 タキソール(175MG/㎡)+カルボプラチン(AUC=5)
 タキソテール(75MG/㎡)+カルボプラチン(AUC=5)
(2)TC療法(毎週投与方法:東京逓信病院)
  タキソール(60―70MG/㎡)+カルボプラチン(AUC=1・7)
  タキソテール(25MG/㎡)+カルボプラチン(AUC=1・7)
  3週間連続投与し、1週休薬しこの1ヶ月を上記1回とする
(3)TC療法(隔週投与方法)
  タキソール(60―70MG/㎡)+カルボプラチン(AUC2―2・5)
  タキソテール(30―40MG/㎡)+カルボプラチン(AUC2―2・5)

 

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