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けんこう家族 第97号【3】

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肌のトラブル ―汗・紫外線・虫―

皮膚科 部長 江藤 隆史

皮膚科 部長 江藤 隆史

暑い夏がやってきました。汗を沢山かきます。汗は、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺から分泌され、99%が水であり、それに微量の電解質、乳酸、蛋白質などを含有するPH5・7~6・5と弱酸性の低張溶液となっています。最も重要な生理機能は体温調節であることは言うまでもありませんが、そのほかにも、毛孔に開口する皮脂腺から分泌される皮脂と混ざり合ってグリース状となり、自動車の手入れの際のワックスと同様に、皮膚の最外表のバリアーとなる皮脂膜を形成しています。どちらも、適度なお湿り程度の発汗で十分であり、暑い夏に流れ落ちる汗には、その意義はあまり無いといえるでしょう。

発汗量が増すと、分泌管細胞から分泌された重炭酸イオンの再吸収量が減少し、最終汗の重炭酸イオン濃度が上昇し、そのPHはアルカリ性に偏る傾向になります。さらには、皮膚表面に溜まった汗では重炭酸イオンが水素イオンと反応して炭酸ガスを生じ、空気中に拡散してゆくため、皮膚表面のPHはさらに上昇してゆきます。この皮膚表面のPHの上昇は、つまり弱酸性で皮膚表面の細菌の増殖を抑えている機能がなくなって、アルカリ性に傾き、細菌の代表格である黄色ブドウ球菌などの付着菌数を増やし、夏に良く遭遇する伝染性膿痂疹(とびひ)の発症に大きく関与して来るといわれています。

アトピー性皮膚炎では季節的変動が認められる例が多く、冬に悪化する群と夏に悪化する群があります。冬の悪化は、湿度の低下、発汗の減少からの乾燥症状によるものと推測されますが、夏の悪化は、やはり暑さのための過剰な汗が原因として挙げられるでしょう。厚生科学研究班のガイドラインでも「シャワーや入浴により頻回に汗を流すことは、アトピー性皮膚炎を改善させるために極めて重要である」と学校生活でのシャワー浴の励行を推奨しています。まだ、すべての学校でこの体制が実施されるのには、時間がかかるでしょうし、アトピー性皮膚炎の子供だけシャワーを浴びるということ自体、学校生活でいじめの対象にならないだろうかと筆者は危惧しています。吸湿性の良い下着やシャツの着替え用を常に携帯し、大汗をかいたら、こまめに着替えるようにするだけでも、十分悪化を予防できるのではと、筆者は思っています。

汗対策でシャワーばかりを重視し、その後の保湿をおろそかにすると、悪化してしまうことも知っておかねばなりません。車のワックスのごとき体表の皮脂膜が、洗い落とされたあとは、いなばの白兎のような無防備な肌になっているからです。「軽くシャワーのあと、しっかり保湿」が、アトピー性皮膚炎の患者さんだけでなく、多くの乾燥肌質の方々には、重要な夏のスキンケアの秘訣といえるでしょう。

夏は、紫外線の量も多くなります。昔は、日光に当たらないと、骨の代謝に重要なビタミンD3というビタミンが皮膚で活性化されないため、骨が弱くなるといわれ、赤ちゃんが生まれたときに配られる母子手帳にも日光浴を薦める文言がありました。今の母子手帳は、外気浴という言葉に置き換えられ、日光暴露、とくに日光に含まれる紫外線の暴露は、「百害あって一利なし」という考え方に変わってきています。これは、骨の代謝に重要なビタミンD3の合成に必要な紫外線の量は極めて微量で手の甲だけに1日15分程度も浴びれば十分であることが明らかになり、欧米社会で恐れられている悪性黒色腫という黒子のような皮膚癌の発症が、子供の頃からの紫外線暴露の量に極めて強く相関していることが報告されたからです。日本人は、白色人種ほどそのリスクは高くありませんが、過剰な紫外線暴露は、その他の皮膚がんも増やしますし、しみ・しわの原因になります。お尻の皮膚と首筋や顔の皮膚を比べてみてください。お尻の皮膚は肌理細やかですが、顔や首筋の皮膚は肌理が粗く、しわが目立ってきているはずです。これを通常の「老化」と区別し、「光老化」と呼んで、区別しています。「光老化」が進行しないようにする第1の秘訣は、子供の頃からの紫外線対策といえます。強い日差しの日は、帽子や日傘、長袖のシャツそして日焼け防止のクリームを活用してください。私がボストンに留学中、小学生の子供2人をサマーキャンプに送っていった時、サンスクリーン(日焼け防止クリーム)を子供たちが首から下げていなかったため、帰されてしまったことがありました。日本の学校では、ちり紙・ハンカチ検査がありましたが、欧米社会では、それくらい紫外線対策が徹底されていることを知って、今から20年以上も前ですが、びっくりしたものでした。当科では、紫外線暴露で出来てしまったしみなどの対応も積極的にしていますので御相談ください。

図1
図1 左腹部に紅色の細かなブツブツが多発し、チクチクと痛痒い症状が出ています。
典型的な毛虫皮膚炎(チャドクガ皮膚炎)です。

蚊やブユなどの虫刺されも、夏の肌トラブルの代表です。山などに行くときは長袖・長ズボンを着用したりして、刺されないようにする工夫も重要ですが、そうは言っても刺されてしまいます。刺されたあとが、半年もしこりで残ってしまうこともありますので、その様な体質の方は、皮膚科を受診して、強めのステロイド外用薬を処方してもらうことをお勧めします。図1は、チャドクガという蛾の幼虫(毛虫)による皮膚炎です。赤い小さなブツブツが多発し、ちくちく痛痒い症状が出ます。この毛虫は、都心でも良く見られ、山茶花や椿の葉が大好物なので、公園や歩道、マンションの植え込みなどでも大発生します。図2にその毛虫をお示しします。葉の裏にびっしりくっついているので、上からの視線では見えません。直接触れなくても、接近すると敵(人)の気配を察知し、図3に示す毒針毛を逆立て、抜けやすくし、風に乗せてミサイルのように攻撃してくるそうです。幼稚園や児童公園のお砂場の横などには、山茶花や椿の木が良く植えてあります。毛虫の繁殖する6月と9月は要注意です。毛虫が蛾になってもお尻に毒針毛を残しもっていて、洗濯物などに飛び移って被害を与えることもまれですがあるようです。家のそばでチャドクガが大発生していたら、洗濯物も要注意といえるでしょう。ひどい症状の場合は、皮膚科を受診してください。

図2
図2 チャドクガの幼虫
そっと、葉の裏をのぞいてみてください。こっそり身近に潜んでいます。

図3
図3 チャドクガの毒針毛

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