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けんこう家族 第97号

第97号 平成22年7月1日発行

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東京逓信病院ニュース「けんこう家族」vol.97 <トップニュース>
食中毒に要注意

消化器科 医長 関川 憲一郎

消化器科 医長 関川 憲一郎

皆さん、こんにちは。今回はこれからの時期に特に注意していただきたい食中毒に関するお話です。でももうすでに冬場に下痢、おう吐、高熱でひどいめにあったという方もおられると思います。年により流行の程度に波はあるものの、冬場にはノロウイルスによる感染性腸炎の患者さまを大勢拝見します。二枚貝特に生ガキの摂取やウイルスで汚染された飲食物などを介して起こる病気で、ウイルス性食中毒に当たります。

食中毒の原因には毒キノコやフグの毒などによる自然毒中毒や化学物質によるものも一部ありますが、今回はこれからの暑い季節にぜひ注意が必要な細菌性の食中毒について説明いたしましょう。なお“会食や外食の機会に特定の飲食物を複数のひとが摂取しほぼ同時に発症した感染性腸炎”を一般に食中毒と呼びますが、自宅などで一人もしくは家族など少数のひとだけに生じた場合は感染性腸炎と診断され、病気としては同一のものと考えて良いものです。

細菌性食中毒の原因菌

代表的なものとして(1)サルモネラ属、(2)カンピロバクター属、(3)黄色ブドウ球菌、(4)病原性大腸菌群(腸管出血性大腸菌およびその他の大腸菌)、(5)腸炎ビブリオ、(6)ウエルシュ菌、(7)セレウス菌、(8)ボツリヌス菌といったものがあります。過去の報告の集計から発生頻度が多いのはサルモネラ属、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌群の順となっています。経験的には時期によらず比較的強い腹痛・下痢・血便などで入院を必要とするような患者さまで、結果的にカンピロバクター属が検出されるというケースが印象に残っていますから、私たちが普段良く経験する菌は上記(1)~(5)が大部分です。重症化して命をおびやかすようなケースはまれですが、その点からはサルモネラ属と病原性大腸菌の一種である腸管出血性大腸菌(O-157)は注意が必要です。一般的に生もしくは十分加熱されていない肉や魚介類が感染源となることが多いのですが、ブドウ球菌では調理者の手の傷などを介して調理済みの食材で感染します。栄養士さんの項も参考に注意してください。

細菌が食中毒を起こす機序(メカニズム)

感染性腸炎の発症の機序を簡単にお話ししますと、摂取した細菌が消化管内で増殖し菌自体が直接粘膜を障害したり、菌が産生する毒素により消化管に炎症が引き起こされることによります。この毒素が腸管のみならず全身性に悪影響を及ぼすことにより重症化するものとして、腸管出血性大腸菌(O-157)が産生するベロ毒素による溶血性尿毒症症候群が有名です。またすでに産生された毒素で汚染された飲食物を摂取することにより起こる食中毒としては黄色ブドウ球菌によるものがあります。細菌が食物に着いてから増殖したり毒素を多量に産生するのを防ぐため、調理後はなるべく早く食べること、やむを得ず保存する場合は冷蔵することが大切なのはこの理由からなのです。

また食中毒には原因となった同一の内容の飲食をしても発症する人としない人がいることが興味深いと思います。実は私も学生時代に外食レストランでの食事が原因で病原性大腸菌による食中毒にかかりましたが、この際も同じランチを食べた大勢の友人の中にも発症しない羨ましい人がいたことを経験しました。これは摂取した食材の汚染部位や調理加減が必ずしも同一でなければ、人体に入った菌の量も異なり、これに加え摂取した人の体調や固体差により菌を殺す胃酸の状態や体の免疫力の程度が異なることによるためと考えられます。

潜伏期

原因菌により潜伏期(原因となる飲食から発症までの時間)が異なることが細菌性食中毒の特徴です。ポイントは毒素の摂取により生じるブドウ球菌やボツリヌスでは数時間と短いのに対し、それ以外の菌では1日以上かかる場合が大部分です。この点は原因を予測する上でひとつの手掛かりになります。

症状

まず中心となる症状は下痢で、程度により緩い便(泥状)から水様便が1日に複数回見られます。腸管粘膜への障害が強いサルモネラ属やカンピロバクターでは血液の混ざった粘血便をみることもしばしばあり、腸管出血性大腸菌(O-157)では著明な血便をみることが有名です。これらの場合は他の大腸疾患(大腸憩室、潰瘍性大腸炎など)との鑑別が必要となります。他に腹痛や悪心・おう吐、発熱が良く見られる症状です。これらの症状は原因菌によってその出現に差がありますが、実際に症状だけで原因菌を特定するのは困難です。脱水を生じ、強い全身倦怠感、意識混濁、尿量減少などが見られてきたら要注意です。

診断と治療

原因となりやすい食物の摂取や同様の症状の人が身近にいないかを手掛かりに上記症状から疑います。症状が重い人では血液検査(炎症や脱水の程度の目安になります)や腹部レントゲンを行い重症度を判断します。確定診断のためには原因菌を判明させるために便培養検査が大切です。紙カップや専用のスティック型の培養具に便か便汁をとっていただき細菌培養を行いますが、結果には数日以上かかりますので治療は結果をまたずに開始する必要があります。しかし結果により治療期間や抗菌剤の効き目(感受性と言います)の判断に重要な情報、また集団食中毒の決め手となりうるので大事な検査です。すでに抗生物質を内服してからでは菌の検出率は大きく下がるので、便の採取は内服前に行なうことが重要です。

治療は自然治癒する場合も多いことを念頭に、下痢やおう吐による脱水対策をまず第一に行います。症状が比較的軽く口から薬や飲み物を摂れる方の場合はスポーツ飲料などで水分と失われたミネラル(塩分など)を補給することに努めていただきます。中等症以上では4日間ほど抗菌剤(ニューキノロン系やホスホマイシン)の内服で病状の軽減を図ります。強力な下痢止めや腸管運動を抑制させる痛み止めの使用はむしろ細菌や毒素の排泄を遅らせ病状を重くする可能性が高まるので禁物です。食事は重湯や粥を軽く摂る程度が良いでしょう。強い腹痛や血便、おう吐で飲水が不可能な状態などでは入院し、消化管の安静目的での絶食と点滴を行なう必要があります。いずれの場合も通常は数日から1週間で回復することが大部分です。余談ですが腸炎が改善してから数カ月間も便通異常や腹部症状が残る場合があり、ストレスなどが誘因とされていた過敏性腸症候群と腸炎との関連が近年注目されています。

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