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けんこう家族 第99号【3】

| 目次 |

冬場に多い循環器救急疾患
―心筋梗塞について―

循環器科医師 一戸 能麿

循環器科医師 一戸 能麿

 

 

 

はじめに

 皆さんも、一度はこの疾患名を耳にしたことがおありかと思います。本稿では、全ての成人に可能性があるといわれる心筋梗塞を取り上げ、万が一発症したときに慌てないで対処できるように正しい知識を身につけて欲しいと思います。

心筋梗塞とは?

図1 冠動脈閉塞までの過程
図1 冠動脈閉塞までの過程

 心臓は1日に約10万回も収縮・拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。心臓は筋肉(心筋)の塊まりですので、休まず運動するために酸素や栄養が必要です。この心筋に、酸素や栄養を含む血液を送り込んでいるのが、心臓のまわりを通っている冠動脈という血管です。この冠動脈が、動脈硬化(粥腫:プラークと呼ばれる脂質の塊まり)が原因で狭くなる(狭窄)と、心筋に送り込まれる血液が不足して胸が痛くなります。これが狭心症です。このプラークに、何らかの原因で亀裂が生じ破綻する(破れる)と、そこに血栓(かさぶた)ができ、冠動脈を完全に詰めてしまいます(図1)。心筋に血液が行かなくなった状態を心筋梗塞と呼び、その状態が持続するとその部分の心筋が壊死し、心筋の収縮・拡張ができなくなるため、ポンプ機能不全(心不全)を来し命にかかわる危険な状態となります。心筋は一度壊死すると元の状態に治癒することはできませんので、緊急治療-血液再灌流療法-が必要です。





心筋梗塞の疫学-死亡率は3~4割と非常に高い-

 本邦での発症率は、千人あたり男性1・6人、女性0・7人(米国では男性7・1人、女性4・2人)。好発年齢は60~75歳とされています。欧米と比較し少ないですが、生活様式の欧米化に伴い、今後増加が懸念されます。
 心筋梗塞の死亡率は30%~40%と推計されていますが、死亡者の半数以上は病院到着前、あるいは発症から2時間以内に死亡しています。突然死とは、病気の発症後24時間以内に急死することをいいますが、その約60%は心臓病が原因で、なかでも圧倒的に多いのが心筋梗塞とされています。病院内に収容された心筋梗塞患者様の死亡率は、施設や重症度により差がありますが、8~25%と報告されています。

心筋梗塞の症状は?

 心筋梗塞で起こる痛み(胸痛)は、前胸部の焼けつくような激しい痛みや圧迫感が特徴で、「死の恐怖を感じる」と言われます。左上肢も痛く・重だるくなることもあります。痛みの持続時間は通常20分以上続き、安静にしても痛みは消失せず、冷汗や嘔吐を伴うこともあります(10~20秒以内の短い痛みや、指で「ここ」と示すことができる痛みは典型的ではありません)。痛みが上腹部に認められ、かつ嘔吐があると消化器疾患が疑われてしまい、貴重な時間を浪費してしまうこともあります。症状はさまざまですが、はたから見ても「これは異常だ」と感じるものです。しかし、なかには痛みがあらわれず、知らないうちに心筋梗塞になってしまっている場合もあります。無痛性心筋梗塞と呼ばれ、心筋梗塞の約2割を占め、とくに糖尿病患者さまや高齢者に多く見られます。痛みがないために、重症の心不全や不整脈が出るまで気づかない場合も少なくありません。

予測はできないの?

 狭心症と心筋梗塞の発症機序は似て非なるものとされています。血管の約3分の2(70%以上)が詰まると労作時に症状が出現しますが、これら強い狭窄の原因であるプラークは比較的安定しており、破綻は来しにくいとされています。破綻を来しやすい、不安定なプラークが心筋梗塞の主要因ですが、その狭窄度はせいぜい30~50%であり、その程度の狭窄度では症状が出づらく、心筋梗塞の予測を困難にしております。

起きやすい季節や時間帯は?

 心筋梗塞の発作は、朝起きてからだが少しずつ目覚め活動しはじめる午前9時~10時頃と、残業など仕事後20~22時頃の2つのピークが知られています。朝方は女性や高齢者に多く認め、夜には比較的若い男性の飲酒・喫煙者に多い傾向が見受けられます。季節としては、狭心症と同様、冬の寒い日に多い傾向があります。

安静にして救急車を待ちましょう

 心筋梗塞を疑わせる激しい胸痛があらわれ、安静にしても症状が改善されない場合には、躊躇せず救急車を要請してください。早めにだれかを呼んで、胸が痛いと伝えることが大切です。救急車を待つ間は安静にし、息切れや呼吸困難が強い場合は、上半身を起こして座ると楽になることがあります。なお、心筋梗塞の発症が原因で不整脈を起こし、心停止状態になる可能性もあり、このような場合には、速やかに心臓マッサージやAEDによる救急蘇生を開始することが救命に必須です。

心筋梗塞の治療には、どのようなものがありますか?

 治療法は、まず酸素を吸入し、痛みが強い時は塩酸モルヒネを用います。モルヒネは麻薬ですが、その鎮痛効果は非常に強く、心臓や呼吸に良い効果も期待されます。内服薬に関してはアスピリンが非常に重要で、本症と診断されれば速やかに内服していただきます。また点滴をとり、ニトログリセリンやヘパリンという薬を用います。以上のいわば「前治療」に引き続き、冠動脈の詰まった部位を確定し、適切な治療を行うために必須なカテーテル検査(冠動脈造影検査)を行います。本検査は足の付け根や手首・肘の動脈からカテーテルという細い管を挿入し、冠動脈へ直接造影剤という薬を注入し、詰まった部位を確定する検査で、可能であれば引き続きカテーテル治療を行います。しかしカテーテル治療の適応が無い病変・病態もあり、その場合は検査のみで終了し、速やかに外科的治療を行います。外科的治療としては、多くは開胸して別の血管(胸の裏を走る内胸動脈や腕の橈骨動脈、足の大伏在静脈など)を用い、詰まった部位を回避する道を作る冠動脈バイパス術が行われます。

カテーテル治療:経皮的冠動脈インターベンション(PCI)って…

図2 PCIのイメージ
図2 PCIのイメージ

 心筋梗塞治療の目標は、詰まった血管を開いて(再灌流)、壊死心筋を最小限度にとどめることで、それを可及的速やかに達成することが救命率向上につながります。カテーテル検査に引き続き閉塞血管再灌流治療(PCI)を行います(図2)。カテーテルを通して閉塞の原因である血栓を直接吸引したり、風船(バルーン)を詰まった部位で拡げて開いたり、その後、再び閉塞するのを防ぐためにステントと呼ばれる筒状の金網を血管内に留置したりすることが可能です。最近ではステントにも改良が加えられ、ステントに薬を塗って血管の再狭窄を防ぐDES(Drug Eluting STENT:薬剤溶出性ステント)と呼ばれるものが登場し、心筋梗塞へも応用されています。

おわりに

 狭心症も心筋梗塞も動脈硬化を基盤として発症しますので、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、家族歴などの「危険因子」を多く持たれる患者様に発症します。禁煙は必須で、塩分・糖分・脂肪分のとりすぎに注意し、バランスのよい食事をして、高血圧・糖尿病・脂質異常症を予防する。適度な運動(毎日適当な距離を歩く習慣をつける)、気分転換を図り、ストレスを避け、規則正しい生活を送る。血縁者に心筋梗塞や狭心症の方がいれば、特に長年の悪い習慣を改める必要があります。また心筋梗塞は過度の疲労や緊張、暴飲暴食などをきっかけに生じることが多いので、それらを避けることも大切です。
 心筋梗塞は生活習慣病です。なったからどうしようではなく、ならないようにどうすべきかが最も重要です。

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