ここがページの先頭です。
ページ内移動メニュー
ヘッダーメニューへ移動します
共通メニューへ移動します
現在の場所へ移動します
本文へ移動します
サイドメニューへ移動します
現在の場所
ホーム  健康情報  病院だより「けんこう家族」  けんこう家族 第99号  けんこう家族 第99号【4】
ここから本文です。

けんこう家族 第99号【4】

| 目次 |

出血性脳卒中

脳神経外科 医長 谷口 民樹

脳神経外科 医長 谷口 民樹


 脳卒中(脳血管障害)は、がん・心臓病と並んで3大成人病の一つに数えられていて、死亡率でこの2つに次ぐ第3位です。しかし、30年前までは脳卒中が死亡原因の第1位でした。この変化は治療による死亡率の低下のおかげです。患者数では、現在でも130万人を超え、国民の100人に1人以上で、これは死亡率第1位のがんの患者数とほとんど同じです。(厚生労働省統計)

 この脳卒中のうちで、脳に血液を送る血管が詰まったり細くなったりして起こるものが、虚血性脳血管障害(脳梗塞)です。一方、この血管が破れたり切れたりして起こるものが、出血性脳血管障害(出血性脳卒中)です。今回は、この出血性脳卒中のお話です。

 出血性脳卒中は、いわゆる脳卒中死亡の3分の1を占め、このうちの3分の2が脳出血で、残り3分の1がくも膜下出血です。脳出血は、脳に直接血液を送り込む細い血管(穿通動脈)から起こります。ここが動脈硬化してもろくなり、脳の中で切れて起きます。一方、くも膜下出血は、脳に入り込む手前の脳の付け根の広い空間を走る太い血管から起こります。ここが弱くなって膨らみ、この風船状の膨らみ(脳動脈瘤)が突然破れて起きます。(表1)

表1 脳出血とくも膜下出血
  脳 出 血 くも膜下出血
出血源 脳に入った後の細い血管
(穿通動脈)
脳に入る前の太い血管の膨らみ
(脳動脈瘤)
出血の場所 脳の中を壊しながら広がる 脳の外を取り巻いて広がる
症状 局所の機能の低下
(手足の麻痺や言葉の障害など)
脳全体に高い圧力
(頭痛や吐き気)
時間 ややゆっくり(数十分~数時間) 急速(数分~十数分)
手術 出血を取り除く(血腫除去術) 再出血を予防する(クリッピング術)

 したがって、脳出血では脳の中に血液を押し込むように脳を壊しながら細い血管からの出血が広がりますので、症状はややゆっくりと数十分から数時間かけて進行します。そして、症状は出血した場所の機能の低下として現れます。例えば、手足の麻痺や言葉の障害などです。さらに、これは壊された脳の働きですので後遺症として残ります。(図1・2)

 これに対して、くも膜下出血では太い血管の非常に高い圧力が一度にかかりますので、症状は急速で数分から十数分で完成します。この血液は脳全体を取り巻いて高い圧力をかけますから、急な頭痛や吐き気が第一となります。さらに出血が続くと、脳の中心にある意識の中枢にも強い圧迫が加わり、意識が障害されて眠り込んだり昏睡状態となってしまいます。しかし、こちらは出血が少ない場合には脳の破壊は伴いませんので、治療が奏功すれば後遺症なく完治します。(図3)

 
図1 穿通動脈(矢印 )からの脳出血と、脳動脈瘤(矢印 )からのくも膜下出血
図1 穿通動脈(矢印矢印の画像)からの脳出血と、
脳動脈瘤(矢印矢印の画像)からのくも膜下出血
 
図2 CTスキャン 脳を壊しながら、その中に広がる脳出血(矢頭▽)
図2 CTスキャン 
脳を壊しながら、その中に広がる
脳出血(矢頭▽)
図3 CTスキャン 脳の底の空間から、脳の隙間に広がるくも膜下出血(矢頭▽)
図3 CTスキャン 
脳の底の空間から、脳の隙間に広がる
くも膜下出血(矢頭▽)

 ただし、両方とも出血が多ければ一回の出血で命を落とす危険性も非常に大きなものです。さらにくも膜下出血では、出た血液が1~2週後に周辺の血管を細くして脳梗塞を引き起こす事が重大な合併症となります。(これを脳血管攣縮と言います。)

 そこでこれらの治療ですが、脳出血では出血した血管は細くてその後に詰まってしまうので、小さなものでは点滴治療のみを行います。また、出血した場所が深くて重要な所では、血液を取り除くことで脳の障害が一層大きくなる場合には手術は行いません。一方、大きな出血で取り除くことによって回復が期待できる場合には、出血を取り除く手術(開頭・血腫除去術)を行います。これは、出血後に周りの脳がむくんで脳の圧力が上がり、命が危険になる時にも行います。(血液を取る手術は小さな穴から吸引して行う場合[定位脳手術]もあります。)

 これに対して、くも膜下出血では出血源の動脈瘤は一度破れるとその穴はふさがらず、いずれ再出血します。この2度目の出血では、1度目に破れた穴がさらに大きく広がりますので、意識も無くなり呼吸も止まるような大出血の可能性が大きくなります。したがって、手術で再出血を予防することが第一です。これは、瘤の入り口をクリップという金属ではさんで血液が入らないようにする手術(開頭・クリッピング術)です。この手術中にくも膜下出血を取り除くことは、後の脳血管攣縮を予防する効果があります。(瘤の閉塞はカテーテルで行うこともあります[血管内手術]。)(図4・5)

 
図4 術前脳血管撮影 破裂した脳動脈瘤(矢印 )
図4 術前脳血管撮影
破裂した脳動脈瘤(矢印矢印の画像
図5 術後脳血管撮影 クリッピングした脳動脈瘤(矢印 )と周辺の脳血管攣縮(矢頭 )
図5 術後脳血管撮影
クリッピングした脳動脈瘤(矢印矢印の画像)と
周辺の脳血管攣縮(矢頭矢印の画像

 これらの出血を引き起こす大きな原因は、どちらも血圧の上昇ですので、予防には高血圧症の治療が大切です。高脂血症や糖尿病などのメタボリック症候群も動脈硬化の進行を早めて出血の危険性を高めますので、これらにも治療が必要です。さらに、脳動脈瘤では、破裂する前に見つかれば後遺症もほとんど無く短期間の入院で治療が可能です。これは、脳ドックでも行うMRA検査により簡単に診断することができます。以上のお話は、出血源として最も多いものに関してです。他に、もっと少ない原因による脳出血・くも膜下出血がありますが、これはまた日を改めてお話したいと思います。

 最後になりますが、もし頭痛などでご心配がございましたら、気軽に脳神経外科の外来を受診(あるいはご紹介)ください。きっとお役に立てるはずです。

| 目次 |

ここまで本文です。
ここからサイドメニューです。 ここまでサイドメニューです。
^このページの一番上へ
【画像】印刷用のフッター画像です