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けんこう家族 第102号【2】

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『OCT―多くの網膜の病気や緑内障の診療に役立つ』

眼科医長 善本三和子

眼科医長
善本三和子 

 OCTとは、Optical Coherence Tomography(光干渉断層計)の略で、光の干渉を利用することにより、針を刺したり造影剤などを使うことなく、安全に眼の組織の断面像を観察することができる検査装置で、その原理は平成2年日本人により考案されました。OCTを用いると、従来の眼底検査ではみることはできなかった、網膜の断面を見ることができ、色調や表面の形だけでは診断ができなかった網膜の病気の診断が可能になりました。(図1)


図1.眼球の構造とOCTで検査する部位(  )

 初代のOCTは、タイムドメインOCT(Time‐domain OCT)という方式で、日本では平成9年に導入されましたが、まだ細かい病変はこの装置ではわかりませんでした。しかし、その10年後、新しい世代のスペクトラルドメインOCT(Spectral‐domain OCT:SD‐OCT)が登場し、より速く、鮮明な画像を得ることができるようになり、OCTの診断能力は飛躍的に向上しました。SD-OCTを用いると、網膜の中の細かい層構造(網膜は数種類の細胞が層を成して重なっています)をみることができるようになり(図2)、ある特定の病気でとくに障害を受けやすい細胞の層に注目して調べることができます。そのため網膜の病気では、網膜の視細胞(光を感じる細胞)がある部分の異常を知ることで、視力との関係を知ることができたり、さらに最近では、緑内障で障害を受ける神経の線維(視神経乳頭にむかって、物がみえる情報を伝達する細胞の突起)の層の厚みを測定し解析することで、緑内障の診療にも大いに役立つようになりました。当院では、平成23年3月末より、SD-OCTを導入し、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、その他の黄斑浮腫を起こす病気、中心性脈絡網膜症などの網膜の病気だけでなく、緑内障の診療にも大いに活用しています。  ここで、OCTを用いた病気と治療の紹介をします。(1)加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)という病気は、加齢により網膜の外側の脈絡膜から新生血管が生えてきて、網膜の中や下に水がたまったり出血したりすることで網膜を傷める病気です。最悪の場合は失明することもあります。この病気には抗VEGF抗体(ルセンティス®)という薬の注射がよく効き、網膜の下にたまった水が減少することがOCTを使うとよくわかります。(図3)また、(2)糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)で黄斑部(おうはんぶ)にたまった水(糖尿病黄斑症)が、ステロイドの注射や硝子体切除術により減少し、網膜の正常の形が回復してくるのもよくわかります。(図4)(3)黄斑円孔(おうはんえんこう)(黄斑部に孔があく病気)では、孔をふさぐ目的で硝子体切除術を行いますが、OCTで観察すると、孔がふさがる様子(図5)だけでなく、視細胞が回復してくる様子までもが観察できます。(4)緑内障(りょくないしょう)は、視神経乳頭(眼底に顔をだしている視神経の頭)の辺縁(へり)の健康な神経線維が細くなっていくことが病気の原因です。緑内障では視神経乳頭の形の変化と視野検査が診断に役立ちますが、OCTを用いると、病気で狭くなった“へり”に沿って網膜の神経線維の厚みが、他の部分よりも薄くなっていることがわかり、視野検査結果と比較することで、診断がより確実になります。図6では、神経線維の薄い部分と視野の異常の範囲がきれいに一致していることがわかります。このように、OCTを用いると、病気の詳細な検査を行うことができるだけでなく、ここに紹介させていただいたような写真をお見せすることで、より患者さまご自身の病気に対する理解が深まるという利点もあります。


図2.OCTの進化(網膜断層写真)
Time‐domain OCTに比してSD-OCTは解像度が抜群によく、実際の網膜の組織に近い所見を得ることができます。


図3.加齢黄斑変性(ルセンティス硝子体内注射前と後)
注射後、脈絡膜新生血管(  )の上にたまっている水(★)が消失しています。


図4.糖尿病黄斑症(ケナコルトテノン嚢下注射前と後)
注射後、網膜の中にある水のたまり(★)が消失し、中心窩のくぼみ( )が回復しています。


図5.黄斑円孔(硝子体切除術前と後)
硝子体膜( )に引っ張られ、網膜の中心部にあいていた孔(★)が、硝子体切除術後には、ふさがり、中心窩のくぼみ( )が回復しています。


図6.緑内障のOCTと視野
緑内障で障害された網膜の場所と視野は上下が逆転します。この方では、OCTで中心より下の網膜の視神経線維が薄く(色が暗い)、それに相当する上方の視野が欠損しています。

 OCT検査は、散瞳(点眼薬で瞳を広げること)し、眼底写真をとるときのように器械の台にあごを乗せていただき、数秒間、目標をみていただくことにより、撮影が可能です。(図7)まばたきや、眼が動いてしまったりすると再検査が必要になりますが、眼底写真ほどのまぶしさを感じることはなく、検査にかかる時間もそれほど長くはありません。白内障や眼の中の濁り(角膜混濁、虹彩炎、硝子体出血、硝子体混濁など)があると、やや鮮明ではなくなりますが、それでも役に立つ情報を得られることが多いです。また、費用は、1割負担の方では200円程度です。  高齢化社会に伴い、生活に必要な視機能(視力や視野など、ものをみるための総合力!)をどれだけ長く維持できるかは、大変重要な問題です。とくに、加齢黄斑変性症や緑内障は、日本人の失明原因の上位を占める病気ですが、早期発見すれば失明を防ぐことができる病気です。加齢黄斑変性症では、より早期で新生血管が小さい時期に治療を行ったほうが、治療効果が高く、視力低下を防げることがわかっています。また緑内障も早期に発見して、きちんと治療すれば、目が不自由になることなく一生を終えることが可能です。OCTをはじめとした様々な進歩した診断機器を用いることにより、病気を早期に発見し、治療を行うことで、眼の病気で不自由になる患者さまが少しでも減少することを、眼科スタッフ一同、心より願っています。


図7.OCT検査風景

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