白内障手術時には、濁った水晶体を除去し、そこにプラスチック製の眼内レンズを入れて網膜にピントが合うようにしています。通常用いる眼内レンズは、「単焦点眼内レンズ」で、設定したある距離にだけピントが合いますが、それ以外の距離にあるものはピントが甘くなります。正常の水晶体は、見る距離によってその厚みを変えて自動的にピントを合わせるのですが、眼内レンズにはその機能はないからです。
ピントが合わない距離にあるものを見るときには、メガネをかけて見えるようにしますが、手術前にメガネを使う習慣がなかった方は、メガネのかけ外しを煩わしく感じる場合があります。
メガネのかけ外しをなるべく減らすために「多焦点眼内レンズ」が開発されました。「多焦点」と言っても、実際は遠方1カ所と中間または近方の1カ所の合計2カ所にピントが合うように設計された「二重焦点」眼内レンズです。遠方以外の2番目にピントが合う距離をどのくらいにするかは、事前の検査結果を踏まえて患者さんと相談して決めます。2番目のピントが合う距離は、約50㎝、約40㎝、約30㎝の3種類から選べます。中間距離の見え方を重視するか、近くの見え方を重視するかによって、手術後の見え方が少し異なります(図1)。
図1 多焦点眼内レンズ手術後の見え方
中間の見え方重視
近くの見え方重視
① 名前は「多焦点」ですが、すべての距離にピントが合うわけではありません。メガネなしではっきり見える距離は拡がりますが、見る距離によってはメガネが必要になります。
② 多焦点眼内レンズがすべての方に向いているわけではなく、事前の検査やカウンセリングの結果、従来の単焦点眼内レンズのほうがよい場合があります。
③ 手術後、薄暗いところで文字などが見づらい(コントラスト感度低下)、夜間街灯やヘッドライトがぎらついて見える(グレア・ハロー)、文字に影がついて見える(ゴースト)、などが起こることがあります。
④ 保険が効きません。多焦点眼内レンズは厚労省が認可していますが、その費用を保険で賄うことは認められていませんので、通常、手術費用も含めて自費になります(混合診療が禁止されているため)。特例として先進医療の認可を受けていれば眼内レンズ費用のみ自費となりますが、当院では未認可のため、検査・手術・3泊4日の入院費用を含めて片眼45万円(税抜き)の自費診療としています。
⇒2017年6月1日から、厚生労働省より「先進医療」として認可されました。これにより、保険を使えない範囲が先進医療の「多焦点眼内レンズの費用」と「手術料」だけになりましたので、3割負担の方で3泊4日の入院で自己負担が片眼約42万円(税抜き)で行えるようになりました。(2017.6.22追記)
詳しくはけんこう家族125号『当院の多焦点眼内レンズが「先進医療に」』をご確認ください。
白内障手術を予定しておられる方でご興味のある方は主治医にご相談ください。