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認知症

認知症とは

 認知症とは、「一度正常に達した認知機能が、後天的な何らかの原因で低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになったこと」を指します。
 症状としては、少し前のことを忘れてしまい思い出せない、新規のことを覚えられないといった記憶障害が中心です。昔のことは比較的良く覚えています。なお、意識ははっきりしているので意識障害ではありません。

認知症の症状

 症状は、月単位~多くは年単位でゆっくり進行します。同じ話を何度も繰り返して、忘れたことの自覚がないことが特徴で、受診時には自分は困っていないということも多いです。さらに進みますと今日が何月何日なのか分からない、徘徊、家事が出来ない、料理の手順や買い物に行っても計算ができなくなったりします。進んでくると物盗られ妄想といって大事なものをしまっても忘れてしまい、泥棒が入った、家族の誰かが通帳を取ったなどと騒ぐ、実際には起きていないことを疑うような妄想や幻覚、幻聴といった精神症状が出現します。そうなると、精神科での対応が可能な医療機関を受診する必要があります。

認知症の原因

 認知症をきたす原因としては、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管障害を原因とした血管性認知症、嗜銀顆粒性認知症、正常圧水頭症、脳腫瘍、クロイツフェルト-ヤコブ病、神経梅毒のような神経感染症、甲状腺機能低下症や下垂体機能低下症のような内分泌機能異常症、慢性アルコール中毒、ビタミン欠乏症、などがあり、特にアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症が多いです。これらの疾患を外来では精査します。

認知症の診察・検査

 では、実際に病院ではどのような流れで診察、検査を進めていくのでしょうか。まず、ご本人、ご家族からどのような症状がいつから起きたのか、お話を伺います。ご本人の受診が必要ですが、ご本人が診察を拒否している場合や症状に自覚が無い場合もあり、なかなか話を聞きだすことが難しいことも多いです。また、逆に患者さんだけですと、言っていることが本当のことなのか確認が出来ないことや受診して説明しても、その内容を忘れてしまうこともあります。そのため、できれば現在の状況を知っているご家族とご本人が納得の上で一緒に受診されることが望まれます。
 お話を聞いた後、一般的な神経診察、認知症テストを行います。外来の限られた時間ですと、長谷川認知症スケール(HDS-R)かミニメンタルステート検査(MMSE)を行います。
 そして、問診と上述した診察、認知症テストで認知症が疑わしい場合には、原因検索に進みます。まず、採血では一般的な項目に加えて、凝固機能や血栓のチェック、甲状腺機能などのホルモン、ビタミンB群などを調べます。画像検査では、頭部CT、MRI、脳血流シンチグラムなどを組み合わせて検査しますので何度か外来には通院して精査してもらうことになります。
 とくに日の単位で急に認知症がはじまったようだ、というときは慢性硬膜下血腫という脳に血が溜まる病気が見つかることがあり、注意が必要です。血腫は時間が経つと水腫となります。慢性硬膜下血腫・水腫は、お酒を多く飲む方で頭部を打撲したことがきっかけであることが多く、頭部CTで診断します(図1)。血腫が大きい場合や自然経過で改善が無ければ、脳神経外科で血腫除去術という手術をします。

図1 慢性硬膜下血腫・水腫のCT画像
図1 慢性硬膜下血腫・水腫のCT画像
慢性硬膜下血腫がある程度時間が経過し、水腫になってきているところです(黄色の矢印)。
脳室や脳が圧迫されていることが分かります。

診断が多い認知症

 ここからは診断が多い疾患について、述べてみたいと思います。いずれも年単位でゆっくり進む疾患です。

アルツハイマー病

 まず、アルツハイマー病についてです。この病気は脳にアミロイドβたんぱくという異常なタンパク質が溜まることで、脳の神経細胞が壊れてしまい、脳が萎縮します。とくに海馬という記憶に大事な部位から萎縮が始まり、脳全体に進行していきます。症状は数年~10数年で物忘れが緩徐に進み、進行すると精神面にも抑うつや幻覚といった異常が出ます。頭部MRIは症状の進行とともに海馬から萎縮します。初期にはMRIでは異常がありませんが、脳血流シンチグラムでは、頭頂葉・側頭葉連合野皮質の低下、海馬が含まれる内側側頭部の血流低下が早期に検出できますので有用です。

脳血管性認知症

 次に脳梗塞や脳出血といった脳血管障害によっておこる、脳血管性認知症について説明します。
 脳血管障害は、心房細動による塞栓や糖尿病、高血圧、脂質異常症を背景とした動脈硬化で生じ、大事な血管が詰まった結果、脳の神経細胞が死んでしまうことで生じます。脳血管障害を起こすごとに神経細胞が減り、階段状に症状が進みます。まだら認知症と言われることもあり、脳血管障害で死んでいない部位は正常に働いており、問題のある機能とそうでない機能に差が明瞭であることを指します。頭部MRIでは脳血管障害を起こしたあとがあること、MRAでは大事な動脈の狭窄や閉塞が見られます。最近は、高齢化のためアルツハイマー病と合併していることもあります。

レビー小体型認知症

 最後にレビー小体型認知症についてです。この病気はパーキンソン病に似ており、体の動きがゆっくりとなり、四肢の関節が固くなり動きづらくなるパーキンソン症状に物忘れが加わった病気です。とくに幻視と言い実際には無いものや人がはっきりと見えるという症状が特徴の1つです。また、症状も良い日と悪い日の差も大きかったりします。原因はよくわかっておりませんが、脳の神経細胞にレビー小体というαシヌクレインというタンパクが溜まることが知られていて病名となっています。頭部MRIではアルツハイマー病に比べると萎縮は軽いことが多いです。また、幻視と関連があると言われておりますが、脳血流シンチグラムで側頭葉、後頭葉の血流低下が認められます。そして、MIBG心筋シンチグラフィで心臓交感神経に異常がみられ、立ちくらみなどの自律神経の障害と関連があると言われています。

認知症の治療

 精査の結果、診断が付きますと疾患別に治療を開始します。
 アルツハイマー病では、コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬などが使われます。薬の働きとしては、いずれも神経細胞同士で情報の伝達にかかわっている神経伝達物質を良い状態にすることで記憶能力の悪化を防ごうとするものです。しかし、病気自体の根本的な治療ではなく、進行を止めるわけではありません。効果も個人差が大きく、期待しすぎるとがっかりしたり、使ってみて副作用がないか確認していき、患者さんごとに合った薬を選択していくことになります。
 脳血管性認知症は脳梗塞同様の治療と予防が治療です。
 レビー小体型認知症では、アルツハイマー病で用いるコリンエステラーゼ阻害薬が用いられ、効果を示す患者さんもおります。また、パーキンソン症状にはパーキンソン病で使われる薬が使われます。

認知症のケア

 認知症のケアの基本としては、認知症ガイドラインに載っているとおり、患者の能力の低下を理解し、過度に期待しないこと、簡潔な指示や要求を心がける、患者が混乱したり怒っている場合には要求を変更する、失敗につながるような難しい作業は避ける、障害に向かい合うことを強要しない、穏やかで安定した支持的な態度を心がける、不必要な変化を避ける、できる限り良く説明し、患者の見当識が保たれるようなヒントを与える、といったことが望ましいとされています。
 認知症を起こす原因は、先に述べたようにさまざまですが、有効な予防法は現在なく、多くは進行性で認知機能は低下してしまいます。少しでも残された機能を維持し、穏やかに過ごすことが出来る期間を延ばすことを目標とします。しかし、徘徊、精神症状が出てきますと、一般病院での対応は困難となり、家族の協力にも限界があります。そのため、限界が来る前に地域の地域包括支援センター、介護保険の利用、物忘れ外来、認知症専門医、精神科医、往診医などと協力して対策をしていくことが重要と考えられます。

参考文献

1)日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017,医学書院,東京,2017
2)東京逓信病院:病気&診療 完全解説BOOK:101疾患の診断・治療から費用まで,医薬通信社BOOKS,東京,2017

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