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ホーム  診療科のご案内  神経内科  脳梗塞
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脳梗塞

はじめに

図1 脳血管のイラスト

 「脳梗塞」とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気です。片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害など様々な症状が突然出現し、程度は様々ですが多くの方が後遺症を残します。
 わが国には高齢者などの介護にかかる負担を社会全体で支援する介護保険制度というものがあります。この制度で要介護認定を受けている方の原因疾患で最も多いのは、脳梗塞、脳出血やくも膜下出血などの「脳卒中」の後遺症で、実に20%以上を占めます。2位には認知症が続きます。一方、日本国内の死因の順位は、脳卒中は悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎に続き国内死因の第4位です。脳の病気は、他臓器の疾患よりも日常生活に支障をきたしやすく、介護の必要性が非常に高いことを反映しています。

脳梗塞の原因と予防

図2 生活習慣病の人のイラスト

 発症を防ぐためには、その原因を知ることが重要です。まず高血圧・糖尿病・脂質異常・高尿酸血症・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や、慢性腎障害があげられます。これらは動脈硬化を少しずつ進行させ、やがて動脈が詰まったり細くなったりして脳梗塞を引き起こします。生活習慣病は自覚症状がほとんどなく、検査をしないと見つかりません。定期的に健康診断を受け、異常を指摘されたら放置せず、積極的に治療を開始することをおすすめします。喫煙や多量の飲酒も動脈硬化を促進させます。また、運動や入浴・サウナなどでの脱水が脳梗塞の原因になることがありますので、汗をたくさんかくときにはこまめな水分摂取も重要です。

図3 お寿司の画像

 皆様、日ごろお魚を召し上がっているでしょうか。魚の油には、エイコサペント酸(EPA)という多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、これは脂質異常症の治療に使われる薬にもなっている成分です。動脈硬化性疾患の予防効果があることが知られており、脳梗塞の予防にも有効ですので、普段お肉料理が多い方はお魚も取り入れてみてください。EPAは、いわし、さば、さんま、マグロなどに多く含まれています。

 心房細動という不整脈も、脳梗塞の原因となります。心臓内の血流のよどみによって血栓がつくられ、それが脳などに流れて様々な臓器で動脈塞栓を引き起こします。ただ、この不整脈も自覚症状に乏しく、塞栓症を起こして初めて気づかれる方も多いのが現状です。心房細動がみつかった場合は、塞栓症を起こしたことがなくても、年齢や合併症によって抗凝固療法の開始が推奨されています。心房細動からの塞栓予防には、少し前までワルファリンという薬しかありませんでした。今でも内服している方はたくさんいらっしゃいますが、納豆を食べられない、個々に内服量が違う、原則として月1回の採血が必要、出血性合併症が多い、他の薬と相互作用が多いなどの問題があります。2010年以降、DOAC(direct oral anticoagulant)とよばれる新しい抗凝固薬が次々登場し、導入が非常に簡便になりました。ワルファリンとの大きな違いのひとつは、脳出血が少ないという点です。特に、日本人は欧米人と比較し脳出血が多い人種であるため、納豆が食べられるとか採血の頻度が減るということ以上に、大きなメリットといえます。またDOACは、ワルファリンに比較し効くのも切れるのも早いため、手術などで中止しなければならない期間が短く済み、もし内服中に出血が起こってしまってもワルファリンより重篤になりにくいという利点もあります。ただし、一定以上の腎機能障害の方は使えないのと、お値段が少々高いというデメリットがあります。
 なお、心房細動ではなく、前述の動脈硬化やそのリスクとなる疾患・生活習慣があるという場合に、予防的な抗血栓療法(アスピリンなど)は慎重であるべきと考えます。一度でも脳梗塞や心筋梗塞を発症した方の再発予防としては必須ですし、血管に強い狭窄があるなど特殊な事情によっては必要かもしれません。しかし、日本人は脳出血が多い人種であり、予防のつもりがかえって脳出血を助長し事態を悪化させかねず、現時点では積極的には勧められません。

 脳梗塞の原因は、これまであげた動脈硬化や不整脈のほかに、動脈の壁が裂けてしまう解離や、心臓に空いた穴から塞栓が飛んでくる奇異性塞栓、血管の炎症を惹起したり血栓を形成する自己免疫疾患、血管の先天的/後天的異常、遺伝性脳梗塞やピル・コカインなどの薬剤によるものなど、様々なものが隠れていることがあります。これらは自分で予防することは難しく、もし発症してしまったらよく検査することが大切です。当院神経内科では、脳梗塞の患者さんは頸部の血管や心機能、不整脈などの検査を全例行うとともに、稀な病態も念頭に詳しい検査を行い、原因に合わせた適切な治療を行うよう心がけています。

脳梗塞の急性期治療

 rt-PA(遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ)を用いた血栓溶解療法は、詰まった血栓を溶かして脳への血流を再開通させる注射薬で、発症4.5時間以内で一定の条件を満たした方に使用することができます。また、脳の血管に直接アプローチして血栓を絡めたり吸引したりして回収し、脳血流を再開するという「血管内治療」も普及してきています。これらの超急性期治療は、発症からの時間経過が短いほど適応になりやすいし改善もしやすいので、自分や家族が「脳卒中かも知れない」と思ったら、できるだけ早く病院を受診してください。東京都では、東京都脳卒中救急搬送体制というシステムを導入しており、救急隊が「脳卒中疑い」と判断した場合、発症から間もなければ超急性期治療ができる施設に搬送してくれます。超急性期治療の適応がなくても、即日入院して抗血小板薬、抗凝固薬、脳保護薬など様々な薬剤を組み合わせて治療を行います。やはり早く治療を開始し、リハビリテーションを開始した方が後遺症は残しにくいですから、迷わず早く受診してください。

おわりに

図4 採血のイラスト

 当院では、神経内科と脳神経外科が協力しながら脳梗塞の主に急性期治療を行っておりますので、ご不明な点があればご相談ください。
 脳梗塞の治療は、たしかに日々進歩していますが、何よりも発症しないことが一番です。塩分の摂りすぎに注意し、禁煙し、お酒はせいぜい1日1杯、魚も取り入れ、適正体重を保ち、定期的に健康診断を受ける。なかなか難しいかも知れませんが、少しずつでも、生活習慣を変えてみてはいかがでしょうか。忙しい毎日、自分の健康は後回しになりがちかもしれませんが、どうぞご自愛ください。いつまでも、健康でありたいものですね。

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