私の父は認知症です。認知症になって11年経ちました。母が父の介護をしています。父も母も80歳を越えています。老人が認知症の老人を介護する状況は、「認知症の老老介護」と言われます。平成19年から20年にかけて、我が家の「老老介護」の話を「けんこう家族」に書きました。あれから5年経ちました。今年は我が家の「老老介護」のその後の状況を4回にわたって御報告いたします。
5年前の記事を読んでいない方もおられると思いますので、まず、当時の状況を振り返ってみます。
11年前に始まった父の認知症の主な症状は物忘れでした。新しいことを覚えられず、今聞いたことをすぐに忘れ、同じことを何回も繰り返して聞くようになりました。はじめは、古いことは覚えていましたが、そのうち古いことも忘れるようになりました。ある日突然、父が母の顔をみて、「あなたは僕のおばあちゃんかい?」と言いました。これは母が一番ショックだったことに違いありません。母には多大なストレスがかかりました。
母がひとりで介護をしていては、母の身体が持ちません。母を助けるために、ひとり暮らしの叔母(母の2歳年下の妹)に頼み、時間のある時には両親の家に行ってもらうことにしました。私も休みの日には行くことにしました。私の姉夫婦も休みをみつけては両親の家に来てくれるようになりました。そして、父をまじえて、交代で麻雀を始めました。はじめた頃は、父はきちんとルールを覚えており、ひとりでできました。父の「ひとり勝ち」ということもありました。しかし、徐々にルールを忘れ、ひとりではできなくなってきました。最近では、私が父の後ろにつきっきりで、どの牌を捨てるか指示しなければやれなくなりました。認知症は、徐々に、しかし、確実に進行しています。
土日は我々が手伝いに行けますが、普段は母ひとりで父をみなければなりません。しかし、それは無理になってきました。そこで、介護保険を利用することにしました。
介護保険を申請すると、主治医の意見書、ケアマネージャーの調査と意見書をもとに、介護判定が行われ、介護保険で支給できる金額が決まります。利用者はその限度額内で介護保険を利用することができます。ヘルパーを入れる、デイサービスを利用するなど、いくつかのサービスがあります。我が家の場合は、母の意向で、ヘルパーを頼むことはありませんでしたが、デイサービスを利用させていただきました。
これから介護保険を利用しようと考えている方は、居住地の地域包括支援センターに相談することをお勧めします。とは言ってもなかなかわかりにくいと思われますので、当院におかかりの患者さまの場合には、当院の医療福祉相談室にご相談ください。医療福祉相談室では4人の相談員が親切ていねいに相談に乗っておりますので、お気軽に声をおかけください。