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  子宮がん
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子宮がん

1. 子宮がんとはなんですか。(子宮がんとは)

子宮がんは子宮に発生する悪性腫瘍ですが、それには2つの種類があります。子宮の入り口の部分、子宮頚部にできる子宮頚がんと、子宮の奥の部分である子宮体部にできる子宮体がんです。鶏の卵の大きさほどの子宮にできるこの2つのがんは、原因も性格も全く異なったものです。子宮は図1のように、膣の一番奥にその入り口(子宮口)があり、2-3cmの細長い部分(子宮頚部)と5-6cmの丸い部分(子宮体部)に分けられます。それはちょうど洋梨をさかさにしたような形をしています。そして前側には膀胱、後側には直腸が接しています。20年くらい前までは、子宮頚がんが圧倒的に多く、子宮がんの90%以上を占めていましたが、最近は子宮体がんが増えてきて、全体の30-40%になりました。


図1 子宮の位置

2. 子宮がんの種類はどんなものがあるのでしょうか。(子宮がんの種類)

子宮がんには、子宮の入り口の部分(子宮頚部)の粘膜にできる子宮頚がんと、子宮の奥の部分(子宮体部)の粘膜(子宮内膜)できる子宮体がんがあります。また子宮体部の筋肉の層や、結合組織から発生する子宮肉腫という悪性腫瘍もありますが、がんに比べると非常に少なく稀なものです。

3. 子宮がんの予防はあるのでしょうか。(子宮がんの予防)

子宮がん検診対象年齢の引き下げ

子宮がんは、集団検診や人間ドックなどによるスクリーニング検査を受けていただく方が増加したため、早期に発見されるケースが増え、子宮頚がんの75%、子宮体がんの90%がI, II期で発見され、死亡率が年々下がってきましたが、近年は横ばいでした。しかし現在は子宮頚がん検診の対象年齢がさらに引き下げられたことにより、死亡率のさらなる低下が期待されています。

子宮頚がんワクチン療法 … 子宮頚がんワクチンへ

わが国においても、平成21年10月に子宮頚がんのワクチンが、厚生労働省によって承認され一般に使用されるようになりました。現時点では健康保険や公費負担の対象にはなっておりませんが、ワクチン接種者が増加することによってさらなる予防効果、発症率、死亡率の低下が期待されます。東京逓信病院では、平成22年3月1日より皆さまに接種することが可能となっております。子宮頚がんワクチン療法に関しては、後ほど詳しく述べます。

4. 子宮がんはどのようにして発生するのでしょうか。(子宮がんの発生)

子宮頚がんの発生

子宮頚部の膣に面している部分は扁平上皮という重層の上皮に覆われていて15-20層にも細胞が重なっていて、表面にいくほど細胞は扁平になっています。これに対し少し子宮の中に入った頚管の部分は粘液を分泌する円柱上皮という一層の上皮に覆われています。この2つの上皮の境界部分ははっきりと確認することができ、扁平円柱上皮境界(squamo-Columner junction)と呼ばれています。この部分は外敵の標的となることが少なくなく、細菌、ウイルスなどによって炎症が引き起こされやすくなっています。そして円柱上皮が破壊されると、その修復過程で扁平上皮に似た化生細胞となります。この過程でなんらかの発がん因子が作用すると、図2のようにその細胞は異形成上皮と呼ばれる前がん状態を経て、子宮頚がんに進展していきます。そのため子宮頚がんの90%以上が扁平上皮がんであり、残りの10%は粘液を分泌する円柱上皮より発生する腺がんです。

発がん因子として注目されているものは、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルスです。このウイルスは人間にイボをつくるウイルス群ですが、現在100種類ほども発見されています。なかでも悪性型と呼ばれる16,18,31,33,51,52型のウイルスが、子宮頚がんの発生と深く関与しているといわれています。我が国の子宮頚ガンおいて検出されるウイルスの型は、16型、52型が多く18型は少ない傾向であります。欧米諸国においてはすでに、このウイルスに対してのワクチン療法が始まっておりますが、殆どが16,18型に対するものであり、今回わが国で販売承認が得られたものも16,18型に対するものです。 … 子宮頚がんワクチンへ

子宮頚部扁平上皮の組織模式図
図2 子宮頚部扁平上皮の組織模式図

子宮体がんの発生

子宮体部は、胎児を育てる場所であり、かたい筋肉の層によって形作られていますが、内面は子宮内膜という腺上皮と間質からなる粘膜で覆われています。この粘膜は、卵巣から分泌される女性ホルモン、すなわちエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)によって完全に調節され、女性の月経周期が作られています。月経の後、卵胞より分泌されるエストロゲンによって増殖して厚くなり、排卵を迎えた後は黄体(排卵後の卵胞)より分泌されるプロゲステロンによって増殖を停止し、分泌機能を発揮して、妊娠の準備を完成させて受精卵の到着を待ちます。妊娠が起こらなかった場合には、卵巣では黄体が消失するため、プロゲステロンの分泌が低下するために月経となり、完全に剥離、脱落してしまいます。このように、ホルモンによって制御されている場合には、子宮内膜はプロゲステロンによって増殖が抑えられ、定期的に廃棄されるため、子宮体がんは起こりにくいのです。しかし更年期が近づいてきたり、若くても卵巣の働きが悪く、月経がきちんと来ないという人では、排卵が周期的に起こっていないことが多く、そのためプロゲステロンが分泌されない時期が多くなります。そのため子宮内膜は、増殖をとめるブレーキのないまま、エストロゲンの影響で増殖し続ける結果となり、前がん状態である子宮内膜増殖症という病変が発生し、そこにさらに発がん因子が作用すると将来的に子宮体がんに進展するといわれています。

5. 子宮がんはどのような人に起こるのでしょうか。(子宮がんの疫学)

子宮がんは図3に示すように性交渉、妊娠・分娩に関連が深いといわれておりますが、子宮頚がんの原因と考えられているヒトパピローマウイルスは、30才未満の女性の15-20%程度に感染しているといわれ、50-80%の女性は生涯に一度は感染することがあるともいわれています。そのため子宮頚がんは、ごくありふれたウイルスが引き起こす、ごく稀な合併症ともいえると思います。

子宮体がんの原因は、卵巣ホルモンのバランスのくずれによって引き起こされるといわれています。日本人女性の平均閉経年齢は49.9歳ですが、この更年期とも呼ばれる時期には、卵巣の機能が低下し、周期的な排卵が起こらなくなるために、体がんのできる子宮内膜を増殖させるエストロゲンというホルモンが、増殖を抑える働きのあるプロゲステロンというホルモンに比べ非常に高くなります。この相対的なエストロゲン過剰状態を経過することが、従来から子宮体がん発生の原因といわれてきました。すなわち子宮体がんは閉経後に発生するがんといわれていました。しかし日本人全体の生活様式が欧米化してきた現在では、女性の社会的地位が向上したために精神的、肉体的ストレスが増加し、結果として卵巣機能が抑えられる状況が多くなることに加え、食生活においても動物性脂肪の摂取が増加することで、体内の脂肪組織に蓄積されたり、合成されるエストロゲン量が相対的に増えることによって子宮体がんの発生要因が著しく増加してきています。そのために近年日本において子宮体がんが増加、特に若年者の子宮体がんが増加したといっても過言ではないでしょう。


図3

6. 子宮がんはどのようにして発見されるのでしょうか。(子宮がんの診断)

子宮頚がん

スクリーニングのような大きな集団から要精密検査者を見つけ出す場合には、子宮頚部より直接細胞を採取する細胞診断が行われます。この診断業務には日本臨床細胞学会によって認定された細胞検査士、細胞診指導医が主に従事しております。この検査で陽性、疑陽性とされたときには、婦人科を受診のうえ、膣拡大鏡診(コルポスコピー)により子宮頚部を直接観察し、病変部を直視下で組織を採取する狙い組織診が行われ、病理診断により診断が決定されます。

子宮体がん

体がんのスクリーニングは、老人保健法という法律により施行されており、50歳以上で、不正出血を有する人が対象となっています。その検査法は、子宮体部の粘膜すなわち子宮内膜の一部を採取するものですが、検診では細いチューブ状の器具を、子宮内に挿入し細胞を採取する子宮内膜細胞診が行われます。陽性、疑陽性の場合には、子宮内膜掻爬組織診が施行されます。これら検査方法は直視下には行えないために、診断精度が悪くなることがあります。そのため閉経後や未婚、未産等の理由で子宮内に器具が挿入できない場合や、十分な組織診ができない場合には、入院していただき麻酔下で子宮鏡という内視鏡検査をしつつ、直視下の組織診を行います。

7. 子宮がんの症状はどんなものでしょうか。(子宮がんの症状)

現在のように、集団検診や人間ドックが普及し、スクリーニング検査を受けていただける人が多くなっていますと、子宮がんは殆どの場合全く無症状のうちに発見されます。すなわち前がん病変や初期のがんにおいては症状を現さないのが特徴です。何らかの症状を訴えられて病院を受診される方の場合、その多くは不正性器出血が占めます。子宮頚がんでは接触出血(性交渉後の出血)、子宮体がんでは閉経後出血が特徴的です。がんが進行することによって、おりものが増える、水様性、粘液性、血性(褐色)の帯下があるといった訴えや、悪臭を放つなどの症状が現れます。

8. 子宮がんはどのように治すのでしょうか。(子宮がんの治療)

子宮がんの治療の概要

子宮がんの治療は、そのがんの性格(病理組織診断)とその進行度(臨床進行期:図4)によって決定されます。I,II期のがんに対しては原則として手術療法が行われ、高い治療成績を得ています。しかし、がんが進行しIII,IV期になりますと手術によって摘出することができなくなります。その場合には、扁平上皮がんの多い子宮頚がんでは放射線の単独療法、ならびに放射線療法と化学療法(抗がん治療)の併用療法が行われます。腺がんが殆どを占める子宮体がんでは化学療法が主体となります。これらは現在、日本婦人科腫瘍学会が編集、発行している子宮体がん治療ガイドラインで詳しく解説され、遵守、実行されております。

子宮がんの進行分類子宮がんの進行分類
図4 子宮がんの進行分類

初期子宮がんの治療

最近では若い人にも子宮がんが発見されることが増えてきていますが、手術によって子宮を摘出してしまうともちろん妊娠、出産ができなくなってしまいます。子宮がんは長い間子宮を切除し、リンパ腺を摘出する手術を行ってきましたが、その結果、子宮頚がんではIa1期、子宮体がんではIa期までは転移が起こらないことがわかりました。そこで現在は初期の子宮がんは、子宮を摘出することなく、子宮頚がんでは、その病変の部位のみを切除する治療法や、子宮体がんでは、ホルモン剤によって病変を治してしまう治療法が選択されるようになってきています。近年開発されてきた治療法については別章で説明いたします。(ここをクリック:初期子宮頚がんの治療

進行した子宮がんの治療

子宮頚がんのIa2期からII期、子宮体がんのIb期からIII期の一部までは、子宮を摘出し、骨盤内の所属リンパ節を郭清する根治手術が行われます。手術の後には、摘出した臓器の詳しい顕微鏡検査を行い、必要によっては再発を抑える目的の治療、放射線もしくは化学療法を追加します。III期以上の進行がんでは直ちに手術することが不可能なため、放射線治療、化学療法が選択されます。効果が良く病変が縮小した場合には、その後に根治手術を施行することになります。子宮頚がんでは扁平上皮がんが多いため、放射線に対する感受性が良好な場合には、放射線治療のみで完治することもあります。しかしながら根治手術、放射線治療、化学療法のいずれにしても、体に及ぼす影響はかなり大きく、健康被害をかなり伴うものであります。がんは克服したものの、終生その副障害に苦しんでしまうといったケースもあります。そのため現在は様々な副作用対策が思考され、実践されています。

9. 子宮がんはどの程度治せるのか。(子宮がんの予後)

前述のように、子宮がんは検診の普及により子宮頚がんの75%、子宮体がんの90%が手術治療の可能なI,II期で発見されます。そのためI期では80%、II期では65%の方が治癒されています。もちろん子宮頚がんの0期、Ia1期、子宮体がんのIa期は100%の治癒が期待されますが、子宮頚がんIII期では40%、IV期では15%の治癒率であります。放射線療法、化学療法が進歩している現在においても、進行がんの治癒率はなかなか改善されないのが現状です。また最近欧米諸国では、その両者の併用療法がより有効であるとの報告があり、全国の多くの施設で、体型の小さい日本人でも安全に遂行できるか、検証中でありますがその副障害により、有効な治療が遂行できない場合も少なくないようです。

10. 子宮頚がんワクチンとはどのようなものでしょうか(ワクチンの働き)

子宮頚がんの発症

子宮頚がんの発症には、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)のうち発ガン性の高いハイリスクHPVの感染が不可欠といわれています。すなわち悪性型と呼ばれる16,18,31,33,51,52型のウイルスであります。このウイルスが子宮の入り口の部分の粘膜の細胞に感染すると、細胞の中にウイルスが存在する状態が発生します。人間の体には外敵に対して身を守る免疫力(白血球や抗体)がありますので、ウイルスは自然に排除されてしまいます。インフルエンザウイルスによって引き起こされた風邪症状が、いずれは治癒していく場合と同じです。しかしこのウイルスが細胞のなかにとどまっている状態が持続すると、ウイルスの持っている遺伝情報(遺伝子)が、ヒトの細胞の遺伝子のなかに組み込まれるという現象が起こり、その細胞がウイルスの遺伝子の持つ命令によって行動するようになってしまします。すなわち無限に細胞分裂を繰り返すようになり、免疫力に打ち勝って腫瘍を作っていくようになります。このようにして子宮頚がんは発症すると考えられています。

HPV感染の頻度

今回わが国で承認されたワクチンはHPVの16,18型に対するものですが、日本人のこのウイルスにどれくらい感染しているかというと、子宮頚がん検診受診者でみると、20歳代では90%、30歳代では75%、40,50歳代では65%が感染を起こしています。わが国の子宮頚がんの患者数から考えますと、HPV感染者の千人に1人が前がん病変を、1万人に1人が頚がんを発症する計算となります。言い換えますと、このウイルスは非常に多くのヒトに蔓延していて、非常に僅かなヒトに子宮頚がんを起こしているといえます。しかしながら、このウイルス感染は、自然にウイルスが排除された場合も含めて、ヒトに抗体を作ることは殆どないといわれています、そのため再感染を繰り返すことが多く発ガンの危険は持続すると考えられています。

HPVワクチン

今回わが国で承認されたHPVワクチン「サーバリックス」は、16,18型HPVから、ヒトの細胞を癌化に導くウイルスの遺伝子の部分を除去した弱毒化ワクチンであります。しかし前述のように、このウイルスには抗体ができにくいため、終生免疫を獲得するためには、接種後1ヶ月と半年後の計3回の接種が必要とされています。さらにワクチン接種によって作られた抗体は、ウイルスそのものに作用するため、ウイルスに感染したヒトの細胞や、がん細胞に対しては全く効力を発揮しません。あくまでもウイルスが、人体に進入した際に効力を発揮し、ヒトの細胞への感染を予防するものであります。そのため接種の対象年齢も、HPVに暴露する前の年齢、すなわち10-14歳の女子となっております。(10歳未満は安全性の面から除外されております)しかしながら、HPV16,18型は、自然感染、排除されても抗体ができにくいことにより再感染を繰り返すリスクも低くありません。そのため10歳代後半以降の方も、再感染予防の目的でワクチン接種することは無駄ではありません。さらにこのワクチンは16,18型以外のハイリスクHPVに対しても70%程度の交差効果があるといわれております。

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