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けんこう家族 第149号【2】

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精神科 主任医長就任のご挨拶

成田 耕介

精神科 主任医長
成田 耕介


職場復帰を目指す方へ~東京逓信病院の職場復帰支援~

健康増進法が制定されて数年が経ち、定期的に職場でメンタルチェックのシートを提出する風景も、違和感がなくなったように思います。職員の心身の健康を守ることが企業の義務であるという認識が、徐々にではありますが、それぞれの現場に浸透してきたのかもしれません。千代田区は昼間人口が夜間人口の10倍以上になることが示す通り、働くひとたちの街であり、今後もメンタルヘルスの重要性は増してゆくものと思います。

職場のメンタルヘルスに関連した疾病はさまざまありますが、認知度の高いのは『うつ』と呼ばれる気分障害圏の不調でしょう。気分障害は、1割程度の方が生涯に1度は経験すると推計されており、糖尿病や高血圧と同様にcommon disease(ありふれた病気)にカテゴライズされています。ありふれた病気なのですが、しかし経験した個人にとっての苦痛度は非常に高く、家族や職場に与える影響も大きいです。

気分障害は、回復が期待できる病気です。薬物治療や心理療法も広く行われていますが、いったん休職して、落ち着いた環境での療養をお勧めすることも多いです。職場環境から離れて、自分の心身の健康を尊重した生活を営むことで、回復が期待できるからです。緊急避難のようなものでしょうか。抗うつ薬や睡眠薬などを使用しなくても、休養するだけで回復する方も多いのです。

療養を経て、心身の安定を取り戻したあと、問題になるのが、どのように職場に戻るか=職場復帰(復職)です。休職する直前まで、非常に辛い記憶を職場に残している方々も多くいらっしゃるので、自宅で療養しているぶんには快適に過ごすことが出来きていたのに、職場から一本電話やメールをもらっただけで、たちまち動悸がして、まったく眠れなくなってしまった、という話をお聞きすることも、まれではありません。加えて深刻なのが、気分障害で休職に至った方々の約半数が、復職後も、病前に比べて仕事能力の低下がみられるとする報告です。これは、気分障害の回復過程が非常に緩徐であることが深く関連していると思われます。

当院では、職場復帰支援の一環として、リワークを併設しています。朝9時半から午後3時半まで週5日のスケジュールで、自己学習や心理教育、集団作業を行います。心理教育では、ストレスへの対処法や過去の記憶との付き合い方などをスタッフと相談しながら学習してゆきます。3か月のプログラムは前半と後半に分けており、後半はより具体的な職場復帰をイメージしたものになっています。後半の時期には、職場に対して、復職当初しばらく時短勤務やテレワークでの勤務を依頼するなど、復職にあたって必要な配慮などを具体的に働きかけてゆく場合もあります。リワークプログラムと周辺支援を通して、職場復帰を目指す方々の助けになることを目指しています。

最後に、場末の精神科医療従事者であるわたくしから、はなはだ立場をわきまえない一方的な呼びかけにはなってしまいますが、管理者や雇用側の立場におられる方々へ、ひとつお願いがあります。精神科で復職の支援をしていると、患者さんが勤務されている企業の上司や人事部の方から「ぜひ完全に良くなって、元のように仕事が出来るようになってから復職してください」という趣旨の回答をいただき、少し失望することがあります。もちろん、患者さんを思っておっしゃっているのですが、結果として、職場には回復プロセスの具体的な支援は特にないです、という意思表明になってしまうからです。逆に「復職にあたって、業務内容や勤務時間、部署など配慮すべき点を教えてほしい」と非常に心強いお言葉をいただくこともあります。気分障害の経験から自宅療養での安定、リワークプログラムに参加してのリハビリテーション、業務量や就労時間などに制限を設けたかたちでの職場復帰、疲労や緊張感への慣れを経ての通常勤務への移行、という一連のプロセスは、復帰する職場のご協力をいただいて初めて成立します。職場復帰はひとつの目標ではありますが、ゴールではないからです。ゴールは、患者さんがより自然体で仕事をし、家庭生活を営むようになり、かつて『うつ』を経験したことなどすっかり忘れて日常を過ごすことができる日々を取り戻すことです。管理者や雇用側の立場におられる方々にも、ぜひご理解とご協力をお願い申し上げます。

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