前立腺がんは高齢男性に多く、罹患数、死亡者数が急速に増加しており、今後も高齢化社会の進行に伴いさらに増加することが予測されています。
前立腺がんは、前立腺特異抗原(PSA)検査によって非常に早期の前立腺がんまで検出が可能になりましたが、前立腺肥大症や前立腺炎のような、がんではない方も多く陽性になってしまいます。
PSA検査が4~10ng/mlは「グレーゾーン」と言われており、70%程度が実際はがんでなかったという疫学的データも報告されています。その結果、入院を必要とする前立腺針生検といった肉体的、精神的に苦痛を伴う検査を受診することになり、がんが見つからなかった場合は患者さんに不要な負担ががかることが問題となっています。
S2,3PSA%検査は、このような背景から治療が必要な前立腺がん患者さんをより正確に診断できる簡便な検査方法として開発されました。
PSAは、正常組織由来のものと癌由来のものでは、その糖鎖構造が異なります。前立腺肥大などの良性疾患や健常者は、S2,6PSAの割合が多く、前立腺癌の患者さんでは、糖鎖構造が変異することでS2,3PSAの割合が多くなります。このS2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合(S2,3PSA%)が前立腺がんであると高くなります。そのためS2,3PSA%を調べることは、前立腺がんと前立腺肥大症などとの識別に有用とされ、針生検の必要性の低減が期待されます。