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ホーム  診療科のご案内  整形外科  膝前十字靭帯(ACL)の損傷と治療
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膝前十字靭帯(ACL:Anterior Cruciate Ligament)の
損傷と治療
~東京逓信病院 整形外科 関節鏡・スポーツセンターの考え~

1.前十字靭帯(ACL:Anterior Cruciate Ligament)

 膝関節には4本の靭帯がありますが、その中で最も機能的に重要なACLは膝関節の中央に位置し、脛骨(すねの骨)の前方と大腿骨(太ももの骨)の後方の間を走行する靭帯です(図1)。大腿骨に対して脛骨が前外方にずれる (専門的には“亜脱臼する”といいます)のを防ぐ、とても重要な役割を担っています。

図1.正常ACLの関節鏡視像
図1.正常ACLの関節鏡視像

2.ACL損傷

 ACLはスポーツ選手が損傷することが多く、その中でも頻度が高く、また有名選手が損傷したことが新聞に出ることもよくありますから、スポーツ外傷としてはみなさんに最もなじみの深いもののひとつだと思います。  
 ACL損傷はスポーツ活動中におこることがほとんどです。ジャンプしようとして踏み込んだ時や着地のとき、カッティングをきろうとした時、ひねり動作をしようとした時など、相手プレーヤーとの接触なく損傷する場合が多くみられます。ラグビー、アメリカンフットボールなど接触の多い競技では外側から膝にのしかかられて損傷することもあります。また、ウインタースポーツではスキーで板を強く踏み込んだ時や板に振り回され膝が内側に折れて受傷することもたびたびあります。その瞬間にはバキッという音がして、『やってしまった・・・』 という感覚があることも多いようです。直後から体重がかけられないくらいの痛みがあり、その後徐々に膝関節内に血液がたまり、左右比べるとすぐにわかるほどに腫れあがります。
 このような出来事があったら、必ず整形外科を受診して正しい診断を受け、治療について説明を聞きましょう。必要であれば、膝を専門とするスポーツ整形外科の専門医師を紹介してもらってください。
 東京逓信病院整形外科では月曜から金曜まで一般外来または関節鏡スポーツセンター外来において予約制(Tel 03-5214 -7381)で診療を行っています。また、紹介状をお持ちの場合や膝のケガをして緊急の場合には、診療時間内(朝9時〜夕方5時)に上記番号に電話連絡いただければ可能な限り診察、診断いたします。

図2.ラグビーで受傷し完全に断裂したACL(受傷後1週の関節鏡所見)
図2.ラグビーで受傷し完全に
断裂したACL(受傷後1週の関節鏡所見)

3.ACL損傷の診断

 ACL損傷の診断・治療になれているスポーツ専門医ならば、患者さんから受傷の状況やその後の様子を聞くだけでACL損傷と予想がつきます。さらに診察でACL損傷に特徴的な所見があればそれと確信され、MRIを撮影することで最終的に確認します。MRIではACL損傷にたびたび合併する半月板損傷や関節軟骨損傷の診断もでき、その後の治療方針を決める上で必須の画像検査です。

4.ACL損傷の治療法の選択

 ACL損傷後、時間経過とともに膝の腫れや痛みはおさまり、膝がよく動くようになるとスポーツを再開する場合も見受けられますが、不安を感じるために思いきりのスポーツ動作はできなくなっています。さらに、無理をしてスポーツを続けると膝崩れ(ガクッと膝が抜ける、亜脱臼)がおこり、半月損傷や関節軟骨損傷などの合併損傷がおこる可能性があります。これを放ったままさらにスポーツを続けると、外傷後変形性膝関節症へ進行することになり、日常生活でも膝に痛みを抱えることにもなりかねません。以上のような理由から、スポーツ活動の継続を希望されるならば、プロからレクリエーショナルレベルまで、そのレベルにかかわらずACLの機能を回復させることが必要であり、ACL再建手術は必須です。  
 また、特別なスポーツ活動をしていない方でも中学・高校体育の授業活動などで図らずもACL損傷を受けてしまった場合、将来のスポーツ活動の困難や日常生活での不安などの可能性を考えれば、再建術をためらう必要はないと私たちは考えています。  
 一方、保存的治療(手術を受けない治療法)は現在まできっちりとしたプログラムがなく、成功を収めている例はほとんどありません。ACL再建手術を希望されない場合には膝周囲の筋力訓練を励行し、スポーツ活動は膝に負担がかからない運動、例えばジョギングやクロールなどの水泳程度に抑えておくのがよいでしょう。  
 ACL損傷後にいろいろな理由から手術療法を選択せず、スポーツ活動をやめた患者さんでも、階段や段差を降りる時などに膝崩れをおこす方が時にいらっしゃいます。そのような患者さんでは、そのまま放置しておくと将来、外傷後変形性膝関節症に進行することが予想されます。日常生活で膝崩れがおこる場合には、スポーツを行わない方であっても、ACL再建術を受けることを強くお勧めします。

5.ACL再建術

手術操作は関節鏡を用いて行います(図3)。そのため手術侵襲は小さく、関節軟骨などの関節内組織に“優しい”手術です。 

図3.関節鏡視下手術の様子
図3.当院での関節鏡視下手術の様子。
モニターに膝関節内が映し出されている。
 


 ACL再建術では、従来1本の太い靭帯として再建してきました。しかし、正常なACLはねじれのある形状をしています。すなわちACLはAM束(antero-medial bundle、前内側束)とPL束(postero-lateral bundle、後外側束)の二つの線維束からなり、それぞれが機能分担していることが解剖学的研究、バイオメカニクス研究により明らかになっています。ですから、従来から行われてきたように1本の太い靭帯を作る(single bundle再建、一束再建)だけでは不十分で、二本の靭帯で再建靭帯を作る (anatomical double bundle再建、解剖学的二束再建術)ことによって、本来のACLに近い機能を回復させることが必要です。東京逓信病院整形外科関節鏡センターでもanatomical double bundle再建術を行っています。具体的には、再建靭帯の素材として手術同側の膝屈筋腱(半腱様筋腱、必要があれば薄筋腱も)を採取し、大腿骨と脛骨のACL付着部内の正確な位置にAM束とPL束の骨トンネルをそれぞれ作成し、二本の再建線維束がねじれの位置になるように(図4)腱を移植してチタン製の固定具で固定します。

図4.再建靭帯移植後の関節鏡視像
図4.再建靭帯移植後の関節鏡視像。
二本の再建靭帯がねじれの位置にある。


手術後1年の関節鏡視像を図5に示します。再建靱帯は周囲をきれいな膜(滑膜と言います)に覆われ、血流、volume、走行全てにおいて良好です。もちろん、スポーツ復帰も良好です。

図5.術後1年における再建靭帯の関節鏡視像
図5.術後1年における再建靭帯の関節鏡視像


さらに、ここ数年の流れとして、切れてしまった靱帯断端(レムナントと言います)をどのように扱うか、学会で盛んに議論されています。受傷後数年経過すると断端は徐々に吸収されて無くなってしまいます。また、すぐに手術をして断端が残っている場合でも、これまでは手術の正確性を期して断端を切除していました。しかし、受傷後早期であれば残存する断端には豊富な血流とともに関節位置覚を察知する神経終末も残っていることが明らかになっています。ACL再建術では血流と神経が途絶えた状態で腱を移植しますから、血管が早期に進入しやすいように、また、残っている神経終末をそのまま生かせるように、断端の中に靱帯を通すように再建すれば(図6)成績がさらに改善し、スポーツ復帰も早期化できる可能性があります。手術手技的には煩雑で難しくなりますが、東京逓信病院整形外科関節鏡センターではACLの断端を残し、その中を通して二重束再建を行う術式をおこなっています。レムナント温存解剖学的二重束再建術術後1年で撮像したMRI像(図7)をみると、2本の移植腱が断裂端とともにみごとに生着しているのがわかります。

図6.レムナント温存解剖学的二重束再建術後鏡視像
図6.レムナント温存解剖学的二重束再建術後鏡視像


図7.レムナント温存解剖学的二重束再建術1年後のMRI像
図7.レムナント温存解剖学的二重束再建術1年後のMRI像


 手術でできる傷は脛骨前面の内側に3㎝程度のものが1つと、膝関節周囲に1㎝以下の傷が数個で、とても小さな傷で手術可能です。入院期間は術後約2週間です。
 その他にも、骨付き膝蓋腱(膝前方正面の腱)や屈筋腱を使った一束再建術をスポーツ種目や二度目の手術の場合など、それぞれの状況にあわせて臨機応変におこなっています。詳細は担当医にお尋ね下さい。

6.ACL損傷に合併する半月板損傷

 ACL損傷の合併損傷として、半月損傷がときにみられます。その場合には、ACL再建術と併せて半月縫合術を施行します。半月板も関節軟骨を守り、膝の安定性にも寄与する重要組織ですから、なるべく縫合術をおこない温存するように努めています。

図8.内側半月縫合術術後の鏡視像
図8.内側半月縫合術術後の鏡視像


 また、治癒困難が予想される症例に対しては、患者さん自身の血液から作ったfibrin clotをもちいた半月縫合術を行っています。

図9.Fibrin clotを用いた半月縫合後の鏡視像
図9.Fibrin clotを用いた半月縫合後の鏡視像


7.ACL再建術術後のリハビリ

 ACL 再建術後のリハビリは非常に重要なものです。これをおろそかにするとせっかく良い手術を受けてもスポーツに復帰できなかった、ということにもなりかねません。東京逓信病院では元のレベル以上のスポーツ完全復帰をゴールと考え、そこに至るためにいつ、どのようなリハビリテーションが必要なのかを患者さんごとに考えながら術後のリハビリを進めています。リハビリテーションにも理論があり、ACL術後のリハビリテーションとして安全な動作と危険な動作がバイオメカニクス研究から明らかにされています。また、再建靱帯が生物学的に成熟し、骨トンネル内で強固に固着するためには一定の時間が必要なことが動物実験から明らかにされています。いたずらに速いだけのリハビリテーションやスポーツ復帰がよいわけではありません。我々は術後の経過期間を考えながら安全にリハビリテーションを行えるよう、その時期に応じたリハビリ種目の指導をしています。具体的には、各個人がもともと持つ筋力や術後の筋力回復、膝関節可動域回復の具合により異なりますが、大雑把にはジョギング開始が 2~3 か月後、ジャンプ、ダッシュ、サイドステップなどの負担の大きな動きが 4~5 か月後、対人接触のない種目練習が 5~6 か月後、スポーツへの完全復帰は 6~8 か月を目安にしています。東京逓信病院のリハビリテーション科は長年の経験から、術直後からスポーツ復帰まで確実なリハビリを遂行でき、自信を持っておすすめできる施設です。

8.最後に

 以上のように、近年の ACL 再建手術の進歩とリハビリテーションの研究、臨床経験の蓄積により、ACL 再建術はとても良好な成績が得られるようになりました。関節鏡視下ACL 再建術とその直後から行なう理論に基づいたリハビリテーションは、治療者である私たちの側からも自信をもってお勧めできる治療法です。 東京逓信病院においても、プロ、日本のトップレベル、大学体育会、中学・高校の部活動選手、レクリエーショナルプレーヤーなどのすべてのレベルの方に満足のいく結果を出すことができているものと自負しています。  
 ACL を損傷された場合には、お気軽に当院整形外科・関節鏡センター外来医師に御相談ください。

(文責:整形外科 関節鏡・スポーツセンター 平岡久忠)

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