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ホーム  病院のトピックス  当院職員の院外での活躍  国際医療ボランティアへの参加
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国際医療ボランティアへの参加

当院外科の村田祐二郎主任医長が、国際医療ボランティアNGO(ジャパンハート)に参加し、ラオスで巡回診療や手術を行った際のレポートです。

医療を受けられない人々に、いかに継続的に医療を届けるか。~ラオスの医療現場にて~

プロジェクトへの参加

停電の中での手術
停電の中の手術

 2016年3月26日~30日の5日間、ジャパンハート(国際医療ボランティアNGO)のラオスにおける巡回診療及び手術ミッションに参加した。昨年のカンボジアに続き、2回目の参加であった。首都のヴィエンチャンの外れにあるPakNgum郡病院の手術室や病室を借りて行われた。ラオスで3年にわたり、活動の責任者として働くジャパンハートの日本人看護師を始めとするアドバンスドナース4人と短期医療ボランティアとして日本から参加した医師2人(外科医の私と、小児科医)と助産師1名と現地のレジデント医師や看護師総勢14人のチームでのプロジェクトであった。例のごとく、初対面のメンバーで、出会ったその日からの活動である。26日は120名ほどの患者の無料診療を行った。病院は、評判を聞きつけて集まった患者とその家族でごった返していた。27日は、手術を控えた患者の術前診察を行い、28~30日の3日間で20件の手術を行った。

ジャパンハート代表・吉岡医師との手術
ジャパンハート代表・
吉岡医師との手術

 ジャパンハートの代表の吉岡医師も29日より加わり、巨大な甲状腺腫瘍、巨大な後頚部脂肪腫、巨大な成人鼠径ヘルニア、小児鼠径ヘルニアや尿道下裂などの手術をこなした。その間、隣接する産科病棟では、分娩が始まったものの難産で、協力を要請された。その日は、現地の産科医師や助産師はおらず、今回たまたま参加していた助産師と小児科医がサポートして胎児仮死を免れた。

 ラオスのプロジェクトの特徴は、現地医師の育成に主眼が置かれており、手術経験の少ないラオス人若手医師を相手にしての手術であった。ただ少し驚きがあった。これまでの経験では、このような活動に参加してくる現地の医師の多くは、実直な姿勢が窺えたが、今回の活動に参加した現地の若手医師は、明るく素直ではあるものの、片手にスマホを持って、動画を見ながら手術室に入るというスタイルで、これは日本より先を行っているなという印象であった(笑)。

ラオスの現状

巨大な後頸部脂肪腫の患者
巨大な後頚部脂肪腫の患者

 最近、ラオスではSNSを使った患者さんの紹介が大々的に行われるという。テレビ局が主な発信元で、ラオス中に情報を発信し、寄付が募られる。その経緯で、我々が活動する病院に26歳の脊髄損傷の患者さんが、寄付された高価な車椅子とテレビ局の取材とともに搬送されてきた。しかし胸から下が麻痺して寝たきりのうえ、行き届かないケアのため、全身が褥瘡(床ずれ)で覆われていた。当然、贈られた車椅子に座ることはできなかった。この患者にとって必要なのは、きめ細かな処置や、リハビリ、心のケア、家族の支援を粘り強く続けることであったが、我々短期ボランティアが関われるのは、極わずかな時間だけであった。長期ボランティアメンバーに託して帰国の途についた。

国境を越えて

病棟の廊下を歩く猫
病棟の廊下を歩く猫

 帰国後、撮りためた褥瘡の写真を当院の皮膚・排泄ケア認定看護師の秡川さんに見せ、相談したところ、次から次に適切なケアの方法を提示してくれた。現地スタッフにそれを伝えるとともに、秡川さんに現地のスタッフと直接やりとりしてもらうこととした。現地スタッフからは、日に日に改善していく褥瘡の状態や、患者に蘇ってくる笑顔の写真がメールで続々と送られ、一人の患者のために、国境を越えて、顔もお互いに知らない医療者同士が、プロフェッショナルな仕事で繋がっていく過程を目の当たりにした。これこそ成熟したボランティアの姿だと感じた。現在もそのやりとりは続いている。
 急速に広がるネット社会は、医療が受けられない貧しい患者たちに光が当たるようにし、人々の注目を集め、支援の輪を広げるという効果をもたらした。一方で、社会、医療基盤が整っていなければ、うわべだけの同情や話題作りに利用された患者は、人々の関心が薄れると、再び放置されるという現実がここに凝縮されていた。

ラオスの今後

 2015年に一つの経済共同体となったASEANでは、医師免許も共通化することが検討されている。すると人口が少なく経済基盤の脆弱なラオスでは、優秀な医師が海外に流出し、さらに医療格差が広がることが懸念される。新興国の医療基盤の成熟を待っている時間はない。今この時間も、適切な診療により救われる命がある。ますます医療ボランティアの役割が必要とされる。

おわりに

「医療の届かないところに医療を届ける。」一つの理念のもとに、少しでも多くの人が、繰り返し関わっていくことで、継続した実効性のある成果につながっていくと思われる。医療技術とともにラオスに伝えなくてはならないもの、それは日本のこころ(ジャパンハート)である。

ミッションに参加した仲間たち
ミッションに参加した仲間たち

4回目のカンボジアでのレポートはこちら
「けんこう家族133号 医療を通じて得られるもの~カンボジアでの医療活動の中で~」

特定非営利活動法人 ジャパンハート Japan Heart ウェブサイト別ウィンドウで表示します。

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