人口は既に減少傾向の本邦は超高齢化社会を迎えていますが、80歳以上で10%以上もの方が発症している心不全は未だ増加傾向です。心不全はイメージ(全体像)が掴みにくい疾患群ですが、2017年10月31日に日本循環器学会と日本心不全学会が合同で一般向けに分かりやすい心不全の定義を発表しました。
「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と簡易かつ予後不良な疾患であることを伝えています。予後不良である一因として、重篤な症状を呈してから初めて診断に至ることが多い「診断の遅れ」があります。予後不良といわれている心不全ですが、早期に診断し適切な治療を行えば、症状や長期予後の改善が期待できます。
心不全の原因となる心疾患や併存疾患、心不全増悪因子等を含めた全体像を下記に示しますので参考にしてください。
図1 心不全の全体像
図2 うっ血性心不全(非代償期)の胸部レントゲン
肺にうっ血を認める
診断の手がかりとなる心不全の症状ですが、非常に多彩です。以下に症状の一部を列挙します。
病態 | 症状 |
---|---|
1.左心不全:左心室が血液を十分に送れず肺に水が溜まる。 | 息切れ、呼吸苦、動悸、夜間の咳嗽、寝ている間に苦しくて目が覚める、睡眠障害、横になっているより座った方が楽 など |
2.右心不全:右心室が血液を十分に肺に送れず、身体の静脈に血液が溜まる。 | 足の浮腫、食欲不振、急激な体重増加、腹部膨満、便秘症、心窩部・右季肋部痛など |
3.低心拍出量症候群:左心室が血液を全身に十分送れず、全身の各臓器で酸素不足が生じる。 | 倦怠感、脱力感、冷感、尿量低下、血圧低下、身の置き所がない、意識障害、記銘力低下など |
3つの病態に分けられた上記症状の一部は正常な高齢者にも認める症状です。高齢者において、その症状が加齢によるものか心不全による症状なのかを判断することはしばしば困難であり、「診断の遅れ」を招きます。前述したように心不全は高齢者に多く合併するため、この問題は重要です。
日常生活の改善、食事療法、運動療法、薬物療法、在宅酸素療法、外科的治療などを個々の病態と重症度に応じて組み合わせて選択します。心不全を増悪させる併存疾患(慢性閉塞性肺疾患・睡眠時無呼吸症候群・慢性腎臓病・貧血症・悪性疾患・脳血管疾患など)に対しても他の診療科と連携を取りながら適切な治療を行います。
総合病院であり、心不全の有無を診断するだけではなく、症状の原因を広く精査していくことが可能です。
外来予約センター (03-5214-7381)にお電話いただき、「心不全専門外来の診察の予約を取りたい」とお伝えください。
現在の外来診療日は以下のとおりです。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
午前 | 東谷 迪昭 | 東谷 迪昭 | |||
午後 |
☆心不全患者さんの中には緊急で対応すべき状態があります。夜間に息苦しくて目が覚める、横になると苦しい、数日間で症状が悪化している、急激に体重が増加しているなどです。その際には、外来がない曜日や午後に関しても東谷あるいは他の循環器医師の外来で可能な限り対応しますので、気軽にご連絡ください。