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ホーム  診療科のご案内  神経内科  視神経脊髄炎
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視神経脊髄炎

視神経脊髄炎の概要

 視神経脊髄炎は、自己の抗体が視神経(眼から入った視覚情報を脳に伝達する神経)や大脳、脊髄を障害し、視覚異常や手足の筋力低下、体のしびれや感覚鈍麻が生じる疾患です。本来、「抗体」はウイルスや細菌などの体内に侵入した外敵を攻撃するために人間の免疫反応の結果生じるものです。抗体が自身の体の一部を誤って攻撃し、炎症を起こす疾患を自己免疫性疾患と言い、視神経脊髄炎はその一つです。
 初発時にはなるべく早期の治療が必要です。また、時間を空けて再発することがあるため継続的な治療が必要となります。
 視神経脊髄炎の患者さんは、抗アクアポリン4(AQP4)抗体という神経細胞を攻撃する特殊な抗体を持っていることが多く、症状の原因となっています。自己免疫性疾患である多発性硬化症(MS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と似ていますが、症状の出現の仕方や抗アクアポリン4抗体を持っているという特徴などから区別されます。視神経の炎症と脊髄の炎症を特徴とする疾患ですが、視神経炎のみの方もしくは脊髄炎のみの方も本疾患と同様の病態と言えます。
 視神経脊髄炎の患者さんで、どのように最初に抗アクアポリン4抗体が生じるかについて知られておらず、解明されていない点も多くあります。しかし、本疾患の一部の患者さんは抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク(MOG)抗体という別の自己抗体を持っていることが近年新たに知られるなど、研究が進んでいる疾患でもあります。

視神経脊髄炎の疫学

視神経脊髄炎の患者さんは日本で4,000人強と言われており、女性が男性の約10倍と多いです。発症年齢は30~40歳代が多いですが、比較的高齢での発症も知られています。疾患の発症には遺伝的な要素も環境的な要素も関連していると考えられており、どのような人に多く発症するのか知られていません。

視神経脊髄炎の症状

視神経炎もしくは脊髄炎、大脳の病変を反映した以下のような症状が出現します。

視神経炎

 視力低下、視野障害(視野の一部が欠ける)、霧視(目のかすみ)、眼や眼の奥の痛みなどがあります。

脊髄炎

 脊髄には運動神経、感覚神経、自律神経が走行しており、これらの障害が起きます。運動障害では四肢の筋力低下、特に手足が固く突っ張るような感覚が生じることがあります。感覚障害は様々で、触覚温痛覚の鈍麻(痛みや触られている感覚、温度に対する感覚の鈍麻)、しびれなどがあります。自律神経障害では便秘、頻尿などの排便、排尿障害、発汗障害がみられます。

大脳病変

 脊髄炎と同様に運動や感覚の症状がみられます。進行すると認知機能の低下などみられることがあります。


その他、嘔吐や吃逆(しゃっくり)といった症状も生じることがあります。

視神経脊髄炎の経過

 上記のような症状が数日から数週間かけて比較的急性に出現します。治療により症状の改善が期待されますが、一部は残存する可能性があります。そのため、初発時は早期発見と治療開始が重要です。治療を終えて病態が落ち着いた後に、時間を空けて症状が再度出現することがあります。再発と呼び、頻度は多発性硬化症よりもやや多く、予防治療をしない場合年に1~2回と言われています。再発予防の治療継続と早期発見が重要になります。

視神経脊髄炎の検査

 視神経脊髄炎の診断のため必要な検査は以下のようなものがあります。

血液検査

 抗アクアポリン4抗体の有無を調べることができます。また東北大学医学部に血液を送って抗MOG抗体を調べる場合もあります。

髄液検査

 脳と脊髄の周囲には髄液という体液が循環しています。髄液を調べることで脳や脊髄などの炎症の程度を知ることができます。髄液は脊髄に沿って腰の高さまで循環しているので、腰部を細い針で穿刺し、採取します。この行程を腰椎穿刺と言います。

頭部MRI、脊髄MRI

 視神経の炎症を反映して視神経の腫大や強い造影効果が見られます。
 脊髄に見られる病変は縦に長いことが特徴的です。脊髄の断面では中心部に見られることが多く、浮腫(むくみ)を伴います。
 無症状で病変だけ増える再発もあるため、画像検査をすることでいち早く知ることができます。また、造影剤を使用することで病変が出現した時期や炎症の程度を推定することができます。

視神経炎
視神経炎

脊髄の長大病変
脊髄の長大病変

大脳病変
大脳病変


視野検査、視力検査など

 視神経障害の程度を知るために眼科医師による専門的な検査が必要になります。

電気生理学的検査

MEP(経頭蓋運動誘発電位)

 脳細胞を磁気で刺激し、手足へ伝導する速度を測定します。これにより、運動神経の障害部位と程度を調べることができます。一般病院では施行できない場合が多いですが、当院では検査が可能です。

SEP(体性感覚誘発電位)

 手足を小さな電気で刺激し、脳へ伝導する速度を測定します。これにより、感覚神経の障害部位と程度を調べることができます。

VEP(視覚誘発電位)

 視覚刺激の神経伝導を測定することにより、視神経の障害の程度を調べることができます。

視神経脊髄炎の治療

 異常な免疫反応が疾患発症の原因であるため、治療は免疫を抑制することになります。初発時や再発時に症状の増悪を抑制するための急性期治療と、病態が落ち着いている時に再発を予防するための慢性期治療に分かれます。

急性期治療

 急性期治療は早期に開始することが後遺症を少なくするために重要です。具体的には以下の投薬や治療を行います。

副腎皮質ホルモン

 最も一般的に使われている免疫抑制薬です。点滴で1週間に3日間、大量の副腎皮質ホルモンを投与する「ステロイドパルス療法」を行います。感染症や胃潰瘍などの副作用が知られていますが、予防薬を内服することで防ぐことができます。

血漿交換

 血液を一時的に体外に取り出し、血中の異常な自己抗体や免疫反応を引き起こす物質を取り除いた後に、返血します。他の治療に比べて体への負担が大きいため、他治療が無効である最重症例などに限定して行います。

大量免疫グロブリン静注療法

 免疫グロブリンを大量に投与することで疾患に関与している異常な自己抗体を無効化します。アレルギー、血栓症や髄膜炎などの合併症が低頻度で生じます。

慢性期治療

副腎皮質ホルモン

 少量の副腎皮質ホルモンを内服継続することで再発を抑制することができます。感染症や胃潰瘍、体重増加、血栓症、骨粗鬆症などいくつか副作用がありますが、予防法がよく知られています。また、早期に減量することで合併症のリスクを下げることができます。

免疫抑制剤(アザチオプリン、タクロリムス、シクロスポリンなど)

 副腎皮質ホルモンだけでは再発が抑制できない場合や副腎皮質ホルモンの副作用が強い場合に合わせて使用します。

副腎皮質ホルモン

 免疫を活性化させる補体のうち、C5というタンパク質を阻害することで、再発を抑制すると考えられています。抗アクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎に対する治療薬として2019年11月新たに承認されました。ただし、髄膜炎菌による重症感染症の危険もあり、使用は慎重に行うべきです。

 その他、手足の突っ張る感じやしびれなどの感覚障害の症状を緩和するために対症療法を行います。

社会的支援

 視神経脊髄炎は「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき、厚生労働省の指定難病に登録されているため、重症度に応じて医療費助成制度の対象となります。また手足や体幹に障害が残った場合は肢体不自由に対して身体障害者手帳の交付を受けることで、医療費助成などを受けられます。

参考文献

1)多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017
2)難病情報センターホームページ 多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)別ウィンドウで表示します。


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