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球脊髄性筋萎縮症(SBMA)

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)とは

 球脊髄性筋萎縮症(SBMA)とは、SBMA:Spinal and Bulbar Muscular Atrophy の訳であり、報告者の名前にちなんでKennedy-Alter-Sung症候群と呼ばれることもあります。通常30~60歳ごろに発症し、男性のみに発症することが特徴です。我が国における有病率は人口10万人あたり2人程度であり、日本全国では2,000人~3,000人くらいの患者さんがいるものと推定されています。

SBMAの原因と遺伝

 SBMAは、アンドロゲンという男性ホルモンの受容体の異常によって発症します。異常なアンドロゲン受容体はタンパク質の高次構造の異常を来し、神経細胞の核に蓄積します。
 これにより脳や脊髄の神経細胞に障害を来します。アンドロゲン受容体の遺伝子はX染色体という性染色体の中にあり、異常遺伝子を持った男性が発症しますが、たとえ異常遺伝子を持っていても女性は発症せず、異常遺伝子を持っているだけの状態となります(保因者)。男性患者さんの子どもが男性の場合は発症しませんが、子どもが女性の場合は、必ず異常遺伝子の保因者となります。保因者の女性から生まれた男性は1/2の確率で発症し、女性の場合は1/2の確率で保因者になります。

SBMA症状

 脳の一部や脊髄の運動神経細胞の障害により、しゃべったり、飲み込んだりするときに使う筋肉や舌の筋肉、さらには手足の筋肉がやせてきます。これを筋萎縮(きんいしゅく)といいます。また、男性ホルモンの受容体異常による症状も認めることがあります。具体的には「手がふるえる」「力が入らない」「腕や足が細くなってきた」「筋肉がつる・ぴくぴくする(筋けいれん)」「食事の際ものが飲み込みにくい」「むせることが多い」「乳房が膨らんできた」「体毛の減少」「睾丸が小さくなってきた」などがあります。
 また、この疾患に特徴的な症状として、「顔や頚部を動かした際に筋肉がふるえる、ぴくぴくする」ことがあります。

SBMAの診断

 診断は、血液検査や心電図検査などの一般的な検査や、針筋電図検査や神経伝導速度検査などの神経学的な専門の検査を行い、それらの結果を総合して判断します。最終的には血液から遺伝子を取り出し、検査することで確定診断を得ることができます。血液検査では筋肉のけいれんなどを反映して血清クレアチンキナーゼ(CK)の上昇が高値を示すことが一般的です。その他肝機能異常や脂質異常症、男性ホルモンの異常値などが認められることがあります。検診で肝機能障害を指摘されてCK上昇が判明することもあります。心電図では、約10%の方に異常な波形を認めることがあります。

針筋電図
図1.針筋電図の比較
左に正常者、右にSBMAの患者の針筋電図を示します。SBMAの患者さんでは正常者と比較して波が大きくなっており、筋肉を支配する神経細胞の減少を反映した所見です。神経伝導速度検査では、筋肉の反応が小さくなったり、感覚神経の振幅が小さくなったりします。

SBMAの治療

 根治的な治療法は確立していません。基本的には症状に合わせてリハビリテーション療法を行ったり、脂質異常症などの合併症に対して個別に治療を行います。現在、男性ホルモン抑制療法や遺伝子発現抑制治療、ミトコンドリアという細胞内の構造の機能異常を治療する薬等、様々な治療法に関する臨床試験が進められています。これまで前立腺癌や閉経前乳がんなどのホルモン依存性疾患の治療薬として使用されていた黄体形成ホルモン放出ホルモン誘導体であるリュープロレリン酢酸塩が、2017年8月に、SBMAの進行抑制に対する治療薬として世界で初めて承認されました。12週に1回皮下注射する薬剤で、当院でも投与可能ですが、完全に進行を止めるような薬剤ではなく、性機能低下、抑うつ等の副作用もありますので適応は慎重に検討する必要があります。

社会的支援

 SBMAと診断され、一定の重症度に達している場合は、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)に基づく医療費助成を受けることができます。また肢体不自由や嚥下障害に対しては、その程度に応じた等級の身体障害者手帳の交付を受けることで、各種手当の受給、医療費助成などが受けられます。症状や所得によっても受けることができるサービスが異なりますので、詳しくは居住地の自治体役所、医療機関のソーシャルワーカー等にご確認ください。

参考文献

1) 難病情報センター 球脊髄性筋萎縮症(指定難病1) 
http://www.nanbyou.or.jp/entry/234,別ウィンドウで表示します。
2) 球脊髄性筋萎縮症の病態と治療法の開発 近藤 直英ら 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/34/2/34_101/_article/-char/ja/,別ウィンドウで表示します。
3) 神経変性疾患の克服に向けて 球脊髄性筋萎縮症の医師主導治験の経験から
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/52/10/52_920/_pdf/-char/ja,別ウィンドウで表示します。

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