子宮は妊娠・出産のための生殖臓器であります。そこで胎児の発育に伴い大きく伸展し、また妊娠出産の際には胎児を押し出すために強い収縮(陣痛)をしなければなりません。そのため子宮の上方(子宮体部)は伸展性に優れる平滑筋の層で作られています。子宮筋腫はその平滑筋に発生する良性腫瘍(平滑筋腫)です。
そして発生・増大には女性ホルモンであるエストロゲンが関与していて、閉経前には症状が強かった場合でも閉経後には著明に縮小し問題にならなくなってしまうことがほとんどです。
また筋腫は、女性ホルモン(エストロゲン)のサポートなしには生存することができず、同じホルモン依存症の腫瘍でありながら自律的に増殖することのできる悪性の腫瘍である子宮体がんや乳がんとは大きく異なります。
発生の原因としてはいくつかの遺伝子・染色体異常(12q染色体を含む転座や再構成等の変異、7q遺伝子の欠損、が子宮筋腫から見つかっていますが、いまだに明らかにされてはおりません。
以下のように分類されます。また子宮筋腫は多発性であることが多く、3種類の筋腫が混在することがあります。
筋腫が子宮内膜の直下にでき、子宮の内側(内腔)にむけて発育するものです。
5~10%を占め、ひどい月経痛や過多月経など最も症状が強く、不妊症や流早産の原因にもなりやすいものです。
筋腫のこぶ(筋腫核)が膣内に脱出(筋腫分娩)する場合もあります。
筋腫が子宮筋層内にでき発育します。子宮筋腫のなかで最も多く約70%が該当します。多発しやすいのも特徴です。
筋腫が子宮漿膜(外側の膜)の直下に発生し、外に向かって発育するため巨大化することが多いものです。10~20%を占め、無症状の事が多く、大きくなってから下腹部のしこり(腫瘤感)でみつかる場合が多いものです。殊に筋腫格がねじれてしまう茎捻転をおこすと緊急手術が必要なことがあります。
婦人科疾患の中で最も多く、生殖年齢の婦人の4~5人に1人(20~30%)の割合で発生します。一般的に白人女性より黒人女性の方が明らかに多く、ヒスパニックやアジア人はその中間といわれています。また、一親等以内に筋腫の家族歴がある場合2.5倍のリスクがあるといわれています。
これだけ頻度が高い疾患ではありますが、悪性化することはほとんどありません(0.5%以下)。
大半は無症状です。
粘膜下筋腫や大きな筋層内筋腫により子宮内腔が変形している場合に多く見られます。過長月経、過多月経、月経困難症をおこします。
多発筋腫で腫大した子宮や巨大な子宮筋腫を下腹部に触れます。
周囲の臓器を圧迫して、頻尿、排尿困難、尿閉、便秘、腰痛などの症状を起こします。
筋腫が急速に増大し血流障害がおきた場合や漿膜下筋腫が茎捻転をおこすと疼痛や発熱をおこします。また変性筋腫は感染すると腹痛・高熱をおこします。
粘膜下筋腫や大きな筋層内筋腫により子宮内腔が変形している場合は不妊の原因となります。
子宮筋腫は筋層内筋腫が70%を占めますが、多発性なため粘膜に近い場合には粘膜下筋腫に起こりやすい②や⑥を伴いやすく漿膜に近い場合には③④⑤の症状を伴うことが多くなってきます。
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