内診することで腹壁から子宮全体の形、大きさなどをみます。
子宮の全体が大きくない場合、膣の付近に存在する粘膜下筋腫や筋層内筋腫などには経膣超音波検査をします。腹壁に近く大きい筋層内筋腫や漿膜下筋腫には経腹超音波検査を用います。大きくなった子宮筋腫がその内部に変性を起こした場合は、多様なエコー像を呈することがあるため、卵巣腫瘍や子宮肉腫との鑑別が重要になる事があります。
子宮筋腫の位置や大きさなどを詳しく見る事ができます。子宮肉腫や子宮腺筋症との鑑別も行います。しかし、子宮肉腫と変性子宮筋腫を鑑別する明確な画像診断はなく、手術で摘出するしか確定診断が得られない場合があります。
子宮筋腫は良性の腫瘍で、すべての子宮筋腫に治療が必要になるわけではありません。検査などで子宮筋腫であると考えられ、症状がない場合にはだいたい半年~1年位で通院していただきます。
月経時痛や貧血などの症状を伴う場合には、鎮痛薬や鉄剤を処方します。
閉経後には筋腫は縮小傾向にあります。閉経まで間もなくの場合には人工的に閉経させ、本来の閉経期を待つことがあります。この治療により筋腫は縮小して症状は改善しますが、女性ホルモンの低下作用によって更年期様症状や骨密度の低下などの副作用があります。
不妊症や今後お子さんを望む場合に行います。子宮に出来た筋腫のみを取り除きます。おなかを開けて筋腫を取り除く開腹手術やおなかは開けない腹腔鏡下手術があります。開腹手術のメリットとしては、術中に直接子宮に触れるためMRIで見えないような小さな子宮筋腫も核出可能なことや妊娠・出産時に信頼できる強度の子宮層瘢痕形成(子宮の壁の傷跡)が行えます。デメリットとしては手術創が大きく(10㎝前後)入院期間が長くなり、おなかに手術創瘢痕が残ってしまうことが挙げられます。
腹腔鏡手術では手術創が小さく(5㎜~数センチの傷が3~4か所)手術の回復が早いこと、傷が目立たないことがメリットとして挙げられますが、筋腫の出来ている場所や大きさによっては出来ない場合があります。また、術後妊娠中の子宮破裂の報告も散見されており手術には熟練を要します。
いずれの場合も、子宮筋腫のサイズが大きい場合には筋腫核の縮小と子宮体部の血流を減少させるために手術前に偽閉経療法を行うことがあります。
子宮筋腫が大きい場合、これ以上お子さんを望まない場合、悪性の疑いがある場合には子宮を全摘出します。子宮が完全に摘出されるため、術後に子宮がん検診を受ける必要がなくなります。また、毎月の月経のわずらわしさからも解放されます。方法としては筋腫核出術と同様に、開腹手術と腹腔鏡手術があります。
腹腔鏡手術は傷も小さく、手術翌日からは歩行や食事も再開し、ほとんどの方が術後4、5日で退院します。ただし筋腫が大きすぎる場合や、術前の画像検査で悪性の疑いがある場合には開腹手術をお勧めする場合もあります。開腹手術の場合、通常の生活に戻るのに術後3~4週間ほどかかることが多いです。
子宮鏡手術は、膣から子宮口を経由して入れた内視鏡(レゼクトスコープ)で子宮の内側から筋腫を確認し、先端の電気メスで筋腫だけを削り取る手術です。子宮筋腫径が3㎝以内、筋腫自体が子宮の内側に50%以上突出した筋層内筋腫や粘膜下筋腫が良い適応とされています。開腹術や腹腔鏡手術と比べて侵襲が少なくすみますが、子宮の壁に穴が開いてしまう子宮穿孔や、手術中に子宮腔内に注入する非電解質水溶液のために水中毒を起こすことがあります。当院では電解質水溶液を使用しておりますので、水中毒の心配はありません。
手術療法を希望しない場合には子宮動脈塞栓術(UAE)や集束超音波治療(FUS)にて筋腫の縮小を試みる場合もあります。
子宮筋腫由来の症状があるものの、症状が薬剤治療などで改善せず、手術を希望しない場合に選択肢として挙げられます。血管造影の手技を応用して、局所麻酔で皮膚に入れた小さな切開(約5㎜)から、細い管(カテーテル)を選択的に子宮動脈内に挿入して、血管が閉塞するような物質(塞栓物質)を注入し血流遮断をする治療法です。1990年頃からフランスで始められ、現在、世界の多くの国でこの治療が行われています。約80~90%の患者さんで、子宮筋腫による過多月経、不正出血、疼痛などの症状が改善し、子宮筋腫も平均で約半分以下に縮小していきます。またこの治療により縮小した子宮筋腫は、ホルモン療法による筋腫縮小と異なり、再び大きくなることはないと報告されています。
ただし、合併症として手技自体による仮性動脈瘤の形成や出血の他に、子宮筋腫を塞栓した事による筋腫の脱落・分娩時の痛みや帯下の異常、感染症、深部動脈血栓症またそれに伴う肺動脈塞栓症、卵巣機能不全などが挙げられます。
将来分娩・妊娠を希望する場合には原則適応外ですが、子宮全摘出術しか治療法が残されていない場合のみ行うことがあります。治療後の妊娠・出産例については複数報告されており、59.5%が妊娠しており、流産が10.3%という報告もあります。
集束超音波治療(FUS)は多数の強力な超音波を腫瘍内で集中させ、焦点領域を60~90℃に加熱し組織を加熱凝固、壊死させる治療法です。もともとは前立腺疾患治療に臨床応用されたもので20年ほど経過しています。腫瘍の発生部位やその性状、大きさなどの観察のほか焼灼部位での温度変化もリアルタイムに見られるので、MRI検査とFUSを統合させて治療を行います。治療を行うと筋腫は壊死しますが筋腫自体はなくならず、治療して12か月で約40%縮小すると報告があります。妊娠・分娩に対する安全性は確立させていないため、妊娠を考える場合には治療適応外となり、影響は分かっていません。
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検査の結果、必要に応じて専門の検査や治療が必要な場合は、適切な医療機関をご紹介いたします。