副院長兼神経内科部長 椎尾 康
当科の特長
神経内科では、脳、脊髄、末梢神経、筋肉にわたる神経疾患・筋疾患の患者さんを幅広く診療しています(詳しくはこちら)。歩行障害、筋力低下、手のふるえ、呂律が回らない、頭痛、めまい、物忘れなど様々な神経の症状で受診されます。パーキンソン病、重症筋無力症、多発性硬化症などの神経難病、てんかんなどの慢性疾患で通院される患者さんが多く、脳梗塞、てんかん発作、めまい、意識障害、脳炎・髄膜炎などの救急疾患も数多く診療しています。
脳の病気には、脳卒中(脳梗塞、脳出血)のほか、神経変性疾患とよばれる神経の細胞死によりひきおこされる様々な疾患があります。神経変性疾患には、神経細胞死がおこる部位によって、アルツハイマー病を代表とする認知症、体のふらつきをおこす脊髄小脳変性症、体の動きが鈍くなるパーキンソン症候群(パーキンソン病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症など)、運動神経が障害される筋委縮性側索硬化症などが含まれます。
ほかに脳に炎症を起こす疾患として、細菌性、ウイルス髄膜炎のほか、自己免疫性脳炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシスなどがあります。このほか、大脳皮質の異常な興奮によって痙攣や意識消失がおこるてんかんも神経内科で診療する代表的な疾患の一つです。脳腫瘍は、脳神経外科が診療する疾患ですが、神経内科で診断されることもしばしばあります。
脊髄の病気には、背骨の老化現象によって脊髄が圧迫される頚椎症、感染症の脊髄炎、多発性硬化症や視神経脊髄炎に伴う脊髄炎、脊髄腫瘍、脊髄梗塞などが代表的です。
末梢神経の病気は、神経の圧迫による手根管症候群、顔面神経麻痺のほか、手足の神経に炎症をおこすギランバレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、遺伝性の疾患が含まれます。
筋肉の病気は、膠原病の一種である多発筋炎、皮膚筋炎のほか、様々な原因による筋ジストロフィー末梢神経と筋肉の連結部の異常である重症筋無力症などが挙げられます。
当科の疾患解説もあわせてご覧ください。
各医師の外来診療予定日です。
入院患者数(人) | 2024年度 | 2023年度 | 2022度 |
---|---|---|---|
脳血管障害 | 153 | 149 | 156 |
神経変性疾患 | 297 | 282 | 265 |
めまい | 45 | 56 | 56 |
てんかん | 46 | 74 | 62 |
末梢神経・筋疾患 | 140 | 108 | 103 |
脳炎・髄膜炎・脊髄炎 | 34 | 30 | 33 |
頭痛 | 13 | 20 | 11 |
多発性硬化症 | 21 | 26 | 38 |
脳腫瘍 | 3 | 3 | 2 |
その他 | 161 | 206 | 220 |
合計 | 913 | 954 | 946 |
当科は一般病院の神経内科としては在籍する神経内科専門医が際立って多く、また多数の入院外来診療を行っており、都内でも神経疾患診療拠点となっています。遺伝子検査や筋肉、末梢神経の病理検査等を東京大学神経内科と提携して行っており、大学病院と遜色のない診療水準を誇っているのが特長です。その他、全国の様々な施設に抗体検査などを依頼し、原因がわからない神経疾患の診断を確定しています。
当科の診療の柱は、大きく分けて神経難病と脳卒中です。
当院は2018年から東京都難病医療協力病院に指定され、パーキンソン病や進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症などの神経難病の診療で定評があります。重症筋無力症、多発性硬化症をはじめとする自己免疫疾患の患者さんも、近隣だけでなく遠方の病院からも紹介受診され、入院精査のうえ適切な治療を行っています。神経難病は診断や治療が難しい場合が多く、当科では他院からのセカンドオピニオンを積極的に受け入れ、診断や治療についての意見をお伝えしています。
当院には6名の神経難病指定医が在籍しています。基準に合致した患者さんには難病(特定疾患)申請を行っており、医療費の助成が受けられます。
該当する疾患については、難病情報センターのホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/) をご覧ください。
救急総合診療科と協力して、脳卒中の急性期診療にも積極的に取り組んでおり、多数の脳梗塞の患者さんの診療を行っています。脳梗塞は動脈硬化によるもの、不整脈や心疾患が原因なのかによって、治療法が異なりますので原因精査をしっかり行い原因に応じた再発予防を行うことが重要です。その他にも、血管攣縮が原因であったり、遺伝性の疾患、経口避妊薬や悪性腫瘍による血液の凝固異常、稀には特殊な悪性リンパ腫による脳梗塞もあり、「脳梗塞」と簡単に片づけるのではなく原因精査を重視しています。
電気生理学的検査(神経伝導検査や筋電図)を専門にしている医師が2名いるため、末梢神経疾患、筋疾患を疑われて紹介される患者さんが非常に多く、生理学的検査の結果、必要であれば神経や筋組織の病理学的診断や治療を行っています。例えば首下がりの後頸筋の生検、病理学的精査を行っている施設は国内では当科だけです(2022年11月現在)。また支柱病院では普及していない経頭蓋磁気刺激装置をルーチンで活用しており、筋萎縮性側索硬化症などの運動神経の疾患等で中枢神経伝道の評価を行い診断に役立てています。
神経疾患の診療は、診断がつけば良いというものではありません。進行し、要介護状態になって在宅診療に移行する患者さんも多数いらっしゃいますが、当院は在宅診療後方支援病院となっているため、肺炎や尿路感染、心不全などの内科的合併症を来した場合も入院診療を受け入れています。
神経難病は徐々に進行する疾患が多いため、外来通院の患者さんも年に1回程度はリハビリ、治療薬の調整などのために入院していただき、定期的な病状評価を丁寧に行っています。また、介護されている方の負担を軽減するために必要な場合は、レスパイト入院※も受け入れています(千代田区の医療ステイ利用支援事業にも協力しています)。
※レスパイト入院とは:在宅での介護が一時的に困難になった場合(介護者の病気や冠婚葬祭、心理的身体的負担など)に、一時的に入院を受け入れる仕組みのことです。副院長兼部長 椎尾 康 (しいお やすし) (卒業年:1992年) |
|
---|---|
主任医長 関 大成 (せき ともなり) (卒業年:2007年) |
|
主任医長 坂内 太郎 (ばんない たろう) (卒業年:2009年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: 日本神経学会認定神経内科専門医・指導医 日本内科学会総合内科専門医・指導医 難病指定医(神経難病) |
主任医長 山田 美菜子 (やまだ みなこ) (卒業年:1997年) | 専門分野: 神経内科全般、神経免疫 資 格 等: 日本神経学会認定神経内科専門医・指導医
日本内科学会総合内科専門医・指導医 難病指定医(神経難病) |
杉山 雄亮 (すぎやま ゆうすけ) (卒業年:2011年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: 日本内科学会認定内科医・指導医 難病指定医(神経難病) |
永迫 友規 (ながさこ ゆき) (卒業年:2011年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: 日本神経学会認定神経内科専門医・指導医 日本内科学会総合内科専門医・指導医 難病指定医(神経難病) |
辻田 真比古 (つじた まさひこ) (卒業年:2020年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: |
吉岡 玲央 (よしおか れお) (卒業年:2020年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: |
和光 健 (わこう けん) (卒業年:2022年) | 専門分野: 神経内科全般 資 格 等: |
(2025年4月1日現在)
当科は病院と診療所の連携(病診連携)を積極的にすすめておりますので、初診の患者さんは原則として診療所や病院からの紹介状をお持ちいただいています。なお、救急をはじめ急性期の患者さんに出来るだけ対応するために、慢性期の脳梗塞の患者さんはじめ、病状が安定している方は、ご自宅近くの診療所等に診療の継続をお願いしております(逆紹介)。逆紹介後も、病状が悪化したり内科的な合併症を起こした場合は、再度ご紹介いただき入院診療も含めた診療を行いますのでご安心ください。
当科では、神経疾患の専門的な診断、治療につき、他施設からの紹介患者を受ける一方、主に以下のような
施設と連携することで、年々細分化・専門化していく医療水準を維持しより良い診断、治療を行っております。
(順不同)
当科は日本内科学会、日本神経学会、日本臨床神経整理が買いの教育施設に認定され、神経内科専門医、内科系専門医の育成に力を注ぎ高い臨床水準を保つよう努力しています。また臨床研修病院の一部門として初期研修医や医学部学生の卒前教育も担当しています。東京大学神経内科の関連施設であり、神経内科専門医取得を目指す医局員からも当科での研修の希望が多く、その他の医療機関からも専門研修の応募を受け入れています。当科あるいは当院での内科研修、神経内科専門研修を希望する医学生、医師の方は採用案内をご覧ください。
転びやすい脳の病気
院長補佐兼神経内科 部長 椎尾 康
臨床研究名称 | 責任者名 |
---|---|
パーキンソン症候群における脳血流SPECTについての検討(147KB) | 中元 ふみ子 |