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梅毒

概要

梅毒の徴候や症状は進行に応じた3段階でそれぞれ大きく異なります。Ⅱ期以降の性器や全身の皮膚の特徴的なバラ模様で知られます。自然完治と誤解するような潜伏期を2度挟みながら、病状が徐々に悪化していきます。
予防に有効なワクチンは存在せず、ヒト免疫不全ウイルスと重複感染するケースが度々あります。

梅毒が「50年に1度」とも言われる規模で流行しています。2023年の感染者数は約1万5千人(速報値)と、10年前の約12倍。2024年も3月末時点で3千人を超えています。国立感染症研究所によると、1999年に感染症法に基づく現在の集計方法になって以降、感染者数は年500~1千人ほどでした。それが、10年ほど前から急激なペースで増えてきました。2022年、2023年はいずれも1万人を超え、2024年も年1万人を超えるペースです。

梅毒の原因

スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって発生する感染症です。性感染症のひとつです。
梅毒トレポネーマの唯一の自然宿主はヒト・人間です。また、その性質は低酸素状態でしか長く生存できないため、梅毒の感染経路は限定されます。 感染経路の大部分は、菌の排出がみられる感染者との粘膜の接触を伴う性行為ないし疑似性行為によるものです。
梅毒の感染者の皮膚および粘膜からの滲出液、唾液、精液、血液、膣分泌液などが感染源となります。主な感染経路は、感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触で感染することが多いです。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)、キス等が感染の原因となります。 感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染する場合もあります(先天梅毒)。

梅毒の治療

代表的な症状

現在経験する患者さんは、ほとんど症状がありません。それは、梅毒がもともと一定の時期を過ぎると、症状が消失する特徴があるからです。臨床症状がなく梅毒血清反応が陽性の場合を無症候性梅毒と呼びます。
ただ、下記の経過を知っていると、そういえば症状があった、という人も中にはいます。

梅毒の経過

第1期梅毒

感染の機会があってから3週間程度で病原体の侵入部位である感染局所に軟骨のような硬さを持つ硬結(しこり)ができてきます。これを初期硬結と呼びます。その後周囲の浸潤が強くなって盛り上がり、中心に潰瘍(くぼみ)ができます。これを硬性下疳(こうせいげかん)と呼びます。
初期硬結や硬性下疳は痛みなどがなく、治療をしなくても数週間で自然に消退してしまいます。男性では亀頭部、冠状溝、包皮など、女性では大小陰唇、子宮頸部などにみられます。
男女とも口唇または口腔にできることがあります。下疳は、通常3~12週間で治癒します。その後、患者さんは完全に健康に見えます。

第2期梅毒

感染の機会があってから3か月程度経過して、皮膚・粘膜の発疹や発熱、倦怠感、リンパ節腫脹など全身の症状が出現します。
この時期の発疹は多彩で、体幹を中心に顔面、四肢などを中心にみられる淡い紅色の皮疹(梅毒性バラ診)、手のひらや足の裏にみられる赤褐色で一部の皮がむけたような皮疹(梅毒性乾癬)、小豆大からエンドウ大の赤褐色の皮疹(丘疹性梅毒疹)などあります。全身の症状や皮疹が出現するので、この時期に診断されること多いと思われます。脱毛がみられることもあります。
第2期も治療をしなくても数週間で自然に治ってしまいます。第2期の症状が消退すると前期潜伏期となります。潜伏期が始まって2-3年は2期の症状が再燃することがあります。その後は後期潜伏期になり、症状のない時期が数年続きます。

第3期梅毒

感染後3年以上経過すると皮膚、筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生しますが、この時期になる前に治療が行われることが多いため、みられることは少なくなりました。

第4期梅毒

感染後10年以上経過した状態です。大動脈炎、大動脈瘤、脳脊髄の障害による脊髄癆、麻痺性痴呆などの症状が出現します。抗菌薬のなかった時代には、3期、4期梅毒に進行して亡くなる患者さんも少なくありませんでしたが、現代ではほとんどみられなくなっています。

神経梅毒の診断

神経梅毒というと末期の印象を持ちやすいですが、感染成立直後から、スピロヘータの中枢神経侵入を認めます。基本的に血清学的検査が血液と髄液で陽性、かつ髄液の白血球数と蛋白の増加を認めます。

神経梅毒にいくつかの病型があります。

梅毒の診断

梅毒血清反応には、RRR(Rapid plasma regain)法に代表される脂質抗原検査(STS;Serologic test for syphilis)とTPHA法に代表されるTP抗原検査の2種類があります。脂質抗原検査は感染機会があってから2週間程度してから陽性となり、12週程度で全例が陽性になるといわれており、適切な治療が行われると陰性化します。
ただ、他の感染症や膠原病などで偽陽性(BFP;Biological false positive)と呼ばれます。TP抗原検査ではBFPはありませんが、治療をした後も陽性が持続します。当院では即日検査も実施しています。

血液検査

当院では、検査をした方に下記のようなシートをお渡ししています。

反応の推移について

髄液検査

神経梅毒では、以下のような結果が得られることが多くあります。

検査方法 感度% 特異度%
白血球数 >5-10/m㎥ 100 約97
蛋白   >45mg/dL 90 <50

終わりに

最近増加しつつある梅毒について、概説しました。

梅毒は、長い間放置していると悪化しますが、適切な時期に適切な治療を受ければ治癒する病気です。感染が疑われたら、早めに医療機関を受診しましょう。

参考文献

  1. 梅毒診療の考え方 令和6年3月 日本性感染症学会
  2. 梅毒 感染症・アトラス 日本感染症学会
  3. 日本の梅毒症例の動向について(2024年10月2日現在)国立感染症研究所 感染症疫学センター・細菌第一部

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