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気胸とは?
~突然の胸の痛みや息切れ、その原因をわかりやすく解説します~
このページの内容
気胸ってどんな病気?
「気胸(ききょう)」とは、肺に小さな穴があき、胸の中(胸腔)に空気が漏れ出す病気です。
肺は「胸膜(きょうまく)」という薄い膜で包まれています。胸膜と胸の壁(胸壁)の間には「胸腔(きょうくう)」という空間がありますが、健康な状態ではこのすき間はほとんどなく、しっかり膨らんだ肺で埋まっています。
ところが肺に穴があくと、吸った空気がこのすき間に漏れ出してしまい、肺がしぼんでしまいます。すると、呼吸がしづらくなり、胸の痛みや息苦しさが現れます。
軽い場合は自然に治ることもありますが、重くなると命にかかわることも。
「なんとなく息がしにくい」「胸が痛い」などの症状があるとき、気胸の可能性もあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。
どんな人に起こるの~気胸の種類~
気胸は、原因や背景によっていくつかのタイプに分けられます。以下に代表的な4つのタイプをご紹介します。
原発性自然気胸(げんぱつせいしぜんききょう)
特にやせ型で背の高い10〜30代の男性に多く見られます。
肺の表面にできる「肺嚢胞(ブラ)」という空気の袋が破れて、空気が漏れることが原因です。
体質や遺伝的な要因も関係するといわれています。
続発性気胸(ぞくはつせいききょう)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎など、肺の病気がある中高年〜高齢の方に起こります。
肺の組織がもろくなっているため、自然に穴があいたり、治りにくく重症化することが多いのが特徴です。
20~40代の女性に見られる、女性ホルモンに関係した特殊な気胸です。
「胸腔子宮内膜症(きょうくうしきゅうないまくしょう)」という病気と関係していて、ホルモンバランス(月経時や排卵期)に合わせて繰り返すことが特徴です。
血気胸(けっききょう)
肺や血管が傷ついて、胸に空気だけでなく血液もたまる状態です。交通事故や手術のあと、または自然気胸に伴って起こることもあります。血圧が下がるなどの危険な症状を伴うことがあります。
その他のまれなタイプ
次のような病気が原因となって、気胸が起こることもあります。
- 肺リンパ脈管筋腫症(LAM)
- Birt-Hogg-Dubé(バート・ホッグ・デュペ)症候群
- ランゲルハンス細胞組織球症
いずれもまれな病気ですが、画像検査や手術の所見が特徴的で、診断には専門的な知識が必要です。
主な症状は?
気胸の症状は突然現れます。以下のような症状がある方は、気胸の可能性があります。
- 突然の胸の痛み(片側)
- 息が吸いづらい、息切れがする
- 横になると「胸の中でポコポコと音がする」
- (女性)精鋭や排卵期のたびに胸が痛む
☑ 症状の強さは人によって異なりますが、軽い症状でも放置せず早めの受診をおすすめします。
どうやって診断するの?
気胸が疑われた場合、以下のような検査を行って診断します。
胸部X線(レントゲン)検査
肺のしぼみ具合や、胸腔にたまった空気を確認します。

胸部CT検査
「肺嚢胞(ブラ)」や空気漏れの原因を検索するために行います。詳細な画像で診断精度が高まります。



血液検査・血中酸素濃度の測定
全身状態や、重症度・他の疾患との合併を確認します。
気胸の治療法について
治療は、気胸の重症度・再発の有無・年齢・基礎疾患の有無などによって異なります。
軽度気胸の場合
- 自然に肺が膨らむの待ちながら、安静で経過観察します。
- ただし、発症から時間が経っていないうちは悪化する可能性もあるため、一泊の入院や短期間での再診が推奨されます。
中等度気胸~高度気胸の場合
- 入院管理となります。
- 胸腔ドレナージ(胸に細い管を入れ、空気を体外に排出)を行います(局所麻酔)。
緊張性気胸(高度気胸)の場合
- 空気漏れの量が多く、だんだん肺がつぶれてしまい心臓や反対側の肺も圧迫してしまいます。
- 血圧が下がってしまったり意識がもうろうとすることもあり、命に関わることのある状態なので、すぐに治療が必要です。
- 胸腔ドレナージ(胸に細い管を入れ、空気を体外に排出)を行います(局所麻酔)。入院管理のうえ手術も検討していきます。
両側気胸の場合
- 気胸は片側に起きることが多いですが、両側一度に起きることがあります。
- 呼吸がとても苦しくなり、酸素がうまく取り込めなくなります。
- 命に関わる事のある重い気胸ですので、「ただの痛み」と思って放置しないことが大切です。
- 片方ずつ、あるいは両側の胸腔ドレナージの必要があります。入院管理のうえ手術も検討していきます。
再発・明らかな嚢胞がある場合・高度気胸の場合
- 胸腔鏡手術を検討します。
当センターでは、低侵襲(身体への負担が少ない)手術を行い、術後3~5日で退院可能です。
高齢者や呼吸機能が悪いために全身麻酔での手術が出来ない場合
- 局所麻酔下で胸腔鏡手術を行う場合もあります。
- 胸膜癒着療法も検討します。
タルク(鉱物)、ピシバニール(免疫刺激薬)、ミノマイシン(抗菌薬)、高濃度ブドウ糖、自己血などを使用し、胸膜と胸壁を”くっつける”方法です。
胸腔ドレーン

気胸の手術について~再発を防ぎ、安心して呼吸できる毎日を~
気胸で手術を考えるタイミング
以下のようなケースでは手術をおすすめしています
- 再発を繰り返している
- 中等症以上で空気漏れが続く
- CTで明らかな「肺嚢胞(ブラ)」が確認されている
- 両側の気胸を経験している
- 受験・就職・仕事・頻回に飛行機を利用するなどで再発リスクを減らしたい
手術の方法:胸腔鏡手術(VATS)
胸に小さな穴(約7mm~2cm)を2~3か所あけ、カメラと器具を挿入しモニターに画像を映し出して手術を行います。
- 3つの穴を使用した3port手術
- 1つの穴と1つの針孔で手術をする、1port+1puncuture手術
(2cmと2mmの創(きず)で、整容性を重視し、当院で開発した手術)を行っています。気胸の状況を見て選択します。
- 「肺嚢胞(ブラ)」を自動縫合器(ステープラー)で切除
- 状況に応じて、「肺嚢胞(ブラ)」を焼灼したり、根本で結ぶ(結紮)ことも併用
- 再発予防のため、切除部に補強シートを追加(酸化セルロース/ポリグリコール酸 など)
- 脆い肺にはフィブリン糊も使用(血液成分を応用した生体接着剤)
☑ 傷が小さく、術後の痛みが少ない
☑ 傷跡が目立ちにくく、美容面にも配慮されているため、若い方や女性にも安心して受けていただけます。
実際の手術風景
3port手術

1port1puncture手術

手術の流れ(目安)
退院後の生活と注意点
- 傷口の管理(シャワー浴OK/入浴は医師の指示に従って)
- 強い運動・歌唱(カラオケなど)は2~4週間控える
- 飛行機・登山などは術後しばらく避ける
学生さんには、受験・学校行事に配慮したスケジュールを提案
社会人には、職種に応じた復帰プランをご案内しています。
当センターの特長
- 呼吸器専門医(呼吸器内科)・呼吸器外科専門医(呼吸器外科)が常勤
- 経験豊富なチームによる迅速な対応・確実な技術
- 月経随伴性気胸を含む女性の気胸にも専門的に対応
- 術後フォローも内科・外科・看護部が一丸となって支援>
再発を防ぐには?
- 禁煙が最も重要です(喫煙者は再発率が高くなります)
- 飛行機搭乗や登山などの気圧変化がある活動は医師と相談を
- 体調や生活状況にわせた運動制限や日常管理を指導します
- 手術による再発防止も選択肢となります(特に若年者・再発例)
よくあるご質問(Q&A)
- 学生でも手術出来ますか?
- もちろん可能です。学校行事や受験などを考慮した、ライフスタイルに合わせた治療計画を立てます。
- 生理中に毎回胸が痛いのですが、関係ありますか?
- 「月経随伴性気胸」の可能性があります。一度、ご相談ください。
- 手術ってやっぱり痛いですか?
- 胸腔鏡手術は傷が小さく、痛みも軽減されます。必要に応じて痛み止めを使用し、無理のない回復をサポートします。
- 一度気胸になったら、またなるのですか?
- 再発率は30~50%と言われています。手術が有効なことが多いです。
- 肺を一部切っても、ちゃんと呼吸できますか?
- 切除するのは空気漏れの原因となる「弱い部分」で、呼吸への影響はほとんどありません。肺疾患のある方には機能温存を重視した手術を行います。手術以外の治療法も提案できます。
- 手術しても再発しますか?
- 手術をしない場合の再発率は30~50%程度、再再発は60%程度とされていますが、手術により数%に下げることができます。再発の不安は大きく軽減されます。
- 片側だけでも、両側の手術が必要?
- 通常は発症側のみ手術します。ただし両側性の既往がある方には、両側の手術を検討することもあります。
紹介・受診・お問い合わせ
当センターでは、以下の外来体制を整えています。
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