網膜を栄養している血管のうち、静脈が詰まって眼底出血を起こしている状態を総称して「網膜静脈閉塞症(RVO)」と言います。
図1 網膜中心静脈閉塞症の眼底写真
図2 網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真
一方「分枝閉塞症(BRVO)」の場合は、網膜内で静脈が一部閉塞するので、閉塞した静脈の上流にあたる網膜に出血が起こります(図2)。つまり、どの部分の静脈が閉塞するかによって出血で障害を受ける網膜の場所が異なってくるわけです。したがって、「網膜静脈分枝閉塞症」では、閉塞する場所によっては、視力低下などの自覚症状が起こらないこともあります。
出血を起こした場所が網膜の中心(黄斑部)にかかっていれば、視力低下や視野の一部分が見えにくいといったことが起こります。黄斑部に浮腫がおこれば、物がゆがんで見えること(歪視)が起こります。
図3 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の蛍光眼底像
網膜の静脈は拡張・蛇行しており、血管から
色素がにじみ出ている。
図4 網膜静脈分枝閉塞症(BRVOの)の蛍光眼底像
上半分に網膜出血と血管からの
色素のにじみが見られる。
毛細血管が閉塞している部分が広い場合に行います。網膜光凝固は、網膜出血による浮腫を早く引かせるためと、毛細血管が閉塞していることによるVEGFなどのサイトカインの産生を低下させるために行います。VEGFが大量に産生されると、眼内に新生血管が伸びてきて最悪の場合は血管新生緑内障になって失明する危険があるからです。通常は外来で行います。
静脈が閉塞して網膜に出血を起こすと、赤い血液が出ていないところにも血管の中の水分がにじみ出てきて浮腫(ふしゅ)を起こすことがあります。黄斑部に浮腫を起こすと歪視が起こり視力が低下します。そこで血管から水分がにじみ出てこないように抗VEGF薬を眼内へ注射します。
抗血小板薬・血管拡張薬・血管強化薬などを内服する場合があります。網膜静脈閉塞症による眼底出血には点眼薬は効果がありません。