レーザー治療は、糖尿病網膜症や網膜裂孔、網膜血管閉塞症などの網膜の病気の治療に広くもちいられています。病気の種類や状態によって、レーザーの光の色(波長)を使い分けることで、よりよい治療効果が得られます。当科のレーザー光凝固装置には、緑、黄色、赤の3色のレーザー光が内臓されており(図2)、病状や目的に合わせて使いわけることができます。
図1
パターンスキャンレーザー照射が可能な
マルチカラー光凝固装置(ルミナス社製 Vision One)
図2
緑・黄・赤の3色のレーザー光が使用できます
図3 照射可能な形状パターン
パネルにあるような、碁盤の目状、縦線、
三角、円周状、円弧状など様々な形状
パターンの連続レーザー照射が可能です
以前から行われているレーザー治療では、照射すべき範囲の網膜に間隔を空けながら、レーザー光を一つ一つ照射します。目薬の麻酔薬を用いても、人によっては強い痛みを感じることがあり、一度にたくさんのレーザー照射が必要な患者さんでは、麻酔の注射をしてもなお、痛みを強く感じる場合がありました。新しい器械では、従来のレーザー治療モード以外に、よく用いられる数種類の形状パターン(図3)が組み込まれており、そのパターンに合わせて短時間のレーザー照射(最大25発までの連続照射)を連続的に行うことができます。
一つのレーザー光の照射時間が従来のレーザーの100分の1ほどですので、従来のレーザー治療よりも、痛みが少なく、同じ範囲の治療を終えるのにも、時間も短縮できるというメリットがあります。また短時間ですが、高出力(高エネルギー)であるため、適切な治療効果も得られます。痛みの感じ方は、人によって大きく違いますので、全く痛みがないわけではありませんが、苦痛を感じる時間が短いこともメリットと考えています。
特に、糖尿病網膜症では、網膜の広い範囲に対して数千発のレーザー治療が必要な場合もありますが、従来のレーザー治療では、患者さんが感じる痛みが強く、麻酔注射を行っても、治療を中断しなくてはならないことも多くありました。しかし、このレーザー器械を用いることで、従来に比べて痛みが少なく、また時間が短縮されるため、患者さんの苦痛が軽減し、治療効果が上がっています。
またパターンスキャンレーザーは、レーザー治療を行う全ての病気に行うわけではありません(病状などにより不向きな場合もあります)が、従来のレーザー治療と併用することで、治療効率が上がり、その結果より良い治療効果が得られています。
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