肝臓がんには大きく分けて2種類あります。肝硬変などの慢性障害のある肝臓に最初にできてくる肝細胞がんと、大腸などの他の臓器にできた癌が血流に乗って肝臓に到達して大きくなる転移性肝がんです。
肝細胞がんの治療としては、手術、カテーテルを使った肝動脈塞栓術、ラジオ波を含む局所療法、新しい分子標的薬(ソラフェニブ)などがあります。また、転移性肝がんの治療としては、化学療法、手術などが知られています。最近、大腸がんの化学療法の進歩によって生存期間が大きく延びた結果、その肝転移に対して局所療法が必要となる機会が増えてきました。
我々は、上記2種類の肝臓がんに対してラジオ波治療をおこなっています。これは、超音波で観察しながら、皮膚表面から肝臓に穿刺針を入れて腫瘍を貫き、通電して焼き切る治療です。1回の通電で、3cm径の球体として組織を熱変性させることができます。この治療だけで手術に匹敵するような腫瘍ゼロを目指す場合もあれば、他の治療と組み合わせて病勢のコントロールを目標にすることもあります。
全身麻酔を必要とせず、入院期間は1週間程度ですので、負担の少ない治療だと思います。術後の出血、感染症などの合併症に対しては十分の注意と予防対策を持って臨んでいます。
現在、我々の病院では、年間50例程度(肝細胞がん60%、大腸がん肝転移30%、他)のラジオ波治療をおこなっており、今後も積極的に取り組んでいく予定です。