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ホーム  診療科のご案内  整形外科  内側半月板後根断裂の診断と治療
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内側半月板後根断裂の診断と治療

1.内側半月板後根断裂とは?

 近年、内側半月板後根断裂(medial meniscus posterior root tear, MMPRT)の診断、治療について膝関連学会で盛んに議論されています。
 半月板とは膝関節内にある線維軟骨のクッションで、前後二か所で強く脛骨(膝より下のすねの骨)に固定されていますが、その後方部分が後根です(図1)。この内側半月板の後根部分が断裂した状態が内側半月板後根断裂です(図2)。

図1.正常な内側半月板後根(左ひざ関節鏡写真、矢印)
図1.正常な内側半月板後根(左ひざ関節鏡写真、矢印)

図2.内側半月板後根断裂。完全に断裂している(左ひざ関節鏡写真、矢印)。
図2.内側半月板後根断裂。完全に断裂している(左ひざ関節鏡写真、矢印)

2.発症、症状、診断

 内側半月板後根断裂は50歳以降の中高年層に多くみられる疾患で、ごく軽い外傷を契機に発症します。例えば、自転車運転中に地面に強く足を着いた、階段昇降時に強く足を着地した時などに、ブチッという感覚と共に発症します。あるいは、全く外傷なく突然膝の後方に痛みを感じて発症することもあります。発症後にはとても強い痛みが続きます。
 整形外科受診時、XP検査では特に異常を認めない、あるいはごく軽い変形性膝関節症の像を呈しているのみで、診断がつかずに放置されることが度々あります。この疾患の受傷後特徴的な所見は、レントゲン画像の異常が軽微なことと症状の強さとのギャップが大きいことです。そのような場合、MRI検査を行うことでこの損傷は明らかになります。MRIでは本来連続しているはずの半月板後根部に明らかな不連続がみられ(図3)、また半月板が本来あるべき大腿骨と脛骨の間から逸脱して(はみ出して)しまっている特徴的な像(半月の逸脱、図4)がみられますので、容易に診断がつきます。

図3.内側半月後根断裂部。明らかな半月板の不連続像(矢印)。
図3.内側半月後根断裂部。明らかな半月板の不連続像(矢印)

図4.内側半月板の逸脱(はみ出し)像
図4.内側半月板の逸脱(はみ出し)像(矢印)

3.経過

 強い痛み止めの内服や関節内への注射で一時的な疼痛緩和は得られることもありますが、このような半月板の状態を放置すると、今度は大腿骨顆部骨壊死が続発し、さらに疼痛が強くなることがあります。我慢できる範囲内に疼痛が抑えられている場合であっても、半月板が関節軟骨保護の本来の役目を果たせていないため、徐々に変形性膝関節症に進行していきます。そのため、疼痛など症状をとり、その後の活動性を維持するためには手術的な治療が基本と考えます。

4.手術的治療

 治療法は患者さんの活動性と年齢、関節軟骨の状態により異なります。

1)内側半月板後根修復術(図5)+脛骨骨切り術(図6)

 スポーツ活動を積極的に継続したい場合、あるいは日常生活の活動性が高い場合が適応になります。内側半月後根断裂部の修復(図5)と、脛骨骨切り術(図6)を併せて行います。半月板の修復術のみでは、多くの場合、修復部に負荷がかかり続けるために治癒は望めません。修復した内側半月板の負荷を軽減して治癒を促進するため、骨切り術を併せて行います。術後6か月以降には軽い運動が可能となり、それ以降、徐々にスポーツなど活動性はアップしていきます。多くの患者さんでは術後1年までにランニングやテニスなどのスポーツ活動が可能になります。当院では入院期間は4~6週です。適応年齢はおおよそ75歳までです。また、骨切り術後は外側コンパートメントに負荷がかかるため、外側コンパートメントの関節軟骨や外側半月板の状態が良いことが適応の条件になります。

図5.内側半月後根修復後の関節鏡写真
図5.内側半月後根修復後の関節鏡写真。
後根に縫着した縫合糸(黒矢印)を後根付着部(赤矢印)に開けた骨孔に引き込み、pullout固定した

図6.内側半月後根損傷pullout修復と脛骨骨切り術の術後X線写真
図6.内側半月後根損傷pullout修復と脛骨骨切り術の術後X線写真。
白い点線は内側半月板後根pullout修復のために穿孔した骨孔。白矢印のチタン製ボタンを用いて強固に締結固定した。赤い点線が脛骨骨切り線で、赤矢印のように内側を開大し、チタン製プレートで固定。膝を軽いX脚に矯正することで半月修復部の荷重負荷を軽減し治癒を促進する。

2)人工膝関節単顆置換術(UKA)

 日常生活を普通に送ることができ、さらに軽いハイキングやゴルフ程度ができれば良いという場合が適応になります。膝全体を置換する人工膝関節全置換(TKA)ではなく、悪くなっている内側部分のみを人工関節で置換します。TKAと比較すると膝の動きはよりスムースです。当院では入院期間は約3週間です。おおよそ60歳以上が適応です。

5.治療法の決定と術後のリハビリテーション

 我々は以上のような考え方に基づいて治療を行っていますが、全ての患者さんに杓子定規にそれが当てはまる訳ではありません。それぞれの患者さんと担当医がよく相談のうえ治療法を決定します。また、当院では経験豊かな理学療法士の指導のもと、膝の機能が十分に回復するまでリハビリを行っています。入院中には地域包括ケア病棟を利用しながらリハビリを十分に行い、退院時には日常生活に困らないまで膝機能を回復させることができていると自負しています。
 急に強い膝痛が出現した時には本疾患も念頭に入れて診断、治療することが必要です。ぜひ当院整形外科担当医師までご相談ください。

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