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けんこう家族 第108号【5】

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下肢静脈瘤と治療―新しい治療「レーザー治療」について―

外科医師 永吉実紀子

外科医師
永吉実紀子

 下肢静脈瘤はとても頻度の高い病気で、最近新しい「切らない治療」も出てきたので注目されている病気です。今回はそのお話をしたいと思います。

1 下肢静脈瘤とは

 足の血管が太く浮き出ているものを「下肢静脈瘤」といいます。太いものから細いものまで、4つのタイプに分類されます。(写真1)

  1. 伏在静脈瘤:最も太く、外来に見える患者さまの約7割がこのタイプです。
  2. 側枝静脈瘤:やや細いタイプ。膝下前面などによく見られます。
  3. 網目状静脈瘤:さらに細いタイプ。膝裏などによく見られます。
  4. クモの巣状静脈瘤:最も細く、直径1mm以下の細かい静脈瘤です。

写真1 下肢静脈瘤
写真1 下肢静脈瘤

2 静脈瘤の症状

 足の血管が浮き出ているほかに、少し進むと足がだるい・重い・むくむ・ほてる・つるなどの症状が起こり、さらにひどくなると、かゆみ・皮膚炎・湿疹・色素沈着・皮膚硬化・潰瘍などの症状が起こります。(写真2)

写真2 静脈瘤と色素沈着、潰瘍
写真2 静脈瘤と色素沈着、潰瘍

3 静脈瘤のできやすい人

性別:女性に多く、特に妊娠・出産の回数が多いと増えます。
年齢:年齢とともに増えます。
遺伝:親・兄弟に静脈瘤のある人に多く起こります。
立ち仕事:美容師・調理師など立ち仕事の人に多く見られます。

4 静脈瘤の原因

 血管には動脈と静脈があり、心臓から勢いよくきれいな血液を送り出すのが動脈、体の端から心臓へ古い血液をゆっくり戻すのが静脈の役割です。静脈はゆっくり流れるので、心臓に戻りやすくするために血管の内側の壁に「逆流防止弁」が付いています(足の場合は下から上向き)。この「弁」が下肢静脈瘤の患者さまでは重力の負担などのせいで壊れてしまっているために、重力に負けて血液が足の下の方にたまって血管が太くなる、という成り立ちです。静脈は古い老廃物を運んでいってくれるべきものなので、静脈血が停滞している静脈瘤の患者さまではよく足のむくみや皮膚炎が起こるというわけです。

5 静脈瘤の治療

  1. 圧迫治療(弾性ストッキング)
     まず対症療法(症状を和らげて進行を防止する治療)として行うのが、医療用の弾性ストッキングによる圧迫療法です。足首が一番強く締まり、上に行くほどに弱くなるため、下から上に血液が戻りやすくなります。弾性ストッキングを履くと足が軽くなって楽になりますが、朝起きてから夜寝るまで、毎日かかさず履かなくてはいけないのがつらい方もいます。

  2. 硬化療法
     静脈瘤に直接針を刺して、薬(硬化剤)を注射して静脈瘤をペタンコにつぶす方法です。硬化療法は、太いタイプは再発が多く、細いタイプは広い範囲に静脈瘤がある場合、何回も針を刺さないといけないのが大変な治療です。とにかく見た目をきれいにしたいという場合にはお勧めできると思います。

  3. ストリッピング(静脈抜去)手術
     根本治療として従来から行われている方法です。足の付け根と膝下にそれぞれ1~2cmメスを入れて、悪い静脈の中にワイヤーを挿入して静脈を抜いて取ってしまうという治療法です。腰椎麻酔(下半身麻酔)や全身麻酔で行うことが多く、その場合入院が必要になります。

  4. 血管内レーザー治療
     今話題になっている最新治療法は「血管内レーザー治療」というものです。これは膝下に針を刺して、悪い静脈内でレーザーを照射して、レーザーの熱で静脈の内腔を焼き潰す、という方法です。  この治療法のメリットは、局所麻酔で手術できること、傷が2~3mmだけで目立たないこと、日帰りを含む短期滞在で手術できることなどが挙げられます。一方デメリットは、痛み止めが必要なこと(1週間。痛み止めを内服していれば痛みは余りありません)、皮下出血が起こること(治るまで2週間)、新しい治療法のため日本で長期成績が出ていないことなどが挙げられます。(写真3)
     血管内レーザー治療は数年前から自費診療で行われていましたが、平成23年よりいくつかの条件下に保険診療が認められました。厚生労働省で薬事認可されたELVesレーザー(980nmダイオードレーザー、写真4)を用いること、そして血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会が承認した実施医が手術を行うこと、最後に同委員会が承認した施設で手術を行うことです。当院は条件を満たしており、承認を受けた血管外科専門医が保険診療で手術を行います。また、入院設備が整っているため、患者さまの状態や御希望に合わせて、日帰りから短期入院まで入院期間を選ぶことが出来ます。

  5. 写真3 血管内レーザー治療:手術前/手術後
    写真3
    血管内レーザー治療(手術前/手術後)

    写真4 ELVesレーザー
    写真4 ELVesレーザー

     以上、下肢静脈瘤のお話でした。足のことで何か困っている患者さまは、どうぞ血管外科外来を受診してみてください。
     (血管外科外来診察日:月曜午前、水曜午前・午後)

    写真1、2出典:「下肢静脈瘤=原因と治療=」平井正文著、愛知県立看護大学監修

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