第125号 平成29年7月1日発行
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これまで、白内障の手術治療のひとつである「多焦点眼内レンズによる水晶体再建術」は、手術前後の検査料も含めてすべて自己負担(自費診療)で行っていましたが、2017年6月1日より厚生労働省より「先進医療」として認可されましたので、今後は自己負担分が少し安くなります。
通常の保険診療で使う眼内レンズは「単焦点眼内レンズ」と言い、遠くか近くかのどちらかにピントが合いますが、それ以外は眼鏡で調整が必要です。「多焦点眼内レンズ」(図1)は遠くと近くの2カ所にピントが合うので、眼鏡なしでもピントの合う範囲が拡がります。しかし、多焦点眼内レンズは値段が高く、保険診療では使用が認められていないので、患者さんの負担金額が大きいことが最大の欠点です。
日本の保険医療制度では、保険診療で認められていない材料を用いた治療を行うと、その材料の費用だけでなく、その治療に必要な「診察・検査・投薬・手術・入院料等」のすべてが健康保険を使えなくなり、すべての費用が自費になるという決まりがあります。つまり、保険診療と自費診療を同時に行うことはできないわけです(「混合診療」の禁止)。
しかし、厚生労働省が定めた「高度な医療技術を用いた治療で将来健康保険適用が検討されている技術」については、「先進医療」という名前で例外的に混合診療が認められています。
今回、当院での多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が「先進医療」として認められましたので、保険を使えない範囲が先進医療の「多焦点眼内レンズの費用」と「手術料」だけになり、自費診療分の金額が38万円になりました。検査料や入院料などは自費診療と併用して保険が使えますので、3割負担の方で、片眼多焦点眼内レンズ白内障手術の1回の入院につき、自己負担は先進医療分と合わせて合計約42万円になります。入院期間は3泊4日でこれまでと変わりません。
なお、先進医療特約つきの生命保険に加入されている方は、「先進医療」分の費用が保険会社から支払われることになりますので、事前にご加入の生命保険会社にお問い合わせください。