第147号 2023年1月1日発行
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新型コロナウイルス感染症が中国の武漢で発生してから、早いものでまる三年が経ちました。またたく間に世界的な大流行を引き起こし甚大な被害をもたらしましたが、この間にウイルスは、2021年3月(第3波)までの従来株からアルファ株(第4波)、デルタ株(第5波)、オミクロン株(第6波以降)へと、変異を続けました。変異するたびに感染力が高まる一方、弱毒化したため、ウイルス感染そのもので重症化する患者さんは激減しています。当院の救急外来やコロナ病棟においても、新型コロナウイルス感染により肺炎となる患者さんはほぼ見られなくなっています。予想以上に長期に及び、我々の日常生活を一変させたコロナ禍もようやく収束しつつあるようです。
超高齢社会に突入してから15年が経過し、高齢化率(65歳以上の人口割合)が30%近くとなった日本は、新型コロナウイルスによる肺炎の犠牲者が非常に多くなると考えるのが自然ですが、世界的にみても奇跡的なほど少ない被害で食い止めることができました。このことは感染者の診療に当たった医療関係者、感染対策を担当した政府や行政、そして何よりも三密回避、マスク手洗い、ワクチン接種等にすすんで協力した多くの国民の努力、実直で和を重んじる国民性の賜であったと思います。
昨年を振り返りますと、ロシア・ウクライナ戦争が長期化し、日本をとりまく地政学的緊張も高まっています。またコロナによる不況や少子化の急激な進行など懸念材料も多く、30余年に及ぶ経済、国力の低迷により日本がすっかり自信を失ってしまった現在、正月とはいえ晴れ晴れとした気持ちにはなれない方も多いことと思います。
しかしコロナ禍という歴史に残るであろう国難を乗り切った我々はもっと自信を持って良いはずですし、それを可能にした国民性こそが世界から信頼され尊敬される無形の財産であると思います。長い歴史の中で受け継がれてきた文化や伝統、美しい自然、治安の良さ、清潔な街、高い食文化など、日本には誇れるものが沢山あります。そして日本の医療水準、医療制度もまた、世界の人々が羨望の眼差しを向ける素晴らしい財産であります。
東京逓信病院もまた、地域のため、日本社会のために自信をもって歩みを進めて参ります。
本年もご支援、ご協力をいただきますようお願い申し上げます。