第126号 平成29年10月1日発行
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アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法はスギ抗原に対するものは2014年10月、ダニ抗原に対するものが2015年11月に開始されました。どちらも開始後2年以上を経過してこの効果が実証され、その1つのあらわれとして、最新のアレルギー性鼻炎治療ガイドラインで舌下免疫療法は軽症から最重症まで幅広い範囲で、推奨される治療として掲載されています。現在当科ではスギ抗原が14名、ダニ抗原が6名治療継続中ですが、治療を受けている患者さんからは「今までになく楽にすごすことができた」といった効果を実感された声を多数聞くことができました。幸い、約20%にみられるという治療に対してほとんど反応のみられない、いわゆるnon responderとよばれる患者さんには遭遇しておりません。そうした意味では、舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎治療の主流の1つになりつつあります。しかし、この治療はアレルギー物質を体内に入れる治療であるところから、副作用対策も欠かせません。幸い、現在のところ重篤なアナフィラキシーショックといった命に係わる重大な合併症の報告はありませんが、アレルギー物質を舌下することによる口内のかゆみや違和感は治療早期ではかなりの率で出現します。また、消化器症状、蕁麻疹、喘息発作も稀ながら報告されています。しかし、こうした合併症は事前に抗アレルギー薬を内服することにより軽減することが可能であるといわれていることから、副作用発現率の比較的高いダニ抗原での治療の場合は治療開始から2か月間程度は抗アレルギー剤を併用することにより治療の安全な継続が図れます。
このように事例が蓄積されてきたことから、それに基づいたエビデンスが最新のガイドラインに記載されています。以下に治療に関する部分を示します。
1) 薬物治療の効果が十分でない患者さんに対して舌下免疫療法を追加することにより、症状の軽減が期待できます。
2) 舌下免疫療法は3年以上継続したほうがよく、長期間継続することにより終了後に長期間効果が継続します。
3) 舌下免疫療法は皮下免疫療法(注射)と同等の効果が見込める可能性があります。
エビデンスの蓄積により、治療効果と安全性の確立した舌下免疫療法をご希望の患者さんは耳鼻咽喉科医師にお気軽にご相談ください。