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けんこう家族 第141号

第141号 2021年7月1日発行

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小児科:子どもの喘鳴、長びく咳

高瀬 眞人

小児科 部長
高瀬 眞人


御定年の小野正恵先生の後任として着任しました高瀬と申します。前職は日本医科大学多摩永山病院の小児科部長で、日本小児呼吸器学会の運営委員長を務める呼吸器の専門医です。どうぞよろしくお願いします。

小児科を受診される原因として最も多いのが呼吸器系の感染症やアレルギーによる咳や喘鳴です。喘鳴とは、呼吸に伴いゼーゼー、ヒューヒューと苦しそうな雑音を生じる状態です。気道のどこかに問題があることを反映していますが、特に苦しがらないこともあります。それでも、経皮酸素飽和度モニターを付けてみると、実際には血液の酸素濃度が低下していることも少なくありません。

せき子供

気管支喘息は喘鳴を反復する代表的な慢性疾患ですが、乳幼児では喘息ではないのに風邪をひくたびに喘鳴を繰り返すことがよくあります。5歳までに一度でも喘鳴を経験したお子さんは、30~50%と言われています。中でも、生後6か月頃から2歳の間にほぼ100%のお子さんが一度は罹患する「RSウイルス感染症」は、多くは咳のひどい風邪として自然に軽快しますが、20%程度のお子さんで喘鳴、呼吸困難を生じる「急性細気管支炎」に進展します。これは、気道の炎症のために気管支の粘膜が腫れて内腔が狭くなり、粘りが多い痰によって細い気管支が閉塞してしまうものです。現在、わが国で2歳以下のお子さんが入院される原因として最も多いのがこの病気です。気管支喘息には有効な気管支拡張薬や副腎皮質ステロイド薬の効果がほとんどありません。

RSウイルス感染症で急性細気管支炎になった場合、その後も風邪を引くたびに喘鳴を繰り返すために誤って「喘息」と診断されている方が多くみられます。本当の「喘息」は、ダニやハウスダストに対するアレルギーを基盤とした慢性気管支炎で、気道の過敏性が高まり、さまざまな刺激に対して気管支平滑筋の収縮から喘鳴、呼吸困難の発作をくりかえします。一方、喘息もどきの反復性喘鳴は男児に多く、小学校に上がる頃には自然に改善してしまいます。「喘息」と診断されて治療に通っていたが次第によくなった方の多くはこのようなものと考えられます。喘鳴や長びく咳で悩まされているお子さんでは、実は他にもさまざまな病態が隠れている場合があります。「気管支喘息」の治療も近年は格段に進歩しており、こちらも適切に治療を続ければ寛解していきますが、過剰な診断、治療は不要な心配を生じ、医療費の無駄使いにもつながります。


喘鳴や長びく咳でお悩みの方は、ぜひ一度当科を受診されるようお勧めします。


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