健診で行われる尿検査では、尿試験紙を尿に浸して色調の変化を見ることで尿潜血反応の有無を判別しています。判定結果は陰性から3+までの数字と記号で示されます。判定結果が±~3+の場合は尿中に赤血球が含まれているか詳しく調べるために、尿沈渣という検査を行います。顕微鏡で尿の沈殿物を観察し、一視野あたり5個以上の赤血球が観察されれば血尿と診断します。尿試験紙法は大雑把に血尿の有無を判定するのに有効な手段ですが、尿の性状(比重、酸性度、精液、細菌、アスコルビン酸など)によって正しい判定が出ないこともあります。当院の人間ドックでは、尿試験紙法と尿沈渣を同時に実施しているため、正確な血尿の診断が可能です。
血尿は肉眼的所見、顕微鏡的所見、症状の有無によって区別されます。赤ワインのような色の尿は肉眼的血尿と呼びます。一見正常な尿であっても顕微鏡で赤血球が見つかれば顕微鏡的血尿と呼びます。出ている赤血球の量によって色調が変化しますので、実は赤味の強さと疾患の重症度とは関係ありません。顕微鏡的所見では赤血球の形に注目します。血管が破れて出血した場合は赤血球の形は円形ですが、糸球体という尿の濾過装置をすり抜けた赤血球の形は変形していることが多いのです。変形赤血球が認められれば、糸球体性腎炎の可能性を疑います。尿路結石や尿路感染症では疼痛や発熱などを伴う血尿が良く出ます。そのような血尿を症候性血尿と呼びます。一方、自覚症状のない無症候性血尿では膀胱癌や尿管癌などの悪性腫瘍が原因となっていることも多いので、注意深く検査を行います。
『健診でいつも尿潜血1+なのに今年は2+と言われたから病院に来ました』という訴えを良く聞きますが、とても怖いことです。当院人間ドックを受診された約12,000人の尿検査結果を調査しましたところ、尿潜血±の40%、尿潜血1+以上の86%は顕微鏡検査の結果、本当に血尿でした。血尿の原因となる病気には①尿路悪性腫瘍(膀胱癌、腎盂尿管癌、前立腺癌(男性のみ)など)②尿路結石③尿路感染症④腎臓病(糸球体腎炎、IgA腎症、続発性腎炎、ネフローゼ症候群など)⑤その他(血管や尿路の異常、特発性腎出血)などがあります。血尿と診断された方の数%に尿路悪性腫瘍が見つかったという報告もありますので、注意が必要です。
泌尿器科では主に①~③の疾患を念頭に検査を行っています。まず非侵襲的な検査として、腎膀胱超音波検査と尿細胞診を行います。50歳以上の男性の場合は前立腺癌の可能性を念頭に、採血してPSA値も調べます。尿路結石が疑われる場合はレントゲン検査を行います。レントゲンに写らない結石もありますが、腹部単純CT検査であれば確実に結石の有無を確認できます。諸検査の結果、泌尿器科的な疾患が指摘できない場合には、糸球体腎炎などの内科的疾患について腎臓内科の先生方に精査をお願いしています。