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けんこう家族 第106号【2】

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前立腺がんの診断と治療

泌尿器科医長 佐藤 俊和

泌尿器科医長
佐藤 俊和

前立腺がんとは

 前立腺は男性だけにある臓器です。恥骨の裏側に位置し膀胱のすぐ下で栗の実のような形をしています。この前立腺にがんが発生する病気が前立腺がんです。前立腺の組織にはおおまかに尿道周囲の内腺(移行域)とそのまわりの外腺(辺縁域)に分けられますが前立腺がんの多くは外腺にできます。

  • 前立腺がんは増えている
     前立腺がんは50歳くらいからみつかるようになり、年齢が進むとともに増えていきます。全世界での前立腺がん罹患率(病気になる頻度)は、2008年のデータでは10万人あたり28.5であり、すべての男性がんのなかで2番目に多くなっています。発生頻度に地域差があり、欧米諸国に比べ日本などのアジア諸国では低くなっています。これは遺伝的素因だけでは説明できず、日本人がアメリカに移住すると前立腺がんが増えてくることから、脂肪やタンパク質の過剰摂取が影響しているといわれています。
     前立腺がんは日本では欧米に比較し少ないのですが、前立腺がんで亡くなる方は日本ではこの30年で4倍以上に増えてきていて、今後も増えていくと予想されています。
     前立腺がんの特徴に、臨床で見つからないままおとなしくしている潜在がん(ラテントがん)があります。他の病気で亡くなった方を解剖して前立腺を調べると、60歳以上で20―30%、80歳以上で半数くらいに前立腺がんがあることが分かるのです。前立腺がんの中にはゆっくり進行し、寿命に影響を来さないであろうと考えられるがんも存在するのです

前立腺がんの症状

 前立腺がんは、早期にはほとんど自覚症状はありません。あるとしたら、前立腺肥大症に伴う尿がでにくい、トイレが近いなどです。前立腺肥大症が進むと、前立腺がんになるか質問されることが多いですが、そういうことはありません。ただし、前立腺肥大症と前立腺がんが一緒に起こることはあります。前立腺がんが進行すると尿や精液に血液が混じることがあります。骨に転移しやすいので、たまたま腰痛などで検査して見つかることもあります。

前立腺がんの診断

 前立腺がんは早期に症状が出ないので、診断はPSAと言われる腫瘍マーカーの採血が重要です。PSA採血は前立腺がんを発見するきっかけとなります。

  • 腫瘍マーカーPSA(前立腺特異抗原)
     PSAは前立腺特異抗原と言い、前立腺の細胞で作られる物質です。年齢とともに少しずつその量が増えていき、前立腺がんでは血液中にたくさん出てきます。ただPSA値が異常であれば、すべてが前立腺がんというわけではありません。PSA値の目安としては4未満が正常で、4から10ng/mlがグレーゾーンと言われ、25―30%ぐらいでがんが見つかります。10ng /mlを超えると50%以上になります。PSA値が正常の場合でも、稀にがんがあることもあります。

  • 直腸診
     PSA値に異常があると、肛門から指を挿入して前立腺を触診します。

  • 生検
     PSA値、直腸診などで前立腺がんの疑いがあるときは前立腺生検を行います。生検をする場合、当科では2泊3日で入院となります。脊椎麻酔を行い、痛みのない状態で経直腸的に超音波ガイド下で、前立腺に針を刺し組織を採取します。2012年版前立腺がん診療ガイドラインで 10―12ヶ所生検が推奨されましたので、当科では以前の8か所から原則として12か所生検に変更しました。

  • 画像診断
     前立腺がんが見つかったときは、MRI、CT、骨シンチグラムを行います。
     MRIは磁気を利用した検査で、前立腺にがんがとどまっているか、前立腺の外に進展しているかなどを調べます。
     CTは体の断面をみるレントゲン検査ですが、リンパ節転移や遠隔転移がないかを調べます。
     骨シンチはアイソトープの注射で骨への転移を調べます。

  • 病理検査
     生検した組織を病理の専門医が顕微鏡で調べます。もしがんと診断したなら、悪性度をグリーソンスコアで判定します。悪性度を5段階で評価し、1が一番おとなしいがんで、5が最も悪いがんです。前立腺がんは悪性度が異なる成分を認めるので、最も多い成分と2番目に多い成分を足し算してスコア化します。たとえば一番多い成分が4で次に多い成分が3なら4+3=7と表します。スコアを3段階に分け、2―6は性質のおとなしいがん(高分化がん)、7は中くらい(中分化がん)、8―10は悪性度の高いがん(低分化がん)となります。このスコアは治療を決 定するのにとても重要です。

  • 前立腺がんの病期
     前立腺がんの病期はTNM分類という細かい分類がありますが、簡単に分けるとA―Dの4段階になります。
    • A 前立腺肥大症の手術をしてたまたま見つかったがん
    • B 前立腺内にとどまっているがん
    • C 前立腺の外に出ているがん
    • D リンパ節や骨などに転移しているがん

前立腺がんの治療

 前立腺がんの顔つき(グリーソンスコア)、病気の広がり(病期、TNM分類)、年齢、前立腺がん以外に病気があればその状態などを考慮し治療法を決めます。
 ただ、前立腺がんには潜在がんのように寿命に影響を来さないものもあり、PSA監視療法といって治療をしないで様子をみる場合もあります。生検した病理のがんの顔つきが悪くなく、前立腺のごく一部のみにがんがあり、PSAが10未満で ある場合、経過観察することがあります。ただ、生検はがんをすべて見ているわけではないので、顔つきの悪いがんが隠れている可能性もあります。現在無治療でよいという明確な基準はありませんので、担当医とよく相談しきちんと病院に通うのであれば考えてもよいでしょう。

  • 手術療法(前立腺全摘除術)
     がんが前立腺に限局している場合に行われます。75歳より高齢の方が手術を選ぶことは稀です。前立腺、精嚢を摘出し、膀胱と尿道をつなぎ直します。リンパ節転移があるか確認するために、前立腺の周囲のリンパ節を取ります。取り出した前立腺を病理検査で調べて、前立腺の表面までがんがきていないか病気の広がりを知ることができるので診断の方法としても手術は優れています。おなかに4、5か所穴をあけ、腹腔鏡とよばれる内視鏡で手術を行う病院もあり、最近ではロボット技術が応用された手術もあります。

  • 放射線療法
     放射線でがんをたたく方法です。転移のない前立腺がんを根治目的で行う場合と、骨転移の痛みをやわらげる場合などに行われます。

  • 前立腺に対する外照射
     体の外から放射線を当てる方法です。治療の期間は1カ月以上かかりますが、外来治療可能です。効果については、前立腺 に限局するがんでは、手術とだいたい同じくらいとされています。副作用としては前立腺と直腸、膀胱が接しているので、尿や便が近くなり下痢もよく起こり、尿や便に血液が混じることもあります。最近ではコンピュータを利用し、周囲の組織の障害を減らす装置も開発されてきています。
     手術と違うのは前立腺を取り出さないので生検と画像診断のみでがんの広がりを予想しなければならないことです。

  • 組織内照射(小線源療法)
     前立腺に放射線を放出する物質を埋め込む治療法です。肛門から超音波を挿入し、会陰部からアイソトープを埋め込みます。ヨード―125の低線量の線源(直径1mm長さ5mmくらい)を前立腺に100個くらい埋め込み取り出す必要はありません。入れた後しばらくはわずかに放射線がでていますので注意が必要です。この治療は悪性度の低い早期のがんがよい適応とされています。

  • 高密度超音波治療(HIFU)
     超音波を発生する装置を肛門より挿入し、エネルギーを1点に集めて前立腺組織を焼きます。コンピュータで制御し少しずつ前立腺を焼いていきます。悪性度が低く、早期のがんに行われます。保険が使えず自費診療となります。

  • 内分泌治療
     前立腺がんは男性ホルモンがあると成長します。男性ホルモンを減らすとがんの勢いがなくなります。この性質を利用したのが内分泌療法です。精巣を手術で摘出するか、LH―RHアゴニストという注射を使用します。注射は1ヵ月か3ヵ月に1度行います。抗男性ホルモン剤を併用することがあります。ほとんどの前立腺がんは内分泌療法で効果があります。稀にこれだけで治ってしまうこともありますが、長く治療を続けていると、再燃といって病気がぶり返します。根治をめざすのではないので、早期のがんで手術などができる人には内分泌療法をはじめからお勧めすることはあまりありません。転移のある前立腺がんでは内分泌療法がまず行われます。高齢者や体力が不十分で手術がむずかしい人に行うこともあります。

  • 化学療法
     内分泌療法の効果がなくなった再燃という状態に、ドセタキセルという抗がん剤が使われます。今までこれといった効果のある抗がん剤がなかったのですが、ドセタキセルは上昇していたPSAが抑えられることがあります。PSA高値を指摘された方、あるいは生検で前立腺がんと診断された方は、気軽に泌尿器科を受診しご相談ください。


  • 前立腺癌診療のアルゴリズム

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