痔核は、直立歩行を始めた人類の宿命ともいわれ、日本人の3人に1人といわれるほど、一般的で身近な病気です。排便、出産、重労働などを契機に、肛門周囲の毛細血管の一部がうっ血して、こぶ状になったものを痔核といいます。
直腸と肛門の境界(歯状線)より内側にできた痔核を内痔核、外側にできた痔核を外痔核といいます。外痔核は痛みを伴いますが、内痔核は痛みを感じないため、出血や痔核の脱出があって初めて自覚することが多いです。
内痔核は、脱出の程度によりⅠ度〜Ⅳ度に分類(Goligher分類)されます。
* 外痔核には、急性で激しい痛みを伴う「血栓性外痔核」があります。
⑴ゴム輪結紮法
軽度から中等度で、比較的限局した内痔核に対して用いられる処置法です。痔核の組織を鉗子でつかみ、「結紮器」に装着した小さなゴム輪を根部にはめ込んで結紮します。これにより痔核への血流が遮断され、1〜2週間で痔核は壊死し、ゴム輪と一緒に脱落排泄されます。
手術療法と比較すると「根治性」は劣るものの、入院を必要とせず、外来で繰り返し何度でも行えるというメリットがあります。
⑵結紮切除法(半閉鎖法)
中等度から重度の内痔核が対象となります。もっとも一般的に行われる手術法で、痔核に流入する血管をしばり、痔核とその外側の皮膚を切除するというものです。あらゆるタイプの痔核に適応でき、根治性は高いという利点がある反面、多少痛みが強かったり、後出血を起こしたりするおそれもあります。
⑶ PPH(procedure for prolapse and hemorrhoid)
直腸から粘膜が脱出するような内痔核に対する手術法で、筒状の器具を肛門内に挿入し、痔核の2〜3cm奥の直腸粘膜を環状に切除縫合して、垂れ下がる痔核や直腸粘膜を吊り上げることで、効果を発揮します。肛門周囲皮膚や肛門粘膜に手を加えないため、術後の痛みが少なく、手術時間が短いというメリットがあります。
⑷注射療法(硬化療法)
最近では、手術の適応とされていた内痔核に対して注射療法「ALTA療法」が注目されています。薬剤を痔核に注入して痔核に流れ込む血液を凝固させ、痔核を固めて筋層に癒着・固定させるものです。出血や痛みがないという特徴があります。ただ、この治療は、講習を受けた一部の専門医に限定して行うことが許されており、どこの病院でも行えるものではありません。
疾患の重症度や治療法の難易度によっても変わってきますが、当院では入院から退院までの工程を5日間とするスケジュール(クリニカル・パス)を標準としています。退院しても痛みや出血の恐れ、創部のセルフケアに対応するため、術後2週間程度の療養が必要と考えられます。
排便は術後1〜3日目ぐらいにあります。できるだけ、いきんだりせず、排便後は洗浄機能付き便座、シャワーなどで洗浄してください。必要に応じて、軟膏を使用します。
食事の制限はありませんが、アルコールや刺激物の摂取に関しては医師の指示を仰ぎましょう。
肛門周囲の血行を良くし、肛門に強い圧力や、長時間の圧迫がかからないような生活や、肛門に刺激の少ない食事が基本となります。
寒い冬はお尻を暖かくして過ごしましょう!
新年会などで飲みすぎないようにしましょう!