皆様明けましておめでとうございます。昨年は新型コロナウイルスの影響で社会的・経済的にとても厳しい日々でしたが、今年はV字回復になることを祈念します。
さて、今回は肝臓についての血液データのお話です。皆様は健診や外来の採血結果で「肝障害あり」と言われたことはないでしょうか。一口に肝障害と言ってもいろいろなものがあります。
肝臓には何種類かの細胞がありますが、一番多くの体積を占めるのが肝細胞です。タンパク質を作ったり、薬物を代謝・解毒したりという肝臓の主要な仕事をしています。この肝細胞の中に含まれている酵素の中にGOT(AST)やGPT(ALT)といったものがあり、二つまとめてトランスアミナーゼ(以下TAsと略します)と呼ばれます。これらTAsの血中濃度が上昇しているということは、肝細胞がつぶれてその中の酵素タンパク質が血管内に漏れ出している、つまり肝炎だということになります。これが一つ目の肝障害です。
肝炎の原因として有名なものにはC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスがあります。それら以外にも、アルコールや薬剤の副作用によるもの、自己免疫病による肝炎なども見られます。また、最近注目されているのが脂肪肝によるものです。脂肪もたまり過ぎると肝細胞をこわし、TAsが上がります。この脂肪肝による肝炎は、進行して肝硬変に至る場合もあり、そのように活動性の高いものは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)と呼ばれます。特にTAsが100(IU/L)以上の場合は要注意です。もし、肝炎ウイルスは陰性でお酒も飲まない、しかし最近体重が増えてきて、TAsが高いという場合にはナッシュではないか調べることが大事です。消化器内科や代謝内科の医師に相談してみてください。
もう一つの肝障害は、γ-GTPやALPといった胆管細胞に多く含まれる胆道系酵素の上昇です。有名なのは多量の飲酒によるγ-GTPの上昇ですね。アルコールの影響で、胆管細胞でこの酵素の産生が高まることが原因です。また、脂肪肝でもγ-GTPの血中濃度が上がることがあります。さらに、胆石症や胆管・膵臓・肝臓の腫瘍によって上昇することもあります。これらの疾患は、胆汁を運ぶ胆管を圧迫し、その表面にある胆管細胞に障害を起こすことによって胆道系酵素を上昇させます。
どちらの肝障害においても画像検査(超音波、CT、MRI)がとても役に立ちます。病歴に加えて、血液検査と画像検査を組み合わせることで、肝障害の原因がわかります。もし肝障害を指摘された場合は、外来でこれらの検査を受けてください。
寒さが厳しい折ですが、マスク・手洗い・うがいを徹底していただき、風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルスに打ち勝ちましょう。皆様の変わらぬご健康をお祈りします。