がんにおける主な治療法には、局所療法として①手術、②放射線療法、全身療法として③化学療法、④免疫療法などがあります。局所療法とは、がんの病巣を標的とした治療法で、全身療法とは目に見えない細胞までを標的として治療薬剤を全身投与して行う治療法です。手術療法は、がん病巣を切除する、局所治療の代表的治療法です。手術療法はがんを摘出するため、がんに対する根治性はもっとも優れ、現在の医療では、手術のできるがんに対しては、第1選択の治療法となっています。一般的に、手術療法の対象となるがんとは、固形がん(がん病巣が塊となっていて、CTなどの画像や肉眼で確認できるもの:肺がん、胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、腎がんなど)のうち、他の臓器への転移を認めないものとなっています。しかし最近では、他臓器への転移を認めても、その病巣が1~2か所程度であれば、原発巣とともに転移巣も手術を行って摘出することもあります。
では、がんの手術とはどのように行われるのでしょうか。まず、がんが見つかった場合には、全身状態をチェックして、がんの広がりや全身状態(心臓、肺、腎臓、肝臓などの機能状況)を調べます。その結果が手術のできる状況だった場合は、患者さんに手術をお勧めします。手術では、がん病巣だけを切除するのではなく、がんを含めて決まった範囲の、周囲の正常組織も含めて切除します(原発巣周囲の目に見えないがん細胞も切除するため)。たとえば、肺がんであれば病巣のある肺葉の切除や区域切除など。胃がんであれば、幽門側胃切除など。大腸がんであれば右半結腸切除や左半結腸切除などです。詳しくは、当院のそれぞれの科(消化器系、乳腺は外科、呼吸器系は呼吸器外科、腎がんは泌尿器科など)のホームページをご参照ください。手術は、身体の一部を切除するため、体に対しての負担は避けられませんが、最近では内視鏡手術(腹腔鏡手術や胸腔鏡手術)が発達し、多くのがん手術を内視鏡手術で行うことが可能となり、手術の低侵襲化が進んでいます。当院も積極的に内視鏡手術を行っており、例えば、呼吸器外科では最近3年間の肺がん手術の98%を胸腔鏡で行いました。
がんに対する手術療法は、がんを完全に治せる可能性が最も高い治療法です。昔に比べて麻酔方法も進化し、手術の低侵襲化も進み、決して恐れることはありません。がんが手術のできる段階で見つかった場合は、積極的に手術を行うことをお勧めします。