皆さんは“抗がん剤治療”にどのようなイメージを持っていますか。
「入院!?…結構長くなるよね?」「副作用がつらそうで心配…続けられるかな…」等々、ネガティブなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。皆さんがお持ちの知識に少しでもプラスされるように、“抗がん剤治療”についてお話します。
がん治療に用いる薬は、図のように抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)・分子標的薬・内分泌療法薬(ホルモン療法薬)・免疫療法薬・その他と分類でき、いずれかの薬剤を用いた治療をがん薬物療法と言います。つまり“抗がん剤治療”は、がん薬物療法の一種類です。
がん薬物療法では使用する薬によって作用機序や副作用は異なります。
例えば、本庶佑氏のノーベル医学生理学賞の受賞で脚光を浴びた免疫チェックポイント阻害薬。これはがんに対する注射薬ですが、分類上は抗がん剤ではなく、免疫療法薬(分子標的薬に分類することもあります)です。外科治療・放射線治療・従来の薬物療法に続く、4本目の大きな柱ともいわれるほど画期的な薬です。日本ではすでに8種類の免疫チェックポイント阻害薬が日々の診療に用いられています。また、分子標的薬とはがん細胞に特徴的な分子(遺伝子やたんぱく質など)を標的に作用する薬です。
このように効果的な治療薬は年々増加し、副作用を抑える治療(=支持療法。吐き気止めや痛み止め等)も飛躍的に進歩しています。相乗効果により治療成績は向上し、長期の入院は必須ではありません。もちろん、患者さんの体調や治療内容によっては毎回入院していただくこともあります。しかし、多くの患者さんが初回治療時のみ入院し、2回目からは通院で治療を行っています。
当院は2階に外来化学療法センターを開設しており、がん患者さんがセンターで通院治療をしています。点滴治療中はTVを見たり音楽を聴く等、リラックスしてお過ごしいただいています。患者さんから、「治療の合間に旅行に行ったよ」「趣味の個展を開いたよ」と楽しそうに声をかけられると私たちも嬉しくなります。
当センターでは、がん治療中の気がかりなこと・日常生活の工夫等、センター看護師や薬剤師が対応しておりますし、栄養士が食事のアドバイスも行います。治療と学業・仕事の両立や金銭面での心配事等もがん相談支援センターと連携し相談にのっています。皆さんが少しでも安心してがん治療に取り組めるように、皆さんの大切な人生を支えています。