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けんこう家族 第138号【3】

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転びやすい脳の病気

椎尾 康

院長補佐兼神経内科部長
椎尾 康


神経内科では、“最近よく転ぶようになりました”と訴えて受診される患者さんが少なくありません。孔子の倒れというくらいで、時には足を滑らせたり段差につまずいて転ぶことは誰にでもあることです。そそっかしい私は地下鉄の階段で転倒して救急隊のご厄介になったことがあります。しかし一ヶ月に何度も転ぶ、転んだときにとっさに手が出ず顔や頭を打ってしまうとしたら、ひょっとすると脳の病気が隠れているかもしれません。

神経内科で診療する主な疾患には、大きな括りとして脳卒中のほかに神経変性疾患があります。神経変性疾患とは脳や脊髄の神経細胞が何らかの原因で減ってしまう病気の総称です。たとえば認知機能に関係した神経細胞が減ると認知症になりますし、筋肉を支配する神経なら筋萎縮性側索硬化症、中脳の前側(黒質)ならパーキンソン病になります。そして、あまり有名ではありませんが、その変性疾患の一つに中脳の後ろ側が萎縮する進行性核上性麻痺という病気があります。中脳の後ろ側(中脳被蓋)には歩行や姿勢維持を司る中枢があるため、足がすくみ、小刻み歩行になります。これらはパーキンソン病でもみられる症状なのですが、パーキンソン病と違うのは、この病気では転倒がとても多いのです。中には毎日のように転んで頭を打ったり手足を骨折する患者さんもいます。健康な人ならバランスを失いかけても、すぐに姿勢を立て直す反射が働くのですが、進行性核上性麻痺ではその反射がうまく働かないためとても転びやすいのです。

MRI画像
MRI画像:白丸で囲んだ中脳が
萎縮してハチドリの頭のように見えます

患者さんの脳をMRIで前後方向に切った断面図を示しますが、中脳被蓋が萎縮してハチドリの頭のような形に見えるのが典型的です。また微量の放射能を注射する検査では大脳基底核と呼ばれる部位にも異常がみられます。

進行性核上性麻痺は人口10万人あたり10-20人程度(パーキンソン病は150人)と比較的まれな疾患とされています。しかし転倒、すくみ足、歩行障害の患者さんをよくよく調べてみると、パーキンソン病と同じくらいの頻度でこの疾患が見られるように思います。治療はパーキンソン病でも用いられるドーパという内服薬がある程度の効果を示すことがあり、またリハビリテーションによって転倒の頻度を減らすことができます。当院では定期的に入院していただき、病状の評価とそれに応じたリハビリや薬剤調整を行って少しでも転倒を減らし、症状の進行を遅らせるように努力しています。


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当科のホームページには進行性核上性麻痺の疾患解説も掲載していますので、合わせてご覧ください。


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