ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、毎年冬に流行する代表的な感染症のひとつで、潜伏期が短く感染力が強いため、集団感染を起こしやすいのが特徴です。そして、今年は例年に比べ感染性胃腸炎が多く発生しています。今回はノロウイルスの感染経路に焦点をあて、病院や家庭における効果的な予防法について説明いたします。 ノロウイルスは食物や人の手などを介して口から体内に入り腸管に感染しますが、経口摂取するまでの経路は3つに大別されます(図1)。
図1 ノロウイルスの感染経路
藤本 秀士 編著「わかる!身につく!病原体・感染・免疫」 南山堂より
魚介類は購入時に「生食用」と記載されていない場合は、必ず十分に加熱しましょう。また、生野菜などは流水で十分に洗うことが重要です。
加工食品に付着したウイルスを察知したり除去したりは、現実的には出来ませんが、少なくとも家庭内では、調理の前の十分な手洗い、まな板や包丁の衛生的な管理に努めましょう。
大量のウイルスを含む嘔吐物や排せつ物などに触る、または飛沫を浴びる、汚染されたドアノブ等の物品を介して直接あるいは間接的に経口感染します。外出後、トイレの後、食べ物に触れる前は必ず流水と石鹸で手洗いをしてください。タオル類の共用は避けましょう。
嘔吐物や排せつ物の処理をする場合は、使い捨ての手袋とマスク、エプロンを装着します。また、嘔吐物や排せつ物が十分に取り除かれていないと、乾燥した汚染物が細かい粒子となって空中に舞い上がり、それらを吸い込むことで空気感染します。嘔吐物の処理に掃除機を使用することは厳禁です。
トイレの便座や手すり、ドアノブなど手で触る場所は0.02%の次亜塩素酸ナトリウムで拭き10分程度放置します。消毒剤による腐食を防ぐため、金属部分はその後水拭きします。食器等は同濃度の溶液に浸漬するか、85度以上の熱湯で加熱消毒します。消毒液は、空いたペットボトルを用いて簡単に作成できます(図2)。作成時は必ず手袋を装着してください。また、消毒効果が薄れてしまうため、つくりおきはやめましょう。
図2 0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈方法
効果的な感染予防策がノロウイルスの感染経路を遮断し、自分自身の感染を防ぐとともに、周囲の人々への感染拡大を防ぎます。厳しい冬の季節を健やかにお過ごしください。