前回は、「素直な性格」の方が、日常生活上、本当に困った事態に遭遇し、どう行動したら良いかわからなくなり、切羽詰まった状態になっている時には、その方を迷わせないことが重要であり、そのためには、「具体的に」、「断定的に」、「繰り返し」、「時機を失せずに」同じ内容のアドバイスをすることと、「余計なことは話さない」ということが肝要であることを書きました。
これに対して、「気難しい性格」の人と付き合う時には、「ああしろ」、「こうしろ」と指図しない方が良いのです。
悩みの程度が軽く、本人にも余裕があって、さほど切羽詰まっていないと判断される時には、私はその人の話をじっくり聴くことにしています。こちらが黙って聴いていると、ほとんどの場合、その人は話をしながら、自分で自分の考えをまとめて結論を出すということになります。ここまでは、前回お話しした、「素直な性格」の方の場合と同じです。
しかし、日常生活上、本当に困った事態に遭遇し、どう行動したら良いかわからなくなり、切羽詰まった状態になっている時でも、「気難しい性格」の方に対しては、私は、「こうしなさい」というような、具体的な指示は出さないことにしています。
ストレスがたまっていて、話を聞いてもらう立場に立った時、「気難しい性格」の人は、自分の気持ちをわかってもらいたいと思い、長々と話をしますが、「こんな状況で困っている。」と言いながらも、他人のアドバイスを求めてはいません。話を聞いてもらうことで、自分の辛さや苦労をわかってもらうという効果があるのは当然ですが、長話しにはもうひとつの効果があります。つまり、話をすることによって、自分で自分の考えを整理することができるのです。
「いのちの電話」などで、お話を聞いてくれる相談員の多くは、親切であり、親身になって話を聞きながら、何か良いアドバイスをしてあげようとします。それは、本当はとてもありがたいことなのですが、それが、意外にも逆効果になることがしばしばあります。
要するに、話をすることで整理できかかっていた本人の考えが、本人のことを思ってアドバイスをしてあげた相談員などの言葉によって、まとまらなくなってしまうことがあるのです。なかには、アドバイスをされると、アドバイスの内容とは逆の行動に出てしまう、あまのじゃくな人もいます。そういう人の場合には、仮に、アドバイス通りに行動をしたとしても、結果がうまくいかなかった時には、「あのアドバイスが原因でこうなってしまった」と、責任を押し付けられることにもなりかねません。
だから、「気難しい性格」の持ち主には、はっきりと、「こうしなさい」と具体的に指示を出さない方が良いのです。選択肢は色々あると教えるのは良いのですが、その中からどれを選ぶかは本人に決めさせるのが良いのです。正確な情報を与えるが、最終的な判断・決定は本人に任せることが重要なのです。