皆様こんにちは。もう1年以上も新型コロナウイルスの感染が収まらない状況が続いています。この状態を打ち破る手段として最も期待されているのがワクチンです。今回はこのワクチンのお話です。
ワクチンは感染症の予防のために、病原体を弱めるか不活性化した状態にして人体に接種するものです。18世紀にジェンナーによって行われた天然痘に対するものが世界最初のワクチンとして知られています。現在よく使われているのはインフルエンザウイルスや肺炎球菌に対するもので、受けたことがある方も多いと思います。
ワクチンを接種すると体の中で何が起きるのでしょうか。ワクチンは体にとって異物ですので、いつも体中を見張っている免疫系の細胞が刺激されます。その結果、異物を排除しようとして、攻撃型のリンパ球ができたり、異物に対する抗体が作られたりします。その状態になっていれば、次に病原体が体に侵入してもあっさりと退治されてしまうわけです。
新型コロナウイルスに対するワクチンは、わが国でも2021年2月に一部の医療者に対して接種が開始されました。これはRNAワクチンと呼ばれる新しいタイプのもので、今までの病原体タンパク質でできているものとは異なります。脂肪の膜に包まれた新型コロナウイルスの遺伝情報(RNA)を筋肉注射することで、人体の細胞の中にそのRNAが取り込まれ、ウイルスタンパク質の一部が作られます。そのタンパク質が細胞の外に出されることで、それに対する免疫反応が起きるという仕組みです。RNAは非常に壊れやすいので、マイナス70度など低温での保存が必要になります。
予防効果は90%以上とされており、多くの人に投与されれば、感染も収まっていくことが期待されます。副作用としては、命にかかわるような強いアレルギー反応(アナフィラキシー)は欧米では20万人に1人と少ないですが、注射部位が腫れたり熱が出たりする場合が報告されています。
ではこのワクチンを受けたら良いのかどうか。これは最近外来で良く聞かれる質問です。答えは人それぞれで違うので難しいですが、過去にインフルエンザウイルスなどのワクチンを接種して問題がなく、薬のアレルギーもない方は積極的に受けることをお勧めしています。私自身もできるだけ早く受けたいと思っています。
新型コロナウイルスに対する特効薬がまだみつかっていない現在、この感染症を収まらせる唯一の可能性を持つのがワクチンです。このワクチンの効果で、近いうちに全世界で元のような生活が送れるようになることを心より期待しています。