当科では2つの胸腔鏡システムを症例によって使い分けています。1つはストルツ社製のシステムで、病変の局在がわからない場合にICG(色素)を注射することにより、術中に赤外線領域の蛍光画像として判別ができ、これにより部分切除や区域切除が可能となります。また、通常のスコープでは描出しにくい角度ではエンドカメレオン(可変観察角度)のスコープを使用して良好な術野を描出しています。もう1つがオリンパス社製の5mmの細径スコープです。この胸腔鏡システムが2021年11月にリニューアルしましたのでその御報告をいたします。
2006年9月から15年間を超える長期間使用していたオリンパス社製の胸腔鏡システムが経年劣化による画質の劣化が進み・・・手術の質の低下につながりかねません。かねてから申請していた胸腔鏡システムが審査を通り納品されました。このオリンパス社製の5mm、30度斜視の細径スコープは通常の10mmのスコープに比べ半分の細さで、当院で開発した気胸に対する1portの術式でその威力を発揮しています。通常の3portでの手術に比べ難易度が上がりますが、症例を選んで、定型化した手順で1port手術を行っています。審美性において患者さんから高評価を頂いています(Fig.1)。対象疾患は自然気胸です。術前のCTと術中所見によりこの術式を決定します。術中に3port手術へ移行することも可能です。下の写真のように(Fig.2)1か所の約2cmの創からカメラ、自動縫合器を挿入して手術を行います。通常の肺がんの手術では3portですが、そのうちの一つのカメラport(手術創)が小さくなり、カメラと同じportから別のデバイスが挿入可能で、気胸手術以外でも細径のカメラのメリットは大きいです。
近年外科領域では胸部の呼吸器外科領域でも腹部の消化器外科領域でも単孔式手術(腹部領域ではSILS[single incision laparoscopic surgery]とも言われています)やReduced Port Surgeryといって、従来の内視鏡外科手術と比較して、手術の際の切開創の数や、サイズを減らし、低侵襲性を追求した患者さんの体の負担を小さくする手術方式が脚光を浴びていますが、当院で開発した1portの術式はそのはしりでした。20年も前に当科で考案し、定型化、確立しました。
※2021年度呼吸器外科領域において胸腔鏡安全技術認定制度が発足し、その認定医を取得いたしました。
Fig.1 手術創:2cmと2mm
Fig.2 1port 1puncture method