ここがページの先頭です。
ページ内移動メニュー
ヘッダーメニューへ移動します
共通メニューへ移動します
現在の場所へ移動します
本文へ移動します
サイドメニューへ移動します
現在の場所
ホーム  健康情報  病院だより「けんこう家族」  けんこう家族 第107号  けんこう家族 第107号【3】
ここから本文です。

けんこう家族 第107号【3】

| 目次 |

脳梗塞の治療と発症予防

神経内科 医師 前川 理沙

神経内科 医師
前川 理沙

はじめに

図1.主な死因別に見た日本の死亡率の年次推移厚生労働省調べ
図1.主な死因別に見た日本の死亡率の年次推移
   厚生労働省調べ

 「脳梗塞」とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液が行かなくなって脳が壊死してしまう病気です。脳出血やくも膜下出血を含めた「脳卒中」は、悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎に続き国内死因の第4位であり、脳梗塞はそのうちの約60%を占めます。片方の手足の麻痺やしびれ、呂律がまわらない、視野が欠ける、めまいなど様々な症状が突然出現し、程度は様々ですが多くの方が後遺症を残します。
 わが国には、高齢者の治療や介護にかかる負担を社会全体で支援する介護保険制度というものがあります。脳卒中後の後遺症は、この制度を利用して要介護認定を受けている方の20%以上を占め、原因疾患の第1位です(ちなみに第2位は認知症です)。脳の病気は、他臓器の疾患よりも日常生活に支障をきたしやすく、介護の必要性の高さを反映しています。
 後遺症を可能な限り残さないために、脳梗塞の急性期治療は非常に重要であり、また発症そのものを予防することも重要です。この2点につき、少しお話しさせていただきます。

脳梗塞の急性期治療

 2005年、米国に遅れること9年でrt-PA(遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ)を用いた血栓溶解療法が日本で承認されました。詰まった血栓を溶かして脳への血流を再開通させる注射薬です。脳や消化管などから出血を起こす危険があるため、一定の条件を満たさなければ使用できませんが、脳梗塞の範囲を小さく抑えられる場合があります。従来、発症から3時間以内に投与しなければならず、実際に投与される患者さんは脳梗塞全体の5%以下でした。しかし2012年8月、発症4.5時間以内に適応が拡大し、この治療を受けられる患者さんが今後増えることが期待されています。他にも、脳の血管に直接アプローチし、血栓を絡めたり吸引したりして回収し脳血流を再開通させるという新しい治療があり、そのための器具が近年相次いで日本で使用可能となっています。こういった特殊治療の普及率はまだ低いですが、日本の脳梗塞急性期治療は日々進化しています。
 血栓溶解療法などの超急性期の治療の適応がなかったとしても、抗血小板薬、抗凝固療法などの抗血栓療法や脳保護薬など様々な治療法があり、それらは可能な限り早く開始することが望ましいです。おかしいなと思ったら、または近くにいる人がおかしいなと思ったら、迷わず119番通報をして脳卒中急性期治療ができる病院に運んでもらうことを、是非ご検討ください。東京都では、東京都脳卒中救急搬送体制というシステムを導入しており、救急隊が「脳卒中が疑われる」と判断した場合、東京都脳卒中急性期医療機関に認定されている施設に搬送してくれます。さらに、発症後間もない脳卒中が疑わしい方で、rt-PA治療の適応となる可能性があると判断されれば、認定医療機関の中でも「rt-PA治療、今ならできますよ」と意思表示をしている病院に絞って搬送先を探してくれます。当院は東京都脳卒中急性期医療機関に認定されており、平日の日中はrt-PA治療も行っています。
 脳梗塞と一口に言っても様々な原因があり、それぞれに治療法は異なります。高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病からくる動脈硬化が原因の「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性梗塞」や、心房細動という不整脈などが原因となる「心原性脳塞栓」が主なものですが、「その他」に分類される脳梗塞があります。脳動脈の壁が裂けてしまう解離や、感染症・悪性腫瘍に伴うもの、血管の炎症、血栓を作りやすい自己免疫疾患、血管の先天的・後天的異常、遺伝性の脳梗塞、ピルやコカイン等の薬剤など、様々な病気が隠れていることがあります。当院神経内科では、頸部の血管や心機能、不整脈などの検査を全例に行うとともに、稀な病態も念頭に精密検査を行い、原因に合わせた適切な治療を行うよう心がけています。

脳梗塞の発症を防ぐ

図2.60歳以上の血圧値別にみた脳卒中発症率
図2.60歳以上の血圧値別にみた脳卒中発症率
久山町研究有馬ら2003年

 脳梗塞の予防は、大きく分けて再発予防である二次予防と、発症を予防する一次予防がありますが、今回は一次予防のお話しをしたいと思います。
 高血圧は脳卒中の最大の要因で、血圧が高いほど脳卒中の発症率は高くなります(図2)。昭和50年代半ばまで、図1のように脳卒中は日本の死因1位でしたが、その数は昭和40年代をピークに徐々に減少しています。これは血圧管理が普及し始めたためと考えられています。血圧が高いと言われたことのある方は、市販の自動血圧計を用いた日頃からの血圧管理が重要です。具体的には、高齢者では140/90mmHg、若年・中年者は130/85mmHg未満が推奨されています。
 糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症、腎臓病も要因となるため、適切な治療が必要です。高血圧を含めこれらの生活習慣病は自覚症状がほとんどなく、検査をしないと見つかりません。定期的に健康診断をお受けになり、異常を指摘されたら放置せず、ぜひ積極的に治療を開始されることをおすすめします。喫煙、大量の飲酒も重要な要因です。脳卒中の要因となる病気を治療することは、心筋梗塞などの心血管障害の予防にもつながります。また、運動や入浴による発汗や夏の暑い日の脱水は、脳梗塞の原因となることがありますので、適切な水分摂取も重要です。
 魚の油には、エイコサペント酸(EPA)という多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。EPAは動脈の弾性力保持、血小板凝集抑制作用、脂質異常改善効果などにより、心筋梗塞や脳梗塞等の様々な動脈硬化性疾患の予防効果があることが知られています。EPAはイワシ、サバ、サンマ、マグロなどに多く含まれています。毎日の食事で、肉よりも魚をより多く摂るよう心がけることも脳梗塞の予防につながります。
 脳梗塞の予防に、アスピリンなどの血液をサラサラにする薬を内服したほうがよいのではないかというご意見を耳にすることがあります。一度でも脳梗塞や心筋梗塞を発症した方の再発予防としては必須ですし、血管に強い狭窄があるなどの特殊な事情によっては必要かもしれません。しかし、日本人は塩分摂取量が非常に多く、欧米人と比較し脳出血が多い人種であることがわかっています。必要性を十分に検討せず、一次予防としてそういった薬を内服することは、脳出血の発症につながる可能性があり、逆に危険です。

おわりに

 当院では、神経内科と脳神経外科が協力しながら脳梗塞の主に急性期治療を行っておりますので、ご不明な点があればご相談ください。
 脳梗塞の治療は進歩していますが、何よりも発症しない事が一番です。塩分の摂りすぎに注意し、禁煙し、お酒を控えめにし、魚を食べ、定期的に健康診断を受ける。なかなか難しいかもしれませんが、もし思い当たる点があれば少しずつでも、生活習慣を変えてみてはいかがでしょうか。いつまでも健康でありたいものですね。


| 目次 |

ここまで本文です。
ここからサイドメニューです。
ここまでサイドメニューです。
^このページの一番上へ
【画像】印刷用のフッター画像です